親の呼び寄せ費用|同居・近居・敷地内近居の相場と準備チェックリスト

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「遠くの親が心配。そろそろ呼び寄せを考えた方がいい気がする。でも——結局、いくらかかるの?

同居のリフォーム代? 近居の二重家賃? 介護保険で戻ってくるお金は? きょうだいとの費用分担は? 実家はどうする?——調べるほどに疑問が増えて、家族会議の前で足が止まっていませんか。

この記事では、「同居」「近居」「敷地内近居」の3選択肢と施設費用を、2026年時点の数字で横並びに比較します。そのうえで、既存の呼び寄せ記事では意外と抜け落ちがちな公的制度・節税・親資産の活用・きょうだい分担・時系列の準備チェックリストまで、家族会議のたたき台として使える形で整理しました。

この記事を読み終える頃には、次のことが分かっているはずです。

  • 同居・近居・敷地内近居それぞれの初期費用と10年総額の目安
  • 使える公的制度6つ(住宅改修費・高額介護サービス費・扶養控除・医療費控除・世帯分離・リ・バース60)の活用順序
  • 子世帯の家計を守るための親資産の棚卸しと、実家・リバースモーゲージの現実解
  • きょうだいで揉めない費用分担5パターンと合意書に入れる7項目
  • 呼び寄せで家計が詰む3つの失敗パターンと回避策
  • 6ヶ月前から引越し後1ヶ月までの時系列準備チェックリスト

なお、3つ目の選択肢「敷地内近居」を具体化する手段として、私たち株式会社アイデアは移動式の介護専用ハウス「C’ZB(シーズビー)シニアリビング」を提供しています。同居の安心と近居のプライバシーを両立したい方の選択肢として、本文でも比較対象に含めています。

また、親の呼び寄せの全体像、手順については、別記事「【決定版】親の呼び寄せで失敗しない!7つの落とし穴と全手順」で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

親を想うからこそ、冷静に数字で比較する。そのための判断材料を、ここから整理していきましょう。

親と「同居」にかかるリアル費用と、家計の分岐点

まずは、もっともイメージしやすい「同居」から見ていきましょう。一つ屋根の下で暮らすことで得られる安心感は大きい一方、費用は「安いようで、振れ幅がとても大きい」のが実態です。

ポイントは、住宅改修の範囲によって初期費用が数万円から数百万円までぶれることです。「手すりだけ」と「浴室全面改修まで」では、家計へのインパクトがまるで違います。

同居の初期費用:引越し・バリアフリー改修・家財処分

初期費用の大半は、親御さんの引越しと、自宅のバリアフリー化です。家財処分の費用も見落とされがちですが、実家を引き払う場合は予想以上にかかります。

2026年時点の相場を整理すると、おおむね次のレンジが目安になります1, 2

  • 引越し費用:単身の通常期は約6.8万円、2〜3人世帯で10〜12万円。繁忙期(3月)の家族引越しは24万円台まで上がることもあります
  • バリアフリーリフォーム:手すり1〜5万円/段差解消3〜20万円/床材変更10〜30万円/引き戸化8〜25万円/洋式便器化15〜40万円/浴室全面改修80〜200万円
  • 家財処分・遺品整理:1LDK・2DKで7〜18万円、3LDK・4DKで19〜40万円、戸建て4LDK以上は物量によって30〜80万円台

ここで覚えておきたいのが、介護保険の住宅改修費です。要支援・要介護の認定を受けている方を対象に、支給限度基準額20万円までの工事費について、所得に応じて1〜3割の自己負担で利用できます3。対象は手すり設置、段差解消、滑り防止の床材変更、引き戸などへの扉交換、和式便器から洋式便器への取替えなどです。

つまり、手すりや段差解消などの軽微な工事だけで済むケースでは、自己負担は数万円〜十数万円に収まる可能性があります。一方、浴室やトイレの全面改修まで入ると100〜300万円台に跳ねやすく、ここが同居を選ぶ家計の分岐点になります。

同居の継続費用:生活費の増加と介護保険の自己負担

継続費用は、主に「世帯の生活費増加分」と「親御さんの介護サービス費・医療費」に分かれます。

生活費(食費・水道光熱費など)は、同居する人数が増えるぶんだけ月2〜5万円程度増える傾向があると考えられます(一般的な世帯モデルに基づく編集部試算。世帯構成により変動)。一方、介護サービスの自己負担は要介護度で大きく変わります4

要介護度支給限度額1割負担(目安)3割負担(目安)
要介護1約16.8万円月16,765円月50,295円
要介護3約27.1万円月27,048円月81,144円
要介護5約36.2万円月36,217円月108,651円

ただし、月の介護サービス自己負担が一定額を超えると、高額介護サービス費として超過分が払い戻されます。この上限は、後ほど制度のセクションで詳しく解説します。

親と「近居」にかかるリアル費用と、二重住居費の落とし穴

次に、お互いのプライバシーを尊重しやすい「近居」です。自由度が高い反面、住居費が二重になるという経済的負担が避けられません。ここを甘く見ると、10年単位で家計を圧迫します。

近居の初期費用:賃貸契約と家具家電

近居で一番大きいのは、親御さんの新しい住居にかかる初期費用です。

  • 賃貸の場合:敷金・礼金・仲介手数料・前家賃などで、家賃の4〜6ヶ月分が相場
  • 購入の場合:シニア向け分譲マンションの全国平均は約4,386万円。東京都内の掲載例では3,100万円台〜4,850万円台が中心です5
  • 家具・家電の買い替え:ダウンサイジングに合わせて20〜50万円程度
  • 引越し費用:同居と同じ相場感

近居の継続費用:住居費と訪問交通費の長期累積

近居でやっかいなのは、継続費用です。親御さんの住居費、親世帯と子世帯それぞれの光熱費、そして定期的な訪問交通費が長期で積み上がります。

高齢者向け賃貸の相場は、地域差が大きく出ます6

  • 横浜市の掲載例:月6.98〜10.3万円
  • 福岡市の掲載例:月13.5〜19.8万円
  • 東京都内の掲載例:月15.8万円前後

仮に家賃10万円で10年続ければ、それだけで住居費は1,200万円に達します。見守りに週1往復の交通費がかかれば、さらに積み上がります。

使える助成:UR近居割・自治体の住み替え支援

見落とされがちですが、近居を前提にした公的支援は意外と手厚くなっています。

UR都市機構では、「近居割」「近居割ワイド」により、新たにURへ入居して近居を始める世帯の家賃を最大5年間5%減額しています。子育て世帯・若者夫婦世帯が要件を満たすと、5年間20%・月上限4万円まで拡充されます7

自治体の助成も充実してきました8, 9

  • 神戸市「住みかえーる」:子育て世帯等の住み替えで最大35万円
  • 青梅市「三世代同居近居住宅取得等応援事業」:最大20万円
  • 世田谷区:多世代近居・同居推進の応援事業

「親の介護」単独名目でなくても、三世代・多世代の枠で使える助成は多くあります。呼び寄せ先の自治体サイトで「近居」「三世代」「多世代」のキーワードで検索してみてください。

第3の選択肢「敷地内近居」の費用と準備

「同居はプライバシーが心配、でも近居は費用がかかりすぎる」——多くの方が、この二つのデメリットの前で立ち止まります。

そんなお悩みを解決するのが、自宅の敷地内に独立した離れを置く「敷地内近居」という第3の選択肢です。株式会社アイデアがご提案しているのが、移動式の介護専用ハウス「C’ZB(シーズビー)シニアリビング」です。母屋はそのまま、工場で完成させたハウスをクレーンで運んで設置します。

敷地内近居の総額:本体価格+付帯工事費

気になる費用は、本体価格だけでなく付帯工事費まで含めて把握するのが鉄則です。C’ZB掲載例とユニットハウスの付帯費用相場から総額を試算すると、次のようになります10

  • 本体価格:8.2坪タイプで約390万円、カスタマイズ例で650万円
  • 運搬費:10〜50万円
  • 基礎工事:5〜80万円
  • 電気工事:5〜30万円
  • 給排水工事:10〜50万円
  • 確認申請費:10〜30万円

これらを合算すると、総額の目安は約430〜890万円となります。同居で浴室全面改修まで入れた大規模リフォーム(200〜400万円)+家財処分(30〜80万円)と比べると、初期費用の絶対額では同居リフォームのほうが安く済むケースが多いのが実情です。敷地内近居を選ぶ価値は、金額の安さではなく「プライバシーを保てる」「既存の母屋を大きく改修せずに済む」「将来、親の介護度が変わったときに別棟を撤去・移設・賃貸転用できる」といった柔軟性にあります。費用だけで選ぶなら同居リフォーム、暮らし方の自由度を優先するなら敷地内近居、という整理が現実的です。

継続費用では、離れの光熱費が中心です。高断熱設計のため省エネで、建物規模に応じた固定資産税がかかりますが、比較的安価な範囲に収まる傾向があります。詳細は介護ハウスの固定資産税の解説記事「介護ハウスの固定資産税はいくら?計算方法とシミュレーション、節税のポイントを専門家が解説」も参考にしてください。

敷地内近居の準備:シンプルだが確認すべき3点

敷地内近居は、同居のような大規模リフォームや近居の物件探しがないぶん、準備はとてもシンプルです。ただし、次の3点は必ず事前確認が必要です。

  1. 設置場所の確認:庭の広さ、クレーンや搬入経路、建ぺい率などの法的規制
  2. モデル・間取りの選定:お一人用かご夫婦用か、必要な設備
  3. 基礎・ライフライン接続の計画:電気・給排水の引き込み条件

このうち設置場所と法的規制の確認は、専門家が無料で調査・サポートするケースが多くなっています。まずは問い合わせてみるのがおすすめです。

3選択肢+施設の費用比較マトリクス

ここまでの内容を、「施設入居」も加えた比較表にまとめます。在宅(同居・近居・敷地内近居)と施設のどちらに耐えられるかを見比べるのが、最も大切な判断軸です11, 12

比較軸同居近居敷地内近居(C’ZB)施設(参考)
初期費用レンジ数万〜300万円家賃4〜6ヶ月+家具約430〜890万円入居一時金0〜数百万円
月次増減(子世帯)+2〜5万円+家賃+交通費+光熱費+税金月8〜25万円(施設種別)
10年総額の目安振れ幅大(50〜500万円)1,500万円超もあり500〜1,000万円1,000〜3,000万円
撤退コストリフォーム残存解約金・引越し撤去・移設可能退去精算
公的制度の適用住宅改修費○/高額介護○UR近居割/自治体助成住宅改修費△/高額介護○高額介護○
プライバシー○〜◎
将来の柔軟性△(戻しにくい)◎(撤去・移設)△(転居コスト)

※10年総額の目安は、相場データに基づく編集部試算です。実額は要介護度・地域・施設種別で変動します。

施設の月額相場は、特養で月8〜15万円、サ高住で月16.7〜17.8万円、有料老人ホームで月21.9〜25.7万円です。LIFULL介護の調査では、施設入居の費用負担は「入居者本人+家族・親族」が約7割となっており、親の資産と家族負担を組み合わせるのが実情です13

費用を下げる公的制度・節税の完全ガイド

ここからが、既存の呼び寄せ記事では意外と書かれていない「費用を下げる公的制度」です。使える順番で整理します。

① 介護保険の住宅改修費(上限20万円・1〜3割負担)

前述のとおり、要支援・要介護の認定を受けている方を対象に、住宅のバリアフリー改修費が上限20万円まで1〜3割負担で利用できます14。ポイントは、工事前にケアマネジャーへの相談と自治体への事前申請が必要なことです。事後申請では対象外になります。

② 高額介護サービス費(月の自己負担に上限あり)

月の介護サービス自己負担が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。2025年8月以降の自治体案内では、おおむね次の階層になっています15

  • 生活保護受給者等:月15,000円
  • 住民税非課税世帯の一部:月24,600円
  • 住民税非課税世帯の一般:月44,400円
  • 課税所得380万円未満:月44,400円
  • 課税所得380万〜690万円未満:月93,000円
  • 課税所得690万円以上:月140,100円

要介護度が高い方ほど、この制度の恩恵が大きくなります。自治体ごとに案内の表現差があるため、利用月時点で自治体窓口や厚労省通知を確認してください。

③ 扶養控除・同居老親等(最大58万円の所得控除)

70歳以上の親を扶養している場合、所得税の老人扶養親族として48万円の所得控除が使えます。さらに、納税者や配偶者と常況として同居している親については「同居老親等」として58万円の控除になります16

なお、実務で「同居老親等加算」と呼ばれるのは独立した制度ではなく、老人扶養親族48万円に10万円が上乗せされるという理解が正確です。また、2025年度税制改正で扶養親族の所得要件が48万円から58万円へ引き上げられており、年金収入があっても扶養に入れやすくなっています17

④ 医療費控除・セルフメディケーション税制

本人または「生計を一にする」配偶者・親族のために支払った医療費が、年10万円(または所得の5%)を超えた分について控除対象になります。通常制度とセルフメディケーション税制は選択適用です18

重要なのは「生計を一」の範囲です。同じ家に住んでいなくても、仕送りなどで生計を一にしていれば対象になり得ます。近居で親に仕送りをしている場合も、医療費領収書の保管を習慣にしておきましょう。

⑤ 世帯分離:節約できる場合と損する場合

世帯分離は、住民票上の世帯を分ける届出で、引越しを伴わずに可能です19。介護保険料や後期高齢者医療の負担が下がるケースがある一方、国民健康保険料は必ずしも下がらず、平等割が二世帯分になって逆に上がることもあります

「世帯分離=節約」と断定せず、親の所得・加入保険・子世帯の住民税区分ごとに試算してから判断するのが安全です。市区町村の国保窓口と介護保険窓口の両方で相談しましょう。

⑥ 生活福祉資金貸付・リ・バース60

費用負担の目処が立たない場合、次の制度が選択肢になります20, 21

  • 生活福祉資金貸付(全国社協):低所得高齢者世帯を対象に、不動産担保型などのメニューあり。都道府県社協で個別条件を確認
  • リ・バース60(住宅金融支援機構):満60歳以上、毎月は利息のみ、元本は死亡時に一括返済または担保売却。資金使途は住宅建設・購入・リフォーム・借換え・サ高住の入居一時金など。融資限度額は担保評価額の50〜60%

これらは「最後の手段」ではなく、親の資産を活かしつつ子世帯の家計を守る選択肢として検討する価値があります。

親の資産で賄う:実家・年金・リバースモーゲージ

呼び寄せ費用を考えるとき、「子世帯が全部出す」前提で組むと、自分たちの老後資金を食い潰します。最初に使うべきは、親御さん自身の資産です。

資産棚卸しの4カテゴリ

家族会議の前に、親御さんの資産を次の4つで棚卸ししておきましょう。

  1. 預貯金・有価証券:すぐに動かせる資金
  2. 年金収入:月額と終身性(生活費の継続財源)
  3. 実家の資産価値:売却/賃貸/空き家バンク活用
  4. 不動産担保型資金:生活福祉資金貸付、リ・バース60

この順番で「動かせるもの」から検討します。子世帯の現金を出すのは、原則最後の調整弁です。

実家売却・空き家バンクという現実解

実家を売却する場合、首都圏の中古戸建ての成約価格は、築26〜35年で3,000万円台、築35年超で2,000万円台というデータがあります(首都圏中古戸建ての価格帯)22。地方や築古の場合、相場はこれより低くなりますが、全国版の空き家・空き地バンクには1,097自治体が参画し、物件掲載は17,564件あります23

売却が難しい築古の戸建てでも、空き家バンクを通じて賃貸・利活用先が見つかるケースがあります。実家の売却価格だけをあてにするのではなく、「売れない場合のプランB」として空き家バンク登録も視野に入れておくと、意思決定が柔軟になります。

リ・バース60という選択肢

親御さんが実家に住み続けたいと希望する場合、住宅金融支援機構の「リ・バース60」が使える場面があります24。毎月の返済は利息のみで、元本は親が亡くなったときに担保物件の売却や相続人の一括返済で清算する仕組みです。呼び寄せではなく「実家でのリフォーム資金」や「サ高住の入居一時金」として使えば、子世帯の現金を温存できます。

きょうだい費用分担の5パターンと合意書に入れる7項目

呼び寄せで最も揉めやすいのが、きょうだい間の費用分担です。潜在的な不公平感は、言葉にしづらいまま蓄積しがちです。先に型を知っておきましょう。

民法上の扶養義務と、実務は合意ベース

民法上、直系血族(親子)と兄弟姉妹には互いに扶養する義務があります25。ただし、扶養の具体的な方法や金額は法律で定められていません。実際の負担は家族間の合意ベースで決まり、話し合いで折り合わなければ家庭裁判所の「扶養請求調停」で協議します26。申立費用は扶養権利者1人につき1,200円です。

費用分担の5パターン

現場でよく使われる分担の型は、次の5つです(編集提案)。

  • 均等分担:きょうだい全員で等分。シンプルだが収入格差が反映されない
  • 収入比例分担:年収に応じて比率を決める。納得感は高いが、情報開示が必要
  • 同居者減額型:同居者は金銭負担を減らし、時間・労力で貢献とカウント
  • 親資産優先型:親の預貯金・年金・実家売却を先に充て、不足分のみきょうだいで分担
  • ハイブリッド型:上記を組み合わせ、月次の生活費は均等、突発費用は収入比例など、費目別にルール化

おすすめは「親資産優先型」を土台に、不足分を「収入比例」で分担するハイブリッドです。時間を出す人と現金を出す人を分けて評価することで、不公平感が和らぎます。

合意書に入れる7項目

家族会議の結果は、必ず書面に残しましょう。扶養請求調停で争点化しやすい項目に沿って、合意書には次の7項目を含めるのがおすすめです。

  1. 費用分担の割合・方法
  2. 立替精算のルール(誰が立て替え、いつ精算するか)
  3. 通院同行・介護の時間分担
  4. 緊急連絡体制
  5. 施設入居の判断基準
  6. 実家の処分・管理方針
  7. 成年後見・相続との切り分け

合意書は法的拘束力のある契約書にしなくても構いません。「話し合った記録を、全員が持つ」ことが大切です。

呼び寄せで家計が詰む3つの失敗と回避策

最後に、呼び寄せた後に「こんなはずじゃなかった」になる典型失敗を見ておきます。先に知っておけば、ほとんどの失敗は回避できます。

失敗①:リロケーションダメージで親が急速に弱る

住み慣れた土地を離れて呼び寄せた結果、親御さんに孤立感や抑うつ、認知機能の低下が現れるケースがあります。学術的には「リロケーションストレス」「リロケーションエフェクト」と呼ばれる現象です27

回避策は、いきなり完全呼び寄せに踏み切らないことです。まず近居で「お試し」してみる、あるいはデイサービスの利用を段階的に増やすなど、移行をゆるやかにすると、親御さんの環境適応を助けられます。

失敗②:介護離職で家計が一気に崩れる

介護・看護を理由とする離職者は、2022年時点で10.6万人に上ります28。経済産業省の試算では、仕事と介護の両立困難による経済損失は2030年に約9.1兆円と見込まれています29

回避策は、離職の前に使える制度を総動員することです。介護休業(通算93日)、介護休暇、短時間勤務、時差出勤、訪問介護の追加、デイサービスの利用拡大。職場の人事・介護支援担当に早めに相談してください。

失敗③:二重住居費と空き家維持費の積み重ね

LIFULL介護の「介護施設入居実態調査2025」では、施設入居時に実家の家じまいをした人は約2割、空き家状態も約2割でした30。つまり、約4割の世帯で、呼び寄せや施設入居の後も実家のコストが残っているわけです。

40代の夫婦が都内で9,500万円の二世帯住宅を購入したのに、親の環境変化に対応できず売却を決めた事例もあります31

回避策は、呼び寄せ前に実家の処分計画を確定させることです。売却、賃貸、空き家バンク登録、最終的に手放す時期の目安まで、家族会議で決めておきましょう。

呼び寄せ準備チェックリスト(6ヶ月前〜引越し後1ヶ月)

ここまでの情報を、時系列の準備チェックリストに落とし込みます。タスクと発生する費用を一体で管理するのがポイントです。

6ヶ月前:方針の確定

  • 家族会議を開く(親+きょうだい+配偶者):費用分担の方針、役割分担、撤退条件
  • 親の意思を本音で確認:「呼び寄せは親にとって人生の大きな変化」である前提で
  • 親の資産棚卸し:預貯金・年金・実家評価・保険(→費用はゼロ)
  • 要介護認定の申請:まだ未認定なら、呼び寄せ前後に申請(費用は無料)
  • 選択肢の選定:同居/近居/敷地内近居の3択を家族で絞り込み

3ヶ月前:費用試算と具体計画

  • 物件探しまたはリフォーム見積り:同居ならリフォーム会社2〜3社、近居なら不動産2〜3社、敷地内近居なら設置調査を依頼
  • 実家整理計画:売却/賃貸/空き家バンクの方針を決定、査定を2〜3社
  • 公的制度の適用確認:住宅改修費の事前申請、世帯分離の損得試算、扶養控除の適用可否
  • 助成金の申請準備:UR近居割、自治体の三世代助成(神戸市/青梅市など)

1ヶ月前:手配と契約

  • 引越し業者を手配:複数見積り、繁忙期(3月)を避けられると費用を抑えやすい
  • 家財処分・遺品整理の発注:物量に応じて3〜80万円の差が出る
  • 住所変更の手配:住民票、介護保険、国民健康保険/後期高齢者医療、年金、運転免許、銀行、ライフライン
  • 新居のかかりつけ医・ケアマネ候補を地域包括支援センターに相談

引越し直後〜1ヶ月:定着と安全確保

  • 新居の安全チェック:段差、滑り止め、手すり、照明の明るさ
  • 地域コミュニティへの接続:町内会、老人会、趣味サークル、デイサービス見学
  • 緊急連絡体制の整備:緊急通報装置、近隣への挨拶、連絡先リストの冷蔵庫貼付
  • 費用記録の開始:立替精算・医療費控除の準備として家計簿を1冊分けて運用

あなたに合うのはどれ?3選択肢タイプ別診断

最後に、3選択肢のどれが自分に合うかを絞り込むためのタイプ別診断です。それぞれの選択肢に「向いている人」の特徴を、具体的な数値と条件で整理しました。

同居が向いているタイプ

  • 親御さんの要介護度が要介護3以上で、常時見守りが必要
  • 親の預貯金・実家資産が薄く、住居費を一本化したい
  • 世帯間の関係性が良好で、生活リズムの違いを許容できる
  • 自宅のバリアフリー改修を前提に受け入れられる

近居が向いているタイプ

  • 親御さんが自立〜要支援、または要介護1程度
  • 親の年金・預貯金に余裕があり、二重住居費に耐えられる
  • プライバシー・生活の自由度を最重視
  • UR近居割や自治体助成の対象地域に住んでいる

敷地内近居(C’ZB)が向いているタイプ

  • プライバシーと安心感、どちらも諦めたくない
  • 母屋に大規模リフォームを入れたくない
  • 庭や空きスペースに設置可能な敷地がある
  • 将来の撤去・移設・買取の柔軟性を重視したい
  • 費用を抑えつつ、スピーディに介護環境を整えたい

最終判定:6つの質問

迷ったら、次の6問をきょうだいと一緒にチェックしてください。

  1. 親の要介護度は「要介護2以上」ですか? →YESなら同居の優先度が上がる
  2. 親の年金+預貯金で月15万円以上の住居費を賄えますか? →YESなら近居が視野
  3. 自宅の庭に4〜8坪の設置スペースがありますか? →YESなら敷地内近居が視野
  4. 5年以内に施設入居の可能性がありますか? →YESなら撤退しやすい選択肢(近居/敷地内近居)
  5. プライバシー確保がないと続かないと感じますか? →YESなら同居は慎重に
  6. 自治体に三世代・多世代助成がありますか? →YESなら近居・敷地内近居の費用を下げられる

3選択肢はどれかが絶対的な正解というものではありません。家族の数だけ最適解があります。この記事の情報を家族会議のたたき台にしていただければ幸いです。

よくある質問

Q. 親の貯蓄がほとんど無くても、呼び寄せはできますか?

A. はい、制度と親資産の組み合わせで可能です。まず介護保険の住宅改修費(上限20万円・1〜3割負担)や高額介護サービス費で自己負担を抑え、実家が残っていれば売却・賃貸・空き家バンク登録、住み続けたい場合は住宅金融支援機構のリ・バース60で資金化する選択肢があります。全国社会福祉協議会の生活福祉資金貸付も対象になり得ます。子世帯の現金を出すのは原則として最後の調整弁と考えるのがおすすめです。

Q. 世帯分離はした方がいいですか?しないべきですか?

A. 一概には言えません。世帯分離は介護保険料や後期高齢者医療の負担が下がるケースがある一方、国民健康保険料は平等割が二世帯分になって逆に上がることもあります。親の所得・加入保険・子世帯の住民税区分によって損得が変わるため、市区町村の国保窓口と介護保険窓口の両方で試算してから判断してください。

Q. 親を扶養に入れると、税金はどれくらい得になりますか?

A. 70歳以上の親なら老人扶養親族として所得税で48万円、同居なら同居老親等として58万円の所得控除が使えます。2025年度税制改正で扶養親族の所得要件が48万円から58万円に引き上げられ、年金収入があっても扶養に入れやすくなりました。なお「同居老親等加算」は独立制度ではなく、老人扶養48万円に10万円が上乗せされる仕組みです。

Q. 呼び寄せのために介護離職したら、家計はどうなりますか?

A. 介護・看護を理由とする離職者は2022年時点で10.6万人に上り、経済産業省は2030年の経済損失を約9.1兆円と試算しています。離職は一時的な負担軽減になっても、長期では家計を大きく圧迫します。まずは介護休業(通算93日)・介護休暇・短時間勤務・訪問介護の追加利用など、離職の前に使える制度を総動員してください。

Q. 敷地内近居(C’ZB)と同居リフォームは、どちらが安く済みますか?

A. 初期費用の絶対額だけで見れば、同居リフォームのほうが安く済むケースが多いです。同居は「手すり・段差解消だけ」なら介護保険の住宅改修費(上限20万円)で数万円〜十数万円に収まり、水回りまで含む大規模リフォームでも200〜400万円+家財処分30〜80万円、合計230〜480万円が目安。一方、敷地内近居(C’ZB)は本体390〜650万円+付帯工事40〜240万円で、総額430〜890万円が中心レンジです。ただし、敷地内近居は「母屋を大きく改修しなくて済む」「プライバシーを保てる」「将来、撤去・移設・賃貸転用ができる」といった柔軟性が強みで、同居は一度改修すると原状回復コストが別途かかる点も考慮が必要です。費用最優先なら同居リフォーム、暮らし方の自由度や可逆性を重視するなら敷地内近居、という軸で判断してください。

まとめ|費用を「数字」で見れば、呼び寄せの最適解が見えてくる

親の呼び寄せ費用は、ざっくりのイメージではなく具体的な相場と公的制度で捉え直すと、家族が進むべき方向がはっきりしてきます。「いくらかかるか分からない」という漠然とした不安は、数字で可視化できた瞬間から、解くべき課題に変わります。

この記事のポイント

  • 3選択肢の費用感は全く違う:同居は振れ幅が大きく、近居は継続費用が長期化、敷地内近居は総額430〜890万円で将来の柔軟性あり
  • 公的制度は6つを「使う順番」で活用する:住宅改修費→高額介護サービス費→扶養控除→医療費控除→世帯分離の判断→生活福祉資金貸付/リ・バース60
  • 親の資産を最初に棚卸しする:預貯金・年金・実家・不動産担保型資金を並べてから、子世帯の持ち出しを最後の調整弁にする
  • きょうだい分担は5パターン×合意書7項目で先に型を決める:家族会議の結果は必ず書面に残す
  • 失敗はリロケーション・介護離職・二重住居費の3つに集約される:呼び寄せ前に実家処分計画と離職回避策を確定させる

費用診断の順番

家族会議のたたき台として、費用の検討は次の順番で進めるのがおすすめです。住宅費→介護費→税控除→保険料→親資産→施設比較。この順に整理すると、使える制度が抜けにくく、きょうだいの納得感も得やすくなります。

「敷地内近居」という選択肢を具体化したい方へ

同居の安心と近居のプライバシーを両立する敷地内近居は、呼び寄せの費用負担を予測しやすく、将来の撤去・移設という柔軟性も持てる選択肢です。株式会社アイデアの移動式介護専用ハウス「C’ZB(シーズビー)シニアリビング」は、費用のシミュレーションから設置場所調査まで専門家が無料でサポートしています。

親子の心地よい距離感と、家計を壊さない安心を両立する道を、一緒に探していきましょう。まずは気軽に、展示場やオンライン相談でご家族の状況をお聞かせください。

脚注

  1. 引越し侍「引越し料金の相場」https://hikkoshizamurai.jp/price/ ↩︎
  2. Office Tree「遺品整理費用相場ガイド」https://office-tree.jp/blog/shukatsu/estate-cleanup-guide/ ↩︎
  3. 厚生労働省「介護保険における住宅改修」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001016043.pdf ↩︎
  4. 市川市「在宅サービスの支給限度額」https://www.city.ichikawa.lg.jp/page/3299.html ↩︎
  5. LIFULL介護/Caresul介護「シニア向け分譲マンション相場」https://kaigo.homes.co.jp/ ↩︎
  6. LIFULL介護「高齢者向け賃貸 地域別相場」https://kaigo.homes.co.jp/market_price/ ↩︎
  7. UR都市機構「近居割拡充に関するプレスリリース」2026年 https://www.ur-net.go.jp/ ↩︎
  8. 神戸市「住みかえーる」https://www.city.kobe.lg.jp/ ↩︎
  9. 青梅市「三世代同居近居住宅取得等応援事業」https://www.city.ome.tokyo.jp/ ↩︎
  10. キョーシン「ユニットハウスの価格と付帯費用」https://kyoshin.biz/tralab/unit-house-price/ ↩︎
  11. CareOffer「特養費用目安」https://app.careoffer.jp/specials/863 ↩︎
  12. LIFULL介護「介護施設入居実態調査 2025」https://lifull.com/news/40537/ ↩︎
  13. LIFULL介護「介護施設入居実態調査 2025」https://lifull.com/news/40537/ ↩︎
  14. 厚生労働省「介護保険における住宅改修」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001016043.pdf ↩︎
  15. 藤沢市「高額介護サービス費」https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/ ↩︎
  16. 国税庁「高齢者と税」https://www.nta.go.jp/ ↩︎
  17. 国税庁「令和7年度税制改正Q&A」https://www.nta.go.jp/ ↩︎
  18. 国税庁「医療費控除を受ける方へ」https://www.nta.go.jp/ ↩︎
  19. 川崎市「世帯分離届」https://www.city.kawasaki.jp/ ↩︎
  20. 全国社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度」https://www.shakyo.or.jp/ ↩︎
  21. 住宅金融支援機構「リ・バース60」https://www.jhf.go.jp/ ↩︎
  22. REINS TOPIC「築年数から見た首都圏の不動産流通市場」2026年2月 https://www.reins.or.jp/ ↩︎
  23. 国土交通省「土地基本方針関連施策の実施状況」2025年 https://www.mlit.go.jp/ ↩︎
  24. 住宅金融支援機構「リ・バース60」https://www.jhf.go.jp/ ↩︎
  25. 民法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 ↩︎
  26. 裁判所「扶養請求調停」https://www.courts.go.jp/ ↩︎
  27. 「Relocation stress and its effects on older adults」PMC論文 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/ ↩︎
  28. 総務省「令和4年就業構造基本調査」https://www.stat.go.jp/ ↩︎
  29. 経済産業省「仕事と介護の両立支援ガイドライン関連」https://www.meti.go.jp/ ↩︎
  30. LIFULL介護「介護施設入居実態調査 2025」https://lifull.com/news/40537/ ↩︎
  31. 幻冬舎GOLD ONLINE「40代夫婦、都内に9,500万円の二世帯住宅購入事例」https://gentosha-go.com/articles/-/53725 ↩︎