介護離職しないための両立ガイド|6つの制度と介護休業93日の使い方

介護休業・介護休暇・所定外労働の制限・時間外労働の制限・深夜業の制限・短時間勤務などの6つの制度をカードで並べたデザイン 介護者の悩み・メンタルケア

親が突然入院し、「退院後は一人暮らしが難しそうだ」と告げられる。いざ介護が始まると、「仕事を続けられるだろうか」という不安が一気に押し寄せてきます。通院の付き添いで有給休暇が減り、夜間の介助で睡眠不足が続くと、「いっそ会社を辞めて介護に専念したほうが楽になるのでは」と思い詰めてしまう方も少なくありません。

しかし、退職を決める前にできることがまだあります。それは、職場の制度と介護サービスを組み合わせて、自分が仕事をしている間も介護が回る体制を整えることです。

実際、介護をきっかけに離職した人が挙げた理由で多いのは、勤務先の両立支援制度が使いにくかったことや、介護サービスを利用できなかった、あるいは使い方がわからなかったことです。これらはどちらも、仕事を辞める前に手を打てる余地があります。

この記事でわかること
  • 仕事を辞めても介護の負担が減りにくい理由と、離職が起きやすい時期
  • 2025年4月から会社に義務づけられたことと、働く人が使える6つの制度
  • 介護休業の93日を「体制を作る期間」に充てる方法と、日中不在でも回るサービスの組み合わせ
  • 住まいと親との距離を見直して負担を減らす方法(別棟の介護ハウスを含む比較)

介護離職の前に知っておきたいこと|辞めても負担は減りにくい

介護を機に離職した人のうち、負担が増したと答えた人の割合(精神面66.2%、肉体面63.2%、経済面67.6%)を示す棒グラフ

介護や看護を理由に仕事を辞めた人は、総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、調査日までの1年間で約10.6万人にのぼります1。そのうち8.3万人は、調査の時点で仕事に就いていません2。

介護を理由に辞めた人の多くが、少なくとも調査の時点では仕事に戻っていないことになります。

辞めても、介護の負担は軽くならないことが多い

仕事を辞めれば介護に向き合える時間は増えますが、それで負担が軽くなるとは限りません。厚生労働省の委託調査(令和3年度)で、介護を機に仕事を辞めた945人に退職後の変化を尋ねたところ、負担が「増した」と答えた人は精神面で66.2%、肉体面で63.2%、経済面で67.6%にのぼりました3。

介護に専念すると、親と向き合う時間が一日中続くうえに収入が途絶えるため、精神的にも経済的にも余裕を失いやすいと考えられます。さらに、再就職するまでの間は厚生年金の加入期間が途切れるため、将来受け取る年金額にも響いてきます。

離職の約7割は、介護が始まってから1年以内に起きている

厚生労働省の同じ委託調査によると、介護を始めてから退職するまでの期間は「3〜6か月未満」が22.9%と最も多く、1年未満を合わせると約7割を占めています(各区分の割合を当サイトで合算)4。介護が始まった直後の最も慌ただしい時期に、多くの人が退職を決めていることがわかります。

仕事を辞めた理由(複数回答)を見ると、仕事を続けたかったものの「勤務先の両立支援制度の問題や介護休業等を取得しづらい雰囲気等があった」が43.4%で最多でした。次いで、仕事を続けたかったが介護保険などのサービスを利用できなかった、あるいは利用方法がわからなかったという理由が30.2%を占め、「仕事を続けたくなかった」という人は22.0%にとどまります5。

つまり、仕事を続けたいと望みながらも、職場の制度か介護サービスのどちらかでつまずいて離職した人が多いのです。介護が始まって最初の数か月のうちにこの2つを整えられれば、仕事を辞めずに済む人は少なくないと考えられます。

2025年4月から会社に義務づけられたこと|相談は法律で守られている

会社から従業員への矢印に、個別の周知と意向確認、40歳での情報提供、研修や相談窓口などの整備、テレワークの努力義務の4つを示した図

「介護のことを会社に話すと、評価や異動で不利になるのではないか」と、相談をためらう方は少なくありません。しかし、2025年4月1日に施行された改正育児・介護休業法により、介護について会社が果たすべき義務が増えました6。

申し出た人には、会社が制度を個別に知らせて意向を確かめる

従業員から「家族の介護が必要になった」と申し出があった場合、会社は①両立支援制度の内容、②制度の申し出先、③介護休業給付金について個別に知らせ、制度を利用するかどうかの意向を確認しなければなりません7。案内は面談(オンライン可)や書面などで行い、制度の利用を控えさせるような働きかけは認められていません8。

さらに、介護休業の申し出や取得を理由とした解雇などの不利益な扱いは、法律で禁じられています9。

40歳での情報提供と、相談しやすい環境づくりも義務に

介護に直面する前の段階でも、会社は従業員が40歳になる年度などに、両立支援制度や介護休業給付金の情報を提供しなければなりません10。同時に、社内研修の実施、相談窓口の設置、制度を利用した社員の事例の提供、制度の利用を促す方針の周知のうち、少なくとも1つを行う義務も課されています11。そのため、社内報や就業規則をあらためて確認すると、相談窓口が見つかることがあります。

テレワークは努力義務、介護休暇は入社直後でも取れるように

また、要介護状態の家族を介護する従業員がテレワークを選べるようにすることも、会社の努力義務となりました12。義務ではないため導入していない企業もありますが、在宅勤務を会社に相談するときの根拠になります。

通院の付き添いなどに使える介護休暇(年5日、対象家族が2人以上なら年10日まで)については、労使協定で勤続6か月未満の従業員を対象外とする仕組みが廃止されました13。これにより、転職直後に親が倒れた場合でも、介護休暇を使えるようになっています。ただし、週の所定労働日数が2日以下の従業員は、引き続き労使協定で除外できます14。

会社の側にも、両立を支える理由がある

会社が従業員の両立を支える背景には、働きながら介護を担う人の増加があります。経済産業省の試算では、2030年には仕事をしながら介護をする「ビジネスケアラー」が約318万人に達すると見込まれています15。国も、両立支援に取り組む事業主に向けた両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)を、2026年度も設けています16。

上司や人事への切り出し方、伝える順序、そのまま使える例文は、「介護の会社への伝え方|上司に話す順番と準備」で詳しく整理しています。

仕事と介護の両立に使える6つの制度

カレンダーに介護休業と介護休暇、時計に所定外労働・時間外労働・深夜業の制限と短時間勤務などを配置し、6つの制度を2つに分けて示した図

仕事と介護の両立を支えるため、育児・介護休業法では6つの制度が定められています17。要件を満たす従業員が申し出た場合、会社は原則として断れません(残業や深夜業の制限は、事業の正常な運営を妨げる場合を除きます)18。

6つの制度と、それぞれの使いどころ

制度内容使いどころの例
介護休業対象家族1人につき通算93日まで。3回まで分けて取れる退院直後などに、介護の体制を整える
介護休暇年5日(対象家族が2人以上なら10日)まで。時間単位でも取れる通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談
所定外労働の制限請求すれば、所定労働時間を超える残業が免除されるデイサービスの送迎の時間に帰宅する
時間外労働の制限請求すれば、残業が月24時間・年150時間までになる残業をなくせない職場で、上限を決めておく
深夜業の制限請求すれば、午後10時〜午前5時の労働が免除される夜勤のある人が、夜間の見守りを担う
所定労働時間の短縮等の措置短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護サービス費用の助成のうち、会社がいずれかを用意する。連続する3年以上の期間に2回以上使える(費用の助成を除く)朝の送り出しや夕食の介助に合わせて、勤務時間をずらす

どの制度を組み合わせるかは、親の状態やご自身の働き方によって違います。

たとえば、「平日の日中はデイサービスを利用し、送迎の時間に合わせて時差出勤を使う」といった組み立てが考えられます。短縮等の措置としてどの制度を用意しているかは会社によって異なるため、まずは就業規則を確認してみましょう。

介護休業は、入社1年未満などで対象外になる場合がある

介護休暇は入社直後から使えるようになりましたが、介護休業については、会社と従業員の代表が労使協定を結んでいる場合、会社は①入社1年未満の人、②申し出から93日以内に雇用が終わることが明らかな人、③週の所定労働日数が2日以下の人を対象外にできます19。

また、有期雇用の人は、休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに、契約が終わることが明らかでない場合に限って取得できます20。入社して間もない方や有期雇用の方は、使える制度の範囲を早めに人事に聞いておくと安心です。

介護休業給付金は賃金の67%。ただし社会保険料は免除されない

介護休業中に給与が出るかどうかは会社の規定によりますが、雇用保険に加入していて一定の要件を満たしていれば、介護休業給付金を受け取れます。支給額は原則として「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で、同じ家族について通算93日、3回まで受け取れます21。

ただし、介護休業は産前産後休業や育児休業と異なり、健康保険や厚生年金の保険料が免除されません22。休業中も保険料の本人負担分を納めるため、手元に残るお金は賃金の67%より少なくなります。

月給ごとの支給額の目安や受給条件、申請の手順は、「介護休業給付金はいくら?支給額・受給条件・手続きを2026年版で解説」にまとめています。

介護休業の93日は「体制を作る期間」に使う

平均55.0か月の介護期間を示す長い帯のうち、介護休業の93日がごく一部であることと、その間に済ませる5つの段取りを示した図

介護休業の93日間を「自分で親を付きっきりで介護するための休み」と捉えてしまうと、職場に戻るタイミングで行き詰まりやすくなります。

生命保険文化センターの2024年度の調査によると、介護期間の平均は55.0か月(4年7か月)で、4年を超えた人が約4割でした23。93日(約3か月)は、介護生活全体から見ればごく一部にすぎません。

そのため、この93日間は自分が仕事に戻った後も介護が回る体制を整えるための期間として使うのが現実的です。労働政策研究・研修機構(JIL)が紹介した厚生労働省の調査でも、介護休業を「介護に専念するための期間」と考える人と、「仕事を続けながら介護をするための体制を構築する期間」と考える人とでは、仕事を続けられる見込みに差がありました24。

休業中に済ませておきたいこと

親の退院に合わせて休業を取る場合は、たとえば次のような手順で体制を整えていきます。

  • 要介護認定の申請:
    市区町村の介護保険の窓口に申請し(地域包括支援センターに代行を頼むこともできる)、認定後に担当のケアマネジャーを決める
  • ケアプランの作成:
    勤務時間や通勤時間を伝え、仕事で留守にする時間をサービスで埋める計画を立ててもらう
  • サービスの見学と契約:
    デイサービスやショートステイを見学し、利用の契約を結ぶ
  • 住環境の手配:
    手すりの取り付けや介護ベッドの手配など、退院後の暮らしに必要なものを整える
  • 職場との調整:
    復帰後に使う制度を上司や人事とすり合わせ、業務を引き継ぐ

介護休業は3回まで分けて取れます25。そのため、退院直後の体制づくりに一部を使い、残りの日数は親の状態が大きく変わったときや施設を探すときのために残しておく、という使い方もできます。

日中不在でも介護は回る|ケアマネジャーと組む体制

朝・日中・夕方の仕事の時間を、訪問介護とデイサービスで埋める1日のタイムラインと、ケアプランを作るケアマネジャー

仕事で家を空ける時間帯は、介護保険のサービスを組み合わせて埋められる場合があります。その組み合わせを一緒に考える相手が、ケアプラン(介護サービスの利用計画)を作るケアマネジャーです。

ケアマネジャーに「仕事を続けたい」と具体的に伝える

要介護認定が出て担当のケアマネジャーが決まったら、仕事を辞めずに続けたいという意向とあわせて、出勤・帰宅の時刻、残業の頻度、出張の有無、在宅勤務ができる曜日など、日々の生活の流れを伝えておきましょう。そうすると、留守の時間を前提にしたケアプランを組んでもらいやすくなります。

仕事の事情を考えてもらえないと感じたときは、所属する事業所に申し出て担当者を替えてもらうほか、事業所そのものを変えることもできます。

ケアマネジャーの選び方や見極め方の基準は、「ケアマネの選び方と探し方|良い担当を見極める7つの基準」で整理しています。

仕事の時間を、どのサービスで埋めるか

  • 訪問介護(ホームヘルプ):出勤前や昼、帰宅前の食事・排泄の介助や、服薬・安否の確認
  • 通所介護(デイサービス):日中に施設へ通い、食事や入浴、機能訓練を受けながら過ごす
  • 短期入所生活介護(ショートステイ):出張や繁忙期などに、数日間施設に泊まって介護を受ける
  • 福祉用具の貸与・購入:介護ベッドや車椅子、手すりで、起き上がりや移動の負担を減らす

たとえば、平日の日中はデイサービスに通い、朝と夕方を訪問介護で支えれば、勤務時間の大半をまかなえる場合があります。それでも足りない部分は、家族の役割分担や、民間・自治体の配食サービス、見守りサービスなどで補います。

外部のプロに介護を任せるのは手抜きではなく、長く介護を続けるための方法です。

両立について相談できる窓口

  • 勤務先の人事・社内の相談窓口:使える社内制度の確認や、復帰後の働き方の調整
  • 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室):育児・介護休業法の公的な相談窓口です26。制度の利用を拒まれたり、不利益な扱いを受けたりしたときにも相談できます
  • 地域包括支援センター:親が暮らす地域の、介護の総合相談窓口です。要介護認定の申請やサービスの使い方を相談できます

モデルケースに見る働き方の工夫

遠距離介護のモデルケースAと同居介護のモデルケースBを2枚のカードで比べ、共通点を3つ示したイラスト

制度やサービスの組み合わせ方は、親との距離や本人の職種・役職によって違います。次の2つは、遠距離介護と同居介護のよくある状況をもとに組み立てたモデルケースです。※実在の人物ではありません。

モデルケースA:母の遠距離介護(40代女性・企画職)

状況

新幹線で約2時間離れた実家で一人暮らしをする母の認知症が進み、月1〜2回の帰省で有給休暇を使い切りそうになっていました。平日の母の様子が分からないことも、気持ちの負担になっていました。

工夫

週2日のテレワークとフレックスタイムを使って平日に実家へ向かい、ケアマネジャーとの面談を済ませるようにしました。通院の付き添いには時間単位の介護休暇を充て、帰省は兄と交代で分担しています。さらに、母にはデイサービス(週2回)と配食サービス、ヘルパーによる安否確認を取り入れ、毎日ビデオ通話で顔を見ながら話しています。

その結果、平日の見守りの体制ができ、仕事に集中できるようになりました。遠距離介護を続けられるかの見極め方や、呼び寄せを考えるときのポイントは、「【遠距離介護の限界】見極めるサインと4つの選択肢を徹底解説」で整理しています。

モデルケースB:父の同居介護(50代男性・営業管理職)

状況

脳梗塞で半身にまひが残った父を、自宅で引き取ることになりました。主に妻が介護を担っていましたが、本人は残業が多く、妻に負担が偏ることと夫婦の疲れが心配でした。

工夫

父の退院に合わせて介護休業を2週間取り、その間にケアマネジャーと相談して、週3回のデイケア(通所リハビリ)、訪問リハビリ、月1回のショートステイを決めました。復帰後は短時間勤務で毎日1時間早く退社し、夕食の介助を担当しています。その結果、妻の負担が軽くなり、週末は交代で外出できるようになりました。

2つのケースに共通すること

どちらのケースも、早い段階でまとまった時間を取って体制を作り、会社の制度と介護サービスを組み合わせ、家族で役割を分担しています。この3つのうち1つでも欠けると、介護の負担は働く本人に集まりやすくなります。

辞めると決める前に確かめたい5つのこと

会社への相談、制度の利用、ケアプランの見直し、家族の分担、住まいの検討の5項目を並べたチェックリスト

仕事と介護の両立に追われ、「もう退職するしかない」と追い詰められたときは、次の5つを振り返ってみてください。まだ試していない手立てがあれば、仕事を辞めずに済む余地が残っている可能性があります。

  • 会社に介護の状況を伝え、使える両立支援制度を確かめたか
  • 介護休業、介護休暇、短時間勤務、時差出勤など、使える制度を実際に申請したか
  • ケアマネジャーに「仕事を続けたい」と伝え、日中の不在を前提にしたケアプランに見直してもらったか
  • 家族やきょうだいと、介護の役割分担や費用の負担について話し合ったか
  • 住まいの見直しや親との距離の調整、施設への入居も選択肢に入れて検討したか

それでも睡眠不足が続いて体調を崩している場合は、在宅介護の続け方そのものを見直す時期かもしれません。

在宅介護を続けるかどうかの判断と解決策は「在宅介護「もう限界かも」と感じたら|3つの解決策と次の一歩」で、介護による心の疲れへの向き合い方は「介護ストレスの限界サインと解消法|CBTで心を守る7つの技法」で整理しています。

なお、最終的に退職を選ぶ場合も、事前にサービスと介護の体制を整えておけば、退職後に介護の負担が自分一人に集中するのを防ぎやすくなります。

住まいと距離を見直すと、両立の負担が減る

手すりと段差の解消でベッドからトイレまでの動線を短くし、親が夜に一人でトイレへ行ける家の断面図。住宅改修は生涯20万円まで

制度やサービスを整えても、深夜のトイレの介助や、ベッドから車椅子への移乗の介助が続くと、睡眠が削られて仕事に響きます。こうした体の負担は、住まいの環境を整えることで減らせる場合があります。

手すりと動線を整えて、介助の回数を減らす

たとえば、廊下やトイレに手すりを付け、段差をなくして、ベッドからトイレまでの動線を短くすると、親が自分で移動できる場面が増え、家族が付き添う回数を減らせます。また、介護ベッドを無理なく置けるスペースがあれば、訪問ヘルパーも動きやすくなります。

こうした工事には、介護保険の住宅改修費を使える場合があります。支給の上限は生涯20万円(要支援・要介護の区分にかかわらず同額)で、工事の前に市区町村へ申請するのが原則です27。なお、要介護度が3段階上がったときや転居したときは、もう一度20万円まで使えます28。

対象になる工事や申請の手続きは、「【結論】介護保険のリフォーム上限は20万円|実例と活用法を解説」で詳しく整理しています。

モデルケースC:住まいの手直しで、退職を考えずに済んだ

状況

脳梗塞で左半身にまひが残った母を介護していたCさんは、夜間2〜3時間おきのトイレの介助で睡眠不足に陥り、仕事のミスが重なって退職を考え始めていました。

工夫と結果

ケアマネジャーに相談し、介護保険でトイレと廊下に手すりを付け、浴室の段差もなくしました。さらに母の寝室にポータブルトイレを置き、介護ベッドをレンタルすると、母が自分で動ける場面が増えて夜間の付き添いが減りました。睡眠時間を確保できるようになったことで、仕事を辞めずに両立を続けられています。

住まいの形そのものを変える選択肢

部分的な手直しだけでは負担が減らない場合や、親の家が遠く通うのが難しい場合は、住まい方そのものを変える方法もあります。

同居、近居、自宅のリフォーム、施設への入居、庭の別棟という5つの住まい方を、費用・プライバシー・家族の負担・将来性の4つの軸で比べた内容は、「介護はどこで?自宅か施設か5択を4軸で比較【2026年版】」で整理しています。

別棟の介護ハウスという選択肢|同居・近居・施設と比べる

母屋と庭に設置した別棟の介護専用ハウスを短い点線でつないだ敷地の俯瞰図と、同居・近居・施設・リフォームの比較アイコン

仕事と介護を無理なく両立させるには、通勤のしやすさと、何かあったときにすぐ駆けつけられる距離の両方が大切になります。この観点を中心に5つの住まい方を比べると、次のようになります。
※一般的な傾向で、実際の条件は地域や敷地によって異なります。

5つの住まい方の比較

住まい方通勤・駆けつけやすさプライバシー費用工期・手間将来の扱い・設置条件
完全同居すぐ駆けつけられる確保しにくい低め部屋の手直し程度親の家を手放すなら、その処分が残る
近居駆けつけるのに移動が必要保ちやすい住居費が別にかかる住まい探しと転居2つの住まいの維持が続く
自宅リフォームすぐ駆けつけられる同居なら確保しにくい中〜高工事中に仮住まいが必要な場合あり元に戻しにくい
施設入居介護はプロが担い、面会に移動が必要本人の居室は確保される月々の費用が高め空き待ちや契約の手続き状態によって住み替えが必要な場合あり
別棟介護同じ敷地内で、すぐ駆けつけられる保ちやすい初期費用がかかる(使用後は買取の相談可)工場で完成させて設置するため短い敷地の広さ、建築確認・固定資産税の確認が必要

比べてみると、すぐ駆けつけられる近さと、それぞれの世帯のプライバシーを両立しやすいのは別棟です。ただし、設置できる敷地と初期費用が必要になるため、親の状態や敷地の条件、家計に合わせて選ぶことになります。

シニアリビング(別棟介護)の仕様

株式会社アイデアの「シニアリビング(別棟介護)」は、自宅の庭に設置する介護専用ハウス(別棟)です。母屋には手を加えず、同じ敷地の中で親とほどよい距離を保ちながら、生活の場を分けられます。

  • 工場で完成させてクレーン付きトラックで運び、設置する(リフォーム工事は不要)。基礎工事が終わっていれば、最短で設置当日から使える
  • 給排水をつなげば、トイレや浴室も設けられる
  • 室内で暮らし続ける前提の高断熱仕様
  • 1ユニットは6.0m×2.4m。一人用(単棟)から夫婦用(2連棟)まで、連結して広げられる
  • 使い終わった後は買取の相談ができ、その場合は解体費用がかからない

なお、シニアリビングは工場で仕上げて据え付けるユニットハウス(建築物)で、車両として扱われるトレーラーハウスとは扱いが異なります。

向かない場合と、確かめておくこと

一方で、庭に十分な設置スペースがない場合や、建ぺい率・容積率に余裕がない敷地では、設置できないことがあります。また、初期費用をできるだけかけたくない場合や、同じ屋根の下で暮らしたいと考えるご家庭には向きません。建築確認申請が必要になる場合や、固定資産税の対象になる場合もあり、条件は自治体や敷地によって異なります。

同居や近居、リフォーム、施設への入居と並ぶ選択肢の一つとして、ご家庭の状況に合うかを比べてみてください。詳しい仕様や設置の条件は、シニアリビングのサービスサイトに掲載しています。

よくある質問

Q
介護のために仕事を辞めるかどうか、どう考えればいいですか?
A

辞めると決める前に、社内の制度と介護サービスを組み合わせて両立の体制を作れないかを確かめるのがおすすめです。厚生労働省の委託調査(令和3年度)では、介護を機に仕事を辞めた人の6割以上が、精神面・肉体面・経済面のいずれでも負担が「増した」と答えています。介護休業や短時間勤務などの制度とデイサービスなどのサービスを試し、日中不在でも介護が回る環境を整えてから判断しても遅くはありません。

Q
2025年の法改正で、会社は何をしなければならなくなりましたか?
A

介護に直面したと申し出た従業員に、制度の内容や介護休業給付金を個別に知らせ、利用の意向を確かめることが会社の義務になりました。また、40歳になる年度などに制度の情報を提供することや、相談窓口の設置・研修などのうち1つ以上を行うことも義務です。さらに、介護をする従業員がテレワークを選べるようにすることは、会社の努力義務になりました。

Q
介護休業中の収入はどうなりますか?
A

雇用保険に加入していて条件を満たせば、介護休業給付金を受け取れます。支給額は原則として休業開始時の賃金日額の67%で、同じ家族について通算93日まで、3回に分けて受け取れます。ただし、介護休業中は育児休業と違って健康保険や厚生年金の保険料が免除されません。保険料の本人負担分を払うため、手元に残るお金は賃金の67%より少なくなる点を見込んでおく必要があります。

Q
日中は仕事で家にいません。それでも在宅介護はできますか?
A

介護保険のサービスを組み合わせれば、続けられる場合があります。たとえば、平日の日中は施設で過ごすデイサービスを利用し、出勤前や帰宅後の時間を訪問介護(ホームヘルプ)で補えば、留守中の介護の体制を整えられます。そのためには、ケアプラン(介護サービスの利用計画)を作るケアマネジャーに、仕事を続けたいことと、勤務時間や家を空ける時間帯を具体的に伝えて相談します。

Q
入社して間もないのですが、介護休業や介護休暇は取れますか?
A

介護休暇は、2025年4月の法改正で勤続6か月未満でも取れるようになりました(年5日、対象家族が2人以上なら10日まで)。一方、まとまった日数を休む介護休業は、労使協定が結ばれている場合、入社1年未満の人が対象外になることがあります。自分が対象に含まれているかどうかは、就業規則を確認したうえで、早めに人事や総務の窓口に相談してみてください。

まとめ|辞めるかどうかは、体制を整えてから決めても遅くない

介護を機に仕事を辞めても、精神面・肉体面・経済面の負担が軽くなるとは限りません。しかも離職の多くは介護が始まって1年以内に起きていて、職場の制度や介護サービスを十分に使えないまま辞めた人が少なくありません。

だからこそ、最初の数か月のうちに両立の仕組みを整えられるかどうかが、仕事と家族の暮らしを守る分かれ目になります。

Point
  • 仕事を辞めても介護の負担は減りにくく、かえって負担が増したと感じる人のほうが多い
  • 介護に直面した従業員への制度の案内と意向の確認は、2025年4月から会社の義務になった
  • 介護休業、介護休暇、残業の免除、短時間勤務など、法律で定められた6つの制度は組み合わせて使える
  • 介護休業の93日は、自分で介護を抱え込むためではなく、プロの手を借りて回る体制を作るために使う
  • 夜間の介助や親との距離が負担なら、住まいの改修や住まい方そのものの見直しも視野に入れる

まずは、会社の就業規則を確認して社内の相談窓口に声をかけ、親を担当するケアマネジャーに「仕事を続けたい」と相談することから始めてみてください。この2つを済ませると、どのような支援を組み合わせればよいかが見えてきます。

そのうえで、お互いのプライバシーを保ちながら同じ敷地で支え合える住まいを考えたい方は、庭に設置する介護専用ハウスのシニアリビング(別棟介護)も、選択肢の一つとして比べてみてください。詳しい仕様や設置の条件は、サービスサイトでご覧いただけます。

脚注

  1. 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」(2023). https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf ↩︎
  2. 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」(2023). https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf ↩︎
  3. 厚生労働省「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 報告書 労働者アンケート調査結果」(2022). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000988661.pdf ↩︎
  4. 厚生労働省「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 報告書 労働者アンケート調査結果」(2022). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000988661.pdf ↩︎
  5. 厚生労働省「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 報告書 労働者アンケート調査結果」(2022). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000988661.pdf ↩︎
  6. 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和7年4月1日から段階的に施行)」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf ↩︎
  7. 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和7年4月1日から段階的に施行)」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf ↩︎
  8. 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和7年4月1日から段階的に施行)」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf ↩︎
  9. e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第11条・第12条・第16条・第16条の5・第16条の9・第18条・第20条・第23条/同施行規則 第24条・第74条の2(2026). https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076/https://laws.e-gov.go.jp/law/403M50002000025 ↩︎
  10. 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和7年4月1日から段階的に施行)」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf ↩︎
  11. 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和7年4月1日から段階的に施行)」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf ↩︎
  12. 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和7年4月1日から段階的に施行)」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf ↩︎
  13. 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和7年4月1日から段階的に施行)」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf ↩︎
  14. 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和7年4月1日から段階的に施行)」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf ↩︎
  15. 経済産業省「経済産業省における介護分野の取組について」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001221559.pdf ↩︎
  16. 厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」(2026). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html ↩︎
  17. e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第11条・第12条・第16条・第16条の5・第16条の9・第18条・第20条・第23条/同施行規則 第24条・第74条の2(2026). https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076/https://laws.e-gov.go.jp/law/403M50002000025 ↩︎
  18. e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第11条・第12条・第16条・第16条の5・第16条の9・第18条・第20条・第23条/同施行規則 第24条・第74条の2(2026). https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076/https://laws.e-gov.go.jp/law/403M50002000025 ↩︎
  19. e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第11条・第12条・第16条・第16条の5・第16条の9・第18条・第20条・第23条/同施行規則 第24条・第74条の2(2026). https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076/https://laws.e-gov.go.jp/law/403M50002000025 ↩︎
  20. e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第11条・第12条・第16条・第16条の5・第16条の9・第18条・第20条・第23条/同施行規則 第24条・第74条の2(2026). https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076/https://laws.e-gov.go.jp/law/403M50002000025 ↩︎
  21. 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」(2026). https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kaigokyuugyou.pdf ↩︎
  22. 日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」(2026). https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20140122-01.html ↩︎
  23. 公益財団法人生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」(2024年度「生命保険に関する全国実態調査」)(2024). https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html ↩︎
  24. 独立行政法人労働政策研究・研修機構「ビジネス・レーバー・トレンド」2017年1月号 特集「介護と仕事を両立させるために」(2017). https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2017/01/002-017.pdf ↩︎
  25. e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第11条・第12条・第16条・第16条の5・第16条の9・第18条・第20条・第23条/同施行規則 第24条・第74条の2(2026). https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076/https://laws.e-gov.go.jp/law/403M50002000025 ↩︎
  26. 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(令和7年4月1日から段階的に施行)」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf ↩︎
  27. 厚生労働省「介護保険における住宅改修」(2023). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001016043.pdf ↩︎
  28. 厚生労働省「介護保険における住宅改修」(2023). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001016043.pdf ↩︎