高齢者とペット問題|親への切り出し方と託す先5つを解説

縁側に並んで座る高齢の母親と娘、そのあいだにいる犬の水彩イラストと、『高齢者とペット 親を否定しない、切り出し方から』の見出し その他のトピック

実家に帰るたび、変わらずペットをかわいがる親の姿に安心する一方で、「散歩の距離が短くなった」「部屋のにおいが前より気になる」といった小さな変化に気づき、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

「もし親が入院したら、この子はどうなるのだろう」。そう心配になっても、親を傷つけそうで話を切り出せないし、介護とペットの世話を自分一人で抱えきれる自信もない。そんな板挟みで悩む方は少なくありません。

けれど、いま変化に気づけたのなら、まだ十分に間に合います。高齢の親とペットをめぐる困りごとは、親が元気なうちに「託す先」と「お金」の2つを決めておくだけで、大きく減らせます。ペットを手放す話から始める必要はありません。

この記事でわかること
  • 親がペットを世話できなくなると、何が起きるのか
  • 親を否定せずに、ペットの話を切り出す言い方
  • ペットを託せる5つの選択肢と、それぞれの費用
  • 親が入院した日から1か月で決めること
  • 介護サービスに頼めること、頼めないこと

高齢の親とペット、いま何が起きているのか

70代の犬猫の飼育率、65歳以上のひとり暮らしの人数、令和6年度の譲渡数と殺処分数を3枚のカードで示した図解

「高齢になるとペットを飼う人は減る」と思われがちですが、統計を見ると、そうとは言い切れません。

60代・70代でも、犬や猫と暮らす人は珍しくない

一般社団法人ペットフード協会が2025年に実施した調査によると、全国の犬の飼育頭数は約682万頭(世帯飼育率8.50%)、猫は約884.7万頭(同8.42%)と推計されています1。

年代別に見ると、60代で犬を飼っている人は9.2%、猫は9.7%です。70代でも犬は7.0%、猫は7.3%で、全体の水準から大きくは下がりません2。

犬と猫の両方を飼っている人もいるため単純に合計はできませんが、70代でもそれぞれ7%前後の人が犬や猫と暮らしています。つまり、高齢の親がペットを飼っているのは、珍しいことではありません。

ひとり暮らしの高齢者は815万人

内閣府の『令和8年版 高齢社会白書』によると、65歳以上でひとり暮らしをしている人は、令和2年(2020年)の国勢調査の時点で671.7万人でした。令和7年(2025年)には815.5万人になると推計されています3。

ひとりで暮らす親がペットを飼っている場合、日々の世話を担えるのは親本人だけです。そのため、急な入院や施設への入居が決まったその時点で、ペットの行き先が宙に浮いてしまいます。

引き取られた犬や猫の行き先は広がっている

環境省の統計によると、令和6年度に全国の自治体が引き取った犬と猫は、合わせて39,409頭でした。そのうち25,651頭が新しい飼い主へ譲渡され、殺処分は6,830頭となっています4。

平成16年度の殺処分は394,799頭でしたから、20年で98%近く減ったことになります5。譲渡を前提とした引き取りが各地で進んだことが、背景にあると考えられます。ただし、殺処分がゼロになったわけではありません。

「高齢者とペット 問題」は3つの立場で起こる

親・ペット・介護する家族の3つの円を矢印でつなぎ、負担が順に及ぶ流れを示した図解

同じ出来事でも、飼い主である親、世話をされるペット、介護を担う家族とでは、直面する困りごとが違います。それぞれの立場に分けて整理しておくと、誰のどんな負担から手を打つべきかが見えてきます。

飼い主である親の側で起きること

  • 体力の低下で世話が重くなる:
    毎日の散歩、餌やり、トイレの掃除、ブラッシング。重いフードの袋を運ぶことや、動物病院へ連れて行くことも負担になります。
  • 認知機能の低下で世話が乱れる:
    餌を与えたことを忘れて何度も与える、逆に与え忘れる、薬の管理ができなくなる、といったことが起こります。
  • 入院や施設入居で預け先に困る:
    急に決まったとき、預かってくれる人がいない、ペットと一緒に入れる施設が見つからない、という事態に直面します。
  • 費用が家計を圧迫する:
    フード代、医療費、トリミング代。とくに高齢のペットは医療費がかさみやすくなります。
  • 自分の死後が不安になる:
    「もし自分に何かあったら、この子はどうなるのか」という不安は、多くの高齢の飼い主が抱えています。

これらは親自身からは言い出しにくい悩みであることが多く、離れて暮らす子ども世代は、帰省したときに初めて気づくことになりがちです。

ペットの側で起きること

  • 飼い主の変化がストレスになる:
    散歩や遊びが減ると、無駄吠えや粗相といった問題行動につながることがあります。
  • 世話の質が落ちる:
    運動、食事、衛生のどれかが不足すると、ペットの健康状態が悪化していきます。
  • 引き取り手が見つからない:
    飼い主が飼えなくなったとき、行き場を失うリスクがあります。

ペットの問題行動の背景には、親の生活の変化が隠れている場合があります。普段と違う様子が見られたら、親の暮らしぶりにも目を向けてみてください。

介護する家族の側で起きること

  • 介護とペットの世話が二重になる:
    親の介護だけでも手いっぱいなのに、ペットの世話まで担うことになります。
  • 家族にアレルギーがある:
    手伝いに行く家族が動物アレルギーの場合、同じ空間で長く過ごすこと自体が難しくなります。
  • 介護の動きが制限される:
    足元にまとわりついて転倒の原因になったり、介護に必要なスペースを占領されたりします。
  • 引き取りを迫られる:
    親が施設に入るとき、自分の家では飼えないのに引き取りを求められる、という板挟みが起こります。

3つの立場を並べると、親の体力の低下がまずペットの暮らしに響き、最後は介護する家族のもとへしわ寄せが集まる、という流れが見えてきます。

帰省したときに気づける、早期のサイン

世話が行き届かなくなる兆しは、飼っている頭数にかかわらず現れます。毎日その家で過ごす親は変化に慣れてしまうため、たまに訪ねる家族のほうが早く気づけるものです。

実家に帰ったときは、次のような変化がないか、さりげなく確かめてみましょう。

  • 玄関を開けたときの臭いが、以前より強くなっている
  • 糞尿や食べ残しの片づけが追いついていない
  • ハエなどの虫が目につく
  • 居間や寝室が動物の居場所になり、親の生活空間が狭くなっている
  • フード代や医療費が家計を圧迫している
  • 近所から苦情が出ている、または親が近所づきあいを避けるようになった

どれか一つが当てはまるだけで、すぐに危険というわけではありません。しかし、いくつも重なっているときは、ペットの世話にとどまらず、親自身の暮らしも傾き始めていると考えたほうが安全です。

この状態が長く続くと、不妊・去勢手術が追いつかないまま頭数が増え、いわゆる多頭飼育崩壊へ進むおそれがあります。環境省はこれを、動物の数そのものの問題としてではなく、飼い主の生活・動物の状態・周辺の生活環境の3つが同時に悪くなっていく状態としてとらえています6。

実際の事例には、60代の女性が犬を約30頭抱えていたケースや、60代の両親と40代の子の3人暮らしで猫が94頭まで増えたケースがあります7。いずれも、動物好きが度を越したという単純な話ではありません。環境省は、その背景に生活の困窮や社会的な孤立があることを指摘しています8。

ペットは法律上「モノ」として扱われる

民法では、ペットは不動産以外の財産、つまり動産(持ち運びできる所有物)として扱われます9。

そのため、親が突然倒れて救急搬送されたとしても、本人の同意や家族の承諾がないまま、第三者が実家に入ってペットを連れ出すことはできません。ケアマネジャーや近所の人が親切心から助けようとしても、家に入れば住居侵入、ペットを連れ出せば窃盗にあたるおそれがあるからです。

いざとなれば誰かが何とかしてくれる、とは限りません。親が元気なうちに段取りを整えておく必要があるのは、こうした法律上の壁があるからです。

結論:問題は「飼っていること」ではなく「備えがないこと」

『託す先』『お金』の札を下げた2本の鍵を1つのキーリングに通したイラスト

東京都動物愛護相談センターは、飼えなくなった場合や飼い主が先に亡くなった場合にもペットが安全に暮らせる環境を用意しておくことを、飼い主の務めとして挙げています10。

決めておくのは「託す先」と「お金」の2つ

高齢の親がペットと暮らすこと自体が悪いわけではありません。問題になるのは、もし世話ができなくなったらどうするか、という受け皿が用意されていない状態です。

言い換えれば、親が元気で判断力があるうちに次の2つを決めておけば、悲しい結末のほとんどは避けられます。

  • 託す先:親が世話をできなくなったとき、誰に、どこに預けるのか
  • お金:その世話にかかる費用を、どこから出すのか

この2つがはっきりしていれば、急な入院や介護が必要になったときも慌てずに動けます。行き先が決まっていることは、親自身の安心にもつながります。

備えの中身は、親の状態によって変わる

年齢だけを理由に「もう飼うのはやめるべき」と決めつけるのは、実態に合いません。見るべきなのは、親の状態の変化に合わせた備えがあるかどうかです。

具体的には、親の状態を次の3つの時期に分けて、備えを進めていきます。

  • 元気なうち:託す先とお金を決め、情報をまとめておく時期
  • 介護が始まってから:使えるサービスを組み合わせ、世話を分担する時期
  • 入院・施設入居が決まったとき:期限のなかで行き先を確保する時期

まずは、親がいまどの時期にいるのかを見極めるところから始めましょう。

親にどう切り出すか|否定しない言い方

『もう年だから、犬の世話は無理でしょう』と『最近、散歩はきつくない? 手伝えることある?』の2つの言い方を、グレーと暖色の吹き出しで比べたイラスト

環境省が、飼育の立ち行かなくなった家庭への対応をまとめたガイドラインに、支援者と飼い主のやりとりの記録が残っています。

飼い方を指導する際、否定的な言い方をすると、飼い主は攻撃的な態度になりました。一方、「自分も動物が好き」という共感の姿勢で話をしたところ信頼関係ができ、犬の所有権の移転につながっています11。

否定から入ると、話はそこで止まる

高齢の親にとって、ペットは孤独をやわらげてくれる話し相手であり、毎日の張り合いそのものです。その存在を「もう年なんだから、世話なんて無理でしょ」と頭ごなしに否定されれば、返ってくるのは反発か沈黙です。

反発されるのが目に見えているからこそ、子ども世代も話を切り出せず、つい先送りにしてしまいがちです。そこで、切り口を変えてみましょう。これからもペットと安心して暮らし続けるための相談として、話を始めるのです。

避けたい言い方と、切り出しやすい言い方

具体的な言葉で比べると、受ける印象の違いがよく分かります。

避けたい言い方切り出しやすい言い方
もう年だから、犬の世話は無理でしょう最近、散歩はきつくない? 手伝えることある?
介護が始まったら飼えないよこれからも一緒に暮らせるようにしたいよね
施設に入ったらどうするのもし急に入院したら、この子はどうしようか
誰かに譲ったほうがいい預かってくれるところ、一緒に調べておこうか

避けたい言い方と切り出しやすい言い方で違うのは、判断の主語です。前者は子どもが結論を押しつけていますが、後者は親の意思を尊重しながら一緒に考える形になっています。親の決定権を残したまま話を進められるかどうかで、話し合いが続くかどうかが分かれます。

なお、この言い換えは環境省の対応事例の趣旨を日常の会話に置き換えたもので、公的機関の定型文ではありません。ご家庭の関係や親の性格に合わせて、言葉を選んでみてください。

「最後まで自分が看る」と言われたら

話し合いのなかでよく返ってくるのが、「この子は最後まで自分が看る」という言葉です。親の決意が固いほど、家族はそれ以上踏み込めなくなります。

ここで無理に説得しようとしても、話は平行線に終わりがちです。親の思いをいったん受け止めたうえで、その願いを叶えるための保険として備えを提案するほうが現実的です。

たとえば、こう伝えてみます。「お母さんが最後まで看たいって気持ち、よく分かるよ。だからこそ、もし病気やけがで何日か入院することになったときだけ、代わりに面倒を見てくれる人や場所を一緒に決めておかない?」

目標そのものは否定せずに途中の中断にだけ手当てをする形なので、親の気持ちを傷つけずに、具体的な準備を進められます。

【元気なうちに】将来に備える5つの準備

元気なうちにやる5つの準備を、クリップボードのチェックリストで示したイラスト

親が元気で世話も回っている時期は、一見すると何の心配もないように思えます。しかし、何も起きていない今だからこそ、選べる手や準備できることが多く残っています。

1. 託す先を決めておく

ペットの預け先は、親族に限りません。知人に頼むほか、民間の施設や保護団体、信託の仕組みを使う方法もあり、それぞれ確実性や費用が異なります。身近に引き受けてくれる人がいなくても、諦める必要はありません。

2. ペット版エンディングノートを作る

親が倒れたとき、世話を引き継ぐ人が困りやすいのは、常用している薬、かかりつけの動物病院、そして食事の好みや苦手なことです。どれも親の記憶のなかにあるだけで、書き残されていないことがほとんどです。

次の項目をノートにまとめておくと、世話をする人が代わっても、ペットにかかる負担を小さく抑えられます。

項目書いておく内容
基本情報名前、年齢、犬種・猫種、性別、マイクロチップの有無と番号
性格・特徴人懐っこいか臆病か、怖がるもの、好きな遊び、癖
健康状態持病、治療中の病気、アレルギー、飲んでいる薬と量
かかりつけ医動物病院の名前、担当医、連絡先
食事フードの種類・量・回数、好き嫌い、おやつ
トイレ・散歩トイレの場所と用品、散歩の時間・回数・コース
その他予防接種の記録、血統書の保管場所、苦手なこと

すべてを一度に埋めようと気負う必要はありません。帰省のたびに親から少しずつ聞き取り、会話のきっかけにしながら埋めていくのがおすすめです。

3. ペットのためのお金を分けておく

託す先によっては、100万円以上のまとまった費用が必要になります。その費用は、できるだけ親本人の資産から確保しておきましょう。

たとえば、ペットのための預金口座を分けておく、生命保険の保険金を充てる、といった方法があります。元気なうちに「この子のためのお金」として分けておけば、いざというときに子ども世代の家計から急に出す事態を防げます。

また、高齢のペットは病気やけがで医療費がかさみやすくなります。ペット保険への加入も選択肢になりますが、加入できる年齢に制限があるため、早めに検討しておくほうが確実です。

4. しつけと健康管理を続ける

新しい預け先や里親を探すことになったとき、受け入れのしやすさを左右するのが、日頃のしつけと健康管理の記録です。無駄吠えや噛み癖がなく、予防接種を欠かさず受けているペットほど、次の引き受け手が見つかりやすくなります。

基本的なしつけに加えて、定期的な健康診断、狂犬病予防注射や混合ワクチン、ノミ・マダニの予防を続けておくこと自体が、将来の選択肢を広げる準備になります。

5. 緊急時の段取りを家族で共有する

親が救急搬送されたその日、誰が実家の鍵を開けてペットの様子を見に行くでしょうか。この段取りが決まっていないと、家族やケアマネジャーが立ち入りをためらい、初動が遅れてしまいます。

元気なうちに、次の3点を家族や関係者のあいだで決めておきましょう。

  1. 実家の鍵を誰が預かるか
  2. 親が急に入院したとき、誰が最初に駆けつけて餌をやるか
  3. その人の連絡先を、親・きょうだい・ケアマネジャーの誰が把握しているか

親本人から「急なときは鍵を使って家に入り、ペットの世話をしてほしい」と事前に承諾を得ておけば、法律上の心配や気持ちのうえのためらいを減らせます。紙に書いて、冷蔵庫など目につく場所に貼っておく程度で足ります。

【比較表】ペットを託せる5つの選択肢

親族・知人、老犬・老猫ホーム、ペット信託、ペット後見、里親・保護団体の5つの託す先と、それぞれが向いているケースを吊り札で示したイラスト

ペットの託す先を考えるとき、多くの方はまず家族や親族を思い浮かべます。しかし、身内に引き受け手がいない場合でも複数の選択肢があります。

5つの選択肢を費用と確実性で比べる

表に示した金額は、事業者や団体が公表している目安で、地域や条件によって変わります。最新の金額は各窓口にご確認ください。

選択肢費用の目安確実性向いているケース
親族・知人に頼む当事者間で調整口約束では弱い身近に引き受け手がいる場合。書面に残すか、後述のペット信託と組み合わせると確実になります。
老犬・老猫ホーム小型・中型犬で1か月11万円、12か月67.1万円という公開例12。別の施設では6か月79.2万円から13契約による世話そのものを施設に任せたい場合。短期の預かりにも使えます。介護度や医療ケアで金額が大きく変わります。
ペット信託契約書の作成費用と、信託監督人を置く場合の月額費用。これとは別に飼育費の準備が必要高い(信託契約)世話を引き受ける親族・知人がいる場合。お金の使い道をペットの飼育に限定できます。
ペット後見(互助会)入会金5万円+事務手数料5万円、月会費1,000円/頭、終生飼育費100万円から/頭14高い(契約)身内に引き受け手がいない場合。緊急時の保護から譲渡、終生飼育までを担います。
里親・保護団体団体により異なる(無償から実費)譲渡契約による新しい飼い主に引き継ぎたい場合。地域差が大きいため、早めの相談が必要です。

一般に、費用がかかる仕組みほど確実性も高い傾向があります。お金をかけずに済ませようとすると、口約束が守られないなど、後からトラブルが起きやすくなります。

ペット信託とペット後見の使い分け

ペット信託とペット後見のどちらを選ぶかは、身近にペットの世話を引き受けてくれる人がいるかどうかで決まります。

世話を引き受けてくれる親族や知人がいるなら、ペット信託が向いています。飼育に必要なお金を信託財産として預けておき、世話をする人がその範囲で使う仕組みです。お金の使い道が飼育に限られるため、生活費などに流用されるのを防ぎやすくなります。

さらに信託監督人(飼育状況とお金の使われ方をチェックする第三者。行政書士などが務めます)を置けば、約束どおり世話が続いているかを定期的に確かめてもらえます。ただし、監督人への報酬が別にかかります。

一方、身の回りに引き受けてくれる人がいない場合は、ペット後見が受け皿になります。たとえば認定NPO法人人と動物の共生センターが運営する互助会では、入会金5万円と事務手数料5万円、月会費1,000円を払い、終生飼育費として1頭あたり100万円からを準備しておく仕組みです15。

飼い主が入院や要介護で飼えなくなったときは、団体がペットを引き取って新しい飼い主を探し、見つからなければ提携施設で終生飼育まで行います16。最初から施設で預かる老犬ホームとは違い、まず新しい家庭への譲渡を目指す点が特徴です。

「遺言で財産を渡せば安心」とは限らない

ペットの世話をしてもらう代わりに財産を譲る遺言(負担付遺贈)を考える方もいます。法的に有効な方法ですが、思いどおりにいかない場合があります。

まず、財産を受け取る側(受遺者)は、遺贈を放棄することもできます。民法では、受遺者が遺贈を放棄したときは、負担の利益を受けるべき者が自ら受遺者となれると定められています17。

また、財産だけ受け取って世話をしない事態も起こりえます。この場合、相続人が期間を定めて履行を求め、それでも果たされなければ、家庭裁判所に遺言の取消しを請求できます18。

ただし、この手続きは誰かが動かなければ始まらず、そのあいだもペットの世話は宙に浮いたままです。遺言に書いておけば安心とは考えず、世話を確実に続けてもらう仕組みが必要なら、ペット信託やペット後見を検討してください。

【介護が始まったら】ヘルパーに頼めること・頼めないこと

訪問介護で頼める親本人の日常生活の手助けと、頼めない犬の散歩・餌やり・ペットのトイレの掃除を○と×の2列で分けた図解

親の介護が始まると、ホームヘルパー(訪問介護)を利用する機会が増えます。そうなると、「ヘルパーさんが来てくれるなら、ついでにペットの世話もお願いできるのでは」と期待したくなるものです。

ペットの世話は、介護保険の対象外です

厚生労働省の介護サービス情報公表システムには、訪問介護で受けられないサービスとして「日常生活の援助の範囲を超えるサービス」が挙げられています。その例として、草むしりや大掃除、窓のガラス磨きと並んで、ペットの世話が明記されています19。

犬の散歩も、餌やりも、トイレの掃除も、ここに含まれます。訪問介護が支えるのはあくまで利用者本人の日常生活なので、ヘルパーが訪問している時間であっても、これらは頼めません。

つまり、介護サービスを使えばペットの困りごとも一緒に片づく、という期待は成り立ちません。この線引きを早めに知っておくと、誰に何を頼むかを無理なく組み立てられます。

足りない部分は、自費のサービスで補う

介護保険で賄えない部分を埋める手段は、おおむね次の4つです。

  • ペットシッター・散歩代行:
    親の体調が悪い日や、家族が帰省できない期間の世話を任せられます。
  • ペットタクシー・往診対応の動物病院:
    通院が難しくなったときに使えます。オンラインでの健康相談を受け付ける動物病院もあります。
  • 一時預かり:
    入院など、数日から数週間まとまって家を空けるときの受け皿になります。
  • 家族・親族での分担:
    散歩、餌やり、トイレ掃除、通院の付き添い。誰が何を担うかを具体的に割り振ります。

費用はかかりますが、これらを手配しておけば、親が体調を崩した日にペットの暮らしまで一緒に崩れる事態を防げます。

道具で減らせる負担もある

餌やりと水の交換、段差の上り下り、トイレの掃除。こうした作業は、便利な道具を入れるだけでも、親本人の負担も、通って世話をする家族の負担も軽くなります。

道具役立つ場面
自動給餌器・自動給水器決まった時間に餌と水が出るため、与え忘れや二重にあげてしまうことを防げます。
ペット用スロープ・ステップ足腰が弱ったペットの上り下りを助け、抱き上げる負担も減らせます。
掃除しやすいトイレ・ケージ清掃の手間が減り、衛生状態を保ちやすくなります。
ペットカメラ離れて暮らす家族が、ペットと部屋の様子を確認できます。

とくにタイマー式の自動給餌器は、認知機能の低下で食事の管理があいまいになりがちな家庭で頼りになります。ただし、親が操作を負担に感じては逆効果なので、導入するときは家族が一緒に設定し、使い勝手を確かめてください。

ヘルパーが訪問する場面での調整

ペットのいる家に訪問介護のスタッフや看護師が入る場合、互いが気持ちよく過ごせる配慮が必要です。犬が吠え続ける、猫が怖がって逃げ回る、抜け毛や排泄物のにおいがこもっている。こうした環境では、スタッフが安全で衛生的に介助をするのが難しくなります。

訪問介護を無理なく使い続けるために、次のような準備をしておきましょう。

  • 訪問の時間帯だけ、ペットを別室やケージで過ごさせる
  • 介護に使う動線(ベッドからトイレ、玄関までの経路)にペット用品を置かない
  • 訪問前に掃除と換気の時間を取る
  • 担当者に動物アレルギーがないかを、事業所へ事前に伝えて確認しておく
  • ペットがいることと頭数を、ケアマネジャーに最初の段階で共有しておく

ペットを飼っていることを後ろめたく思う必要はありません。最初から飼育の状況を伝えておけば、事業所も動物に慣れたスタッフを優先して配置するなど、人員を調整しやすくなります。

介護職が、ペットの異変に最初に気づくことがある

離れて暮らす家族が実家を訪ねられるのは、月に1〜2回ということも珍しくありません。一方で、訪問介護のヘルパーや訪問看護師は、週に何度も家に入り、暮らしの細かなところまで見ています。

環境省の事例にも、動物が増えすぎて世話が行き届かなくなった家庭に、地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生委員、自治体の動物愛護の担当部署が連携して対応したケースが記録されています20。動物の問題と福祉の問題は、現場では地続きになっています。

だからこそ、ケアマネジャーとの面談では、親の健康状態と一緒にペットの様子も伝えておくと役に立ちます。「最近、フードの減り方がおかしい」「トイレの片づけが追いついていないようだ」といった変化には、離れた家族より先に、現場の介護職が気づくこともあるからです。

親の介護とペットの世話を一人で抱え込むと、知らないうちに心と体の限界が近づきます。介護ストレスの限界サインと解消法は、別の記事で詳しく整理しています。

【入院・施設入居の緊急時】今日から1か月で決めること

親の入院から1か月までを、今日から3日・1週間まで・1か月までの3区間に分けた時間軸の図解

親が急な病気やけがで入院することになると、ペットの行き先をじっくり考える時間はほとんど残りません。病院からの説明や手続きに追われるなかで、犬や猫の居場所を一から探すのは大きな負担です。

時間軸で分けると、やることが決まる

すべてを一度に片づけようとすると混乱します。次のように時間で区切り、いま手をつけることに集中しましょう。

時期やること
今日から3日とにかく安全な居場所を確保します。ペットホテル、動物病院の預かり、泊まり込み対応のペットシッター、親族宅など。
1週間まで入院の見込み期間を確認し、短期で戻れるのか長期化するのかを見極めます。並行して老犬・老猫ホームの短期預かりを調べます。
1か月まで退院後に自宅で飼えるのかを判断します。難しい場合は、譲渡や後見といった恒久的な行き先の手配に入ります。

最初の数日で行き先まで決めきる必要はありません。まず数日から数週間の居場所を確保して考える時間を作り、そのあいだに次の手を落ち着いて選べば十分です。

  • ステップ1
    一時預かりで時間を作る

    急なときの受け皿には、ペットホテル、老犬・老猫ホームの短期預かり、泊まり込みに対応するペットシッター、かかりつけの動物病院の預かりがあります。いずれも、長く預ける先が決まるまでの中継地点です。

    ここで役に立つのが、ふだんの下調べです。短期の預かりに対応している施設を2〜3か所選んで連絡先を控えておけば、当日は電話をかけるだけで預け先を確保できます。

  • ステップ2
    恒久的な行き先を並行して手配する

    一時預かりで数週間ほどの猶予ができたら、そのあいだに長期の行き先を決めます。ペット信託の契約やペット後見への入会(どちらも、飼えなくなったときの託す先とお金をあらかじめ決めておく仕組み)を済ませていれば、この段階でその内容に沿って引き継ぎを進めます。

    事前の備えがない場合は、親族への打診と並行して、地域の動物保護団体への相談や里親探しを始めます。新しい飼い主が見つかるまでには日数がかかるため、早く相談するほど選べる道が残ります。

  • ステップ3
    ペット可の施設だけを当てにしない

    親自身が有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入る際、「ペットと一緒に暮らせる施設に入りたい」と望む方もいます。しかし、この選択肢にはいくつも制約があります。

    まず、ペットと入居できる高齢者施設が全国にどれだけあるかを示す公的な統計は、確認できませんでした。そのうえ、受け入れる動物の種類、大きさや頭数、居室の外での扱い、受け入れ可能な介護度といった条件が、施設ごとに異なります。

    加えて、入居後も親自身がある程度の世話を続けられることを求められる場合があります。親の介護度が上がるほど、こうした条件を満たすのは難しくなると考えられます。条件に合う施設が見つかれば理想的ですが、見つからなかった場合の預け先も並行して用意しておくほうが安全です。

  • ステップ4
    間に合わないときは、公的な窓口に相談する

    備えが間に合わないまま親の状態が急に変わった場合や、親族のなかに引き取り手がいない場合は、一人で抱え込まず、親が暮らす自治体の動物愛護担当課や動物愛護センター、保健所、または地域の動物保護団体に相談してください。

    窓口の名前や担当は、自治体ごとに違います。まずは親が暮らす市区町村の代表電話に、「高齢の親が入院して、飼っている犬(猫)の世話ができなくなったので、動物愛護の担当に相談したい」と伝えるのが確実です。

    連絡したらすぐに殺処分されるのでは、と不安になる方もいますが、引き取りがそのまま殺処分を意味するわけではありません。令和6年度に自治体が引き取った犬と猫39,409頭のうち、半数を超える25,651頭が新しい飼い主へ譲渡されています21。

    東京都動物愛護相談センターのように、飼い続けるのが難しくなった飼い主からの相談を受け付けている窓口もあります22。どうすればよいか分からないまま時間が過ぎるほど、ペットの体調は崩れやすくなり、選べる道も狭まっていきます。

自分が引き取れないときにできること

引き取る前に確かめることと、引き取らない場合の3つの道を、分かれ道の道標で示したイラスト

「親が飼えなくなった以上、子どもの自分が引き取るしかない」と思い詰めて、自分の暮らしとの板挟みで身動きが取れなくなる方は少なくありません。

引き取る前に確認しておくこと

実家のペットを引き取ることを考えるなら、気持ちだけで決めず、次の条件を落ち着いて確かめてください。引き取ったあとに飼えなくなり、もう一度手放すことになる事態は、何より避けたいからです。

  • 住まいの規約:
    賃貸なら契約書の飼育条項、分譲マンションなら管理規約。飼育の可否だけでなく、動物の種類・大きさ・頭数の制限も確認します。
  • 費用の扱い:
    敷金の追加、退去時の原状回復の範囲。飼育細則が別に定められている物件もあります。
  • 家族の健康:
    同居する家族に動物アレルギーがないか。とくに子どもの喘息がある場合は、医師に相談してから判断します。
  • 先住ペット:
    すでに飼っている動物との相性。高齢の犬猫は、環境が変わること自体が負担になります。
  • 日中の留守番:
    共働きで家を空ける時間の長さ。持病があり投薬が必要な場合は、時間の管理がより重要になります。

なお、ペットを飼える賃貸住宅が全国にどれくらいあるかを示す公的な統計は、確認できませんでした。留守番の時間についても、犬は何時間まで、猫は何時間までといった全国一律の基準はありません。

ペットの年齢、持病、性格、投薬の有無によって、必要な世話は一頭ずつ違います。一般的なイメージで判断せず、かかりつけの動物病院に個別に相談してください。

引き取らない判断も、選択肢のひとつ

住まいの規約や家族の健康などを確かめた結果、自分たちの暮らしでは引き取れないという結論になることもあります。それは冷たさや責任感のなさから出た結論ではありません。家庭の状況とペットの命に向き合ったうえでの、まっとうな判断です。

むしろ、無理をして引き取り、数か月後にまた手放すことになるほうが、ペットにとっては負担が大きくなります。環境が二度変わることになるからです。

自分が引き取れなくても、一時預かりの費用を援助する、信頼できる里親を探す、ペット後見の互助会に入るなど、ペットの暮らしを守る方法はいくつもあります。誰が飼うかにこだわらず、その子が最期まで安心して暮らせる場所を用意できれば、それで十分です。

人もペットも安全に暮らす住環境の工夫

ベッドからトイレ・玄関への介護の通り道と、通り道の外に置いたペットの寝床、5つの安全対策を間取り図に示した図解

高齢者の転倒の原因になりやすいのが、床に置きっぱなしのペット用品と、歩いているときに足元へまとわりつくペットの動きです。住まいに少し手を加えるだけで、こうした事故の心配はかなり減らせます。

転倒と事故を防ぐ

  • 床まわりの整理:電気コードやペット用品を通り道に置かず、滑りにくい床材を選びます。
  • 立ち入り制限:親のベッドまわりや階段など、入ってほしくない場所にはペットゲートを設けます。
  • 誤飲の防止:人の薬、食べ物、小さなおもちゃは、ペットの届かない場所か、ふたのある容器に入れて保管します。
  • 脱走の防止:玄関や窓からの飛び出しを防ぐため、二重の扉や網戸のストッパーを使います。

とくに親の服薬管理があいまいになり始めている場合は、床に落ちた薬をペットが飲み込む事故が起こりえます。介護と飼育の両面から、薬の置き場所を決めておきましょう。

においと抜け毛への対処

においのもとは、主にトイレです。換気のよい場所に置き、消臭効果の高い用品を使うと、来客や介護スタッフが気になるほどのにおいはこもりにくくなります。

抜け毛は、掃除しやすい床材とこまめなブラッシングで減らせます。空気清浄機を使えば、浮遊する毛やフケに加えて、においも抑えられます。

介護の動線とペットの居場所を分ける

在宅介護が始まると、ベッドからトイレ、洗面所、玄関へと続く通り道を、親本人に加えてヘルパーや家族も何度も行き来します。この通り道にペットの寝床や水飲み場が重なっていると、ぶつかったり転んだりする危険が高まります。

ペットが落ち着ける居場所は、人の行き来が多い通り道から少し外れた場所に作りましょう。親のベッドから見える位置にすれば、互いの気配を感じながら、歩くときにぶつかる心配も減らせます。

もっとも、ひとつの家のなかで空間を完全に分けるには限界があります。家族に動物アレルギーがある場合や、夜中の鳴き声で介護する家族が眠れない場合は、建物そのものを分ける住まい方も選択肢に入ってきます。

生活空間を「分ける」という選択肢|別棟の介護ハウス

母屋と、庭を挟んで設けた別棟を斜め上から描き、別棟の窓辺に高齢の親と犬、庭の小道を別棟へ歩く娘を示したイラスト

離れて暮らす親を近くに呼び寄せたいけれど、ペットの鳴き声やにおい、家族のアレルギーが気になって、同じ家での同居には踏み切れない。親の介護とペットの世話が重なると、こうした住まいの悩みに突き当たるご家庭は少なくありません。

その解決策のひとつが、母屋のある敷地(庭など)に独立した建物をもう一棟設け、生活空間を分ける住まい方です。私たち株式会社アイデアが手がける、庭に設置する介護専用ハウス(別棟)「シニアリビング」も、その一例です。

別棟でできること|特徴と仕様

  • 生活空間が完全に分かれます:
    母屋とは別の建物になるため、鳴き声、におい、抜け毛、生活時間のずれを物理的に切り離せます。
  • 床に段差がありません:
    足腰が弱った高齢者にも、高齢の犬猫にも負担が少ない構造です。床材やペット用の出入り口は、設置時に相談できます。
  • 自宅を工事せずに設置できます:
    工場で仕上げた建物をクレーン付きトラックで運び、設置します。母屋のリフォーム工事は必要ありません。
  • 高断熱で室温が安定します:
    冬の寒さと夏の暑さが和らぎ、ヒートショック対策にもなります。人にも動物にも過ごしやすい環境です。
  • 使い終わったあとに買い取れます:
    解体して処分する場合と比べ、将来の負担を抑えられます。移設や別用途への転用もできます。

向くケースと、慎重に検討したいケース

どの住まい方にも、家族の状況による向き不向きがあります。次の整理を、ご自身の家庭と照らし合わせてみてください。

  • 向いているケース
    • 設置できる庭や敷地がある
    • 家族のアレルギーや夜間の鳴き声を、空間を分けることで解決したい
    • 母屋と程よい距離を保ちながら、ペットと暮らす親を見守りたい
  • 慎重に検討したいケース
    • 設置スペースが足りない、または給排水の引き込みに制約がある
    • 用途地域などの条件を満たすかどうかが未確認(自治体への確認が必要です)
    • 24時間つきっきりの見守りが必要な状態にある(施設などほかの選択肢との比較が必要です)

別棟を設けて減らせるのは、あくまで同居に伴う生活の摩擦や、アレルギー・衛生の問題です。ペットの世話そのものがなくなるわけではないので、日々の分担や将来の飼育費の準備は、住まいとは別に進めておく必要があります。

ほかの選択肢と並べて比べる

高齢の親とペットの住まいを見直すときは、母屋をリフォームして同居する、庭に別棟を設ける、高齢者施設へ入居する、という3つを並べて比べると、それぞれの長所と短所がはっきりします。

比較の観点母屋をリフォーム庭に別棟を設置施設へ入居
費用(初期・運用)工事範囲しだい。運用費は現状と同じ設置費用がかかる。運用費は光熱費が別に発生初期費用と月額費用が継続的に発生
工期・手間工事中は生活に影響が出る基礎工事のあと設置。母屋の工事は不要入居手続きと待機期間が必要
プライバシー同じ建物内のため分離に限界がある建物が分かれるため確保しやすい個室なら確保できる
介護の負担家族が担う家族が担う(距離は近い)施設の職員が担う
ペットとの同居可能。ただし家族との空間分離が課題可能。空間を分けやすい施設ごとの条件しだい。受け入れは限られる
将来の扱い建物に残る。原状回復は難しい買取、移設、別用途への転用ができる退去後の負担はない
設置・利用の条件建物の構造による制約敷地、給排水、用途地域の確認が必要介護度や医療的ケアの要件がある

費用や設置の条件は、敷地の広さや地域の法規制などによって一軒ごとに異なります。具体的に検討するときは、ひとつの方法に決め打ちせず、複数の選択肢で見積もりを取って比べてみてください。

なお、実家のペットの世話が難しくなってきた背景には、親のひとり暮らしそのものが限界に近づいている場合もあります。親の一人暮らしの限界のサインと次の住まいの選び方については、別の記事にまとめています。

よくある質問

Q
親が「最後まで自分が看る」と言って聞きません。どうすればいいですか?
A

無理に説得しようとせず、まずはその思いを受け止めることが大切です。そのうえで、「もし急に入院したら、その間だけどうするか」という一時的な備えとして話を持ちかけてみましょう。環境省がまとめた、飼育が立ち行かなくなった家庭への対応事例でも、否定せずに共感を示したことで信頼関係ができたと記録されています。最後まで飼うという目標を否定しない形なら、無理なく話を進められます。

Q
ペットを託すには、どのくらいの費用がかかりますか?
A

託す先によって大きく異なり、まとまった資金が必要になることもあります。たとえば、飼い主が飼えなくなったときに団体がペットを引き取るペット後見の互助会では、初期費用に加えて、終生飼育費として1頭あたり100万円からを準備します。老犬・老猫ホームに長く預ける場合も、年単位で数十万円から百万円を超える費用になります。親自身の預貯金や保険から、ペット用の資金を分けておくと安心です。

Q
親が急に入院しました。今日、何をすればいいですか?
A

まずは数日分、ペットが安全に過ごせる居場所を確保することが最優先です。ペットホテルや動物病院、泊まり込みに対応するシッター、親族などに一時的に預けましょう。最初の数日で行き先まで決める必要はありません。入院の見込み期間を確かめたうえで、里親探しや、団体が引き取るペット後見など、長く預ける先を1週間から1か月かけて決めていきます。

Q
ヘルパーに犬の散歩を頼めますか?
A

いいえ、頼めません。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、訪問介護で受けられない「日常生活の援助の範囲を超えるサービス」の例として、草むしりや大掃除と並んでペットの世話が挙げられています。散歩のほか、餌やりやトイレの掃除も同じ扱いです。足りない部分は、散歩代行やペットシッターなどの自費サービスや、家族の分担で補います。

Q
自分の家では引き取れません。無責任でしょうか?
A

いいえ、無責任ではありません。賃貸住宅の規約や家族のアレルギー、仕事による留守番の長さなど、家庭の事情で飼えないことは十分にありえます。無理に引き取って数か月後に手放すほうが、環境が二度変わるぶん、ペットの負担は大きくなります。一時預かりや里親探し、団体が引き取って新しい飼い主を探すペット後見などを使って、安心して暮らせる次の居場所を整えることも、責任ある判断です。

まとめ:親を否定せずに、備えだけを先に整える

高齢の親とペットをめぐる問題は、異変に気づいたときに手を打てるかどうかで、その後が大きく変わります。入院や介護が必要になってから慌てても、選べる手は限られてしまいます。だからこそ、日々の暮らしが回っている今のうちに、少しずつ準備を進めておく価値があります。

この記事のポイントを、改めて振り返ります。

Point
  • 切り出し方を変える:これからも一緒に暮らすための相談として持ちかけると、話が前に進みます。
  • 託す先とお金を決める:選択肢は5つあり、費用が高いものほど確実性も高い傾向があります。
  • 介護保険とは別に手当てする:ペットの世話は訪問介護の対象外なので、自費のサービスと家族の分担で埋めます。
  • 緊急時はまず時間を作る:数日分の預け先を確保してから、長期の行き先を決めます。
  • 引き取れない判断も選択肢:条件を確かめたうえでの結論なら、ほかの道を探すほうがペットのためになります。

次に実家を訪ねたときは、玄関のにおいやフードの減り具合、ペットの足取りをさりげなく見てみてください。そこから「最近、散歩はどう?」と声をかけるだけでも、親とペットのこれからを守る第一歩になります。

「親を近くへ呼び寄せたいけれど、母屋での同居には不安がある」「ペットを手放さずに、家族みんなが心地よい距離を保ちたい」とお考えなら、庭などの敷地に独立した建物を設ける、別棟という住まい方も有力な選択肢になります。

私たち株式会社アイデアが手がける、庭に設置する介護専用ハウス(別棟)「シニアリビング」でどのような暮らしができるかは、サービスページで紹介しています。親も、ペットも、支える家族も、誰も無理をしない暮らし方を一緒に見つけていきましょう。

脚注

  1. 一般社団法人ペットフード協会「2025年 全国犬猫飼育実態調査」(2025). https://petfood.or.jp/pdf/data/2025/3.pdf ↩︎
  2. 一般社団法人ペットフード協会「2025年 全国犬猫飼育実態調査」(2025). https://petfood.or.jp/pdf/data/2025/3.pdf ↩︎
  3. 内閣府「令和8年版 高齢社会白書」(2026). https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2026/zenbun/08pdf_index.html ↩︎
  4. 環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(令和6年度・2025公表). https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html ↩︎
  5. 環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(令和6年度・2025公表). https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html ↩︎
  6. 環境省「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」(2021). https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/r0303a.html ↩︎
  7. 環境省「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」(2021). https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/r0303a.html ↩︎
  8. 環境省「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」(2021). https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/r0303a.html ↩︎
  9. e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第千二条・第千二十七条(2026年9月閲覧). https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 ↩︎
  10. 東京都動物愛護相談センター「飼い続けるのが難しくなってしまったら」(2026年9月閲覧). https://wannyan.metro.tokyo.lg.jp/konnan/ ↩︎
  11. 環境省「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」(2021). https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/r0303a.html ↩︎
  12. 老犬ホーム スマイルフラワー「料金案内」(2026年9月閲覧). https://roukenhome.com/price/ ↩︎
  13. THE ケネルズ東京「ご利用料金」(2026年9月閲覧). https://the-kennels.tokyo/price.html ↩︎
  14. 認定NPO法人人と動物の共生センター「ペット後見互助会とものわ」(2026年9月閲覧). https://human-animal.jp/actions/pet-kouken ↩︎
  15. 認定NPO法人人と動物の共生センター「ペット後見互助会とものわ」(2026年9月閲覧). https://human-animal.jp/actions/pet-kouken ↩︎
  16. 認定NPO法人人と動物の共生センター「ペット後見互助会とものわ」(2026年9月閲覧). https://human-animal.jp/actions/pet-kouken ↩︎
  17. e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第千二条・第千二十七条(2026年9月閲覧). https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 ↩︎
  18. e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第千二条・第千二十七条(2026年9月閲覧). https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 ↩︎
  19. 厚生労働省「介護サービス情報公表システム/訪問介護(ホームヘルプ)」(2026年9月閲覧). https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group2.html ↩︎
  20. 環境省「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」(2021). https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/r0303a.html ↩︎
  21. 環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(令和6年度・2025公表). https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html ↩︎
  22. 東京都動物愛護相談センター「飼い続けるのが難しくなってしまったら」(2026年9月閲覧). https://wannyan.metro.tokyo.lg.jp/konnan/ ↩︎