【実家じまい】後悔しない5ステップ|費用と説得のコツ

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「遠方の実家が、いつか空き家になるかもしれない」「そろそろ実家じまいを考えないと…」。頭ではそう分かっていても、親は「まだ大丈夫」と言うし、思い出の詰まった家のこと、どう切り出せばいいのか分からない。そんなふうに、不安を抱えたまま一歩を踏み出せずにいませんか。

この記事は、その迷いを「具体的な行動」に変えるためのガイドです。

実家じまいとは、単に家を片付けて手放す作業ではありません。親の次の住まいを決め、家族の新しい関係を築くプロセスです。

そして成功の鍵は、親を言い負かす「説得」ではなく、親自身が前向きになれる「納得」と、親が元気な”今”動くことにあります。なぜ今なのか——その理由のひとつが、見落とされがちな「認知症による資産凍結」のリスクです。

この記事を読むと、次のことがわかります。

  • 実家を放置するリスクの正体(固定資産税は本当に6倍? 認知症による資産凍結とは)
  • 親を傷つけずに切り出し、きょうだいとも揉めない「納得」の対話術
  • 実家じまいの5ステップと、片付け・解体・売却にかかる費用相場
  • 知らないと損する税制(解体補助金・3,000万円特別控除・仲介手数料の特例)
  • 実家じまい後、親が安心して暮らせる住まいの選択肢(中立比較)

親子ともに後悔のない「新しい暮らし」へ。順を追って、一緒に整理していきましょう。

実家じまいはなぜ必要?放置リスクと「元気なうちに動く」理由

「実家じまい」という言葉を耳にする機会が増えました。なぜ今、これほど多くの家庭がこの問題に直面しているのでしょうか。背景には、親の高齢化と、子世代が遠方で暮らす「核家族化」が進んだ現代特有の事情があります。

まずは、実家を「そのまま」にしておくと何が起こるのかを正しく知ることが大切です。

リスクを具体的に理解することは、親を脅すためではありません。「元気な今こそ、親と一緒に動く価値がある」と納得するための、最初の一歩になります。

放置された実家は「負動産」になりやすい

親が住んでいた家は、空き家になった瞬間から、思い出の詰まった資産ではなく「負動産」へと姿を変えるおそれがあります。負動産とは、維持費や税金がかかる一方で、売却も賃貸も難しく、持っているだけで負担になる不動産のことです。

空き家になった実家には、主に次のようなリスクが重なっていきます。

  • 老朽化と近隣トラブル:
    誰も住まない家は傷みが早く、庭木の繁茂や害虫の発生で近隣に迷惑をかけることがあります。
  • 維持管理の限界:
    遠方に住んでいると、掃除・庭の手入れ・郵便物の整理のために通うだけでも大きな負担になります。
  • 相続の「塩漬け」:
    方針を決めないまま相続が発生すると、きょうだい間で意見が割れ、共有名義のまま動かせなくなるケースが少なくありません。
  • 災害時の責任:
    老朽化した家屋が地震や台風で倒壊し近隣に被害を与えた場合、その損害賠償責任は所有者である家族が負うことになります。

固定資産税は本当に「6倍」になる?正しくは実質約4.2倍

空き家のリスクとしてよく語られるのが「固定資産税が最大6倍になる」という話です。これは半分正しく、半分は誤解を含んでいます。正確な仕組みを知っておきましょう。

人が住む家が建つ土地には、固定資産税の課税標準額を6分の1に軽減する「住宅用地の特例」が適用されています1。空き家を放置してこの特例が外れると税負担が増えますが、外れた土地には別途「負担調整措置」が働き、課税標準額は評価額の70%に抑えられます。

この結果、実際の増加幅は固定資産税で実質約4.2倍、都市計画税で約2.1倍になるのが正確な実態です2。「6倍」は最大値のイメージで、多くのケースでは約4倍程度と理解しておくとよいでしょう。

さらに注意したいのが、2023年(令和5年)12月の法改正です。
従来は倒壊の危険が高い「特定空き家」だけが特例解除の対象でしたが、その手前の段階として「管理不全空き家」という区分が新設されました3。窓ガラスの破損や雑草の繁茂など、管理が行き届かない状態が対象です。

国土交通省によると、管理不全空き家への指導件数は2023年の666件から2024年には2,545件へと急増しており、行政の介入が早い段階で行われるようになっています4

「それなら解体して更地にすれば」と考える方もいますが、ここに落とし穴があります。
建物を解体すると土地は「住宅用地」ではなくなり、やはり特例から外れて税金が上がります。これは「解体のジレンマ」と呼ばれ、売却の見込みが立たないまま解体に踏み切れない一因になっています。

見落としがちな最大のリスク|認知症による「資産凍結」

ここまでは「お金」のリスクでしたが、実は、実家じまいを先延ばしにする最大の危険は別にあります。それが認知症による「資産凍結」です。

親の判断能力が低下し、意思能力がないとみなされると、本人名義の不動産の売却契約、預貯金口座からのまとまった引き出し、不要なサービスの解約といった法律行為が原則としてできなくなります5

つまり、実家が空き家になっても、子が勝手に売ることも、修繕することもできず、増え続ける税金と管理の負担だけを背負う状態になりかねません。これが「凍結」と呼ばれるゆえんです。

この事態を避けるための財産管理の仕組みとして、主に「成年後見制度」と「家族信託」の2つがあります。それぞれ性格が大きく異なります。6

成年後見制度

本人の財産を「保護・維持」するための制度です。家庭裁判所の監督下に置かれ、実家の売却は本人の生活・介護のためにやむを得ないと認められた場合のみ可能です。専門職が後見人になると、本人が亡くなるまで月額2〜6万円程度の報酬が続く点に注意が必要です。

家族信託

親が元気なうちに、信頼できる家族へ財産の管理・処分の権限をあらかじめ託す契約です。裁判所の関与なく、契約で定めた範囲で子が実家を売却し、その資金を親の介護費用に充てることもできます。初期費用は30〜60万円程度が目安で、原則として月額のランニングコストは発生しません。

どちらが適切かは家庭の状況によって異なります。ただ、いずれの制度も「親に判断能力があるうち」でなければ十分に活用できない点は共通しています。だからこそ、実家じまいは「親が元気な今」こそが動きどきなのです。具体的な制度選びは、司法書士や弁護士など専門家への相談をおすすめします。

実家じまいを考え始めるタイミング

「では、いつから考えればいいのか」と迷う方も多いでしょう。明確な正解はありませんが、次のような場面は、実家の将来を話し合う自然なきっかけになります。

  • 親の入院・転倒・体調の変化があったとき:
    暮らしの安全に目が向きやすく、本人も将来を考えやすいタイミングです。
  • 帰省して「家の変化」に気づいたとき:
    片付かないモノ、傷んだ設備、手入れの行き届かない庭などは、暮らしの負担が増しているサインです。
  • 相続が発生する前:
    親が元気なうちに方針を共有しておくことが、後のきょうだい間トラブルを防ぐ最大の予防策になります。

大切なのは、「まだ早い」と感じる段階で動き出すことです。切羽詰まってからでは、選べる選択肢も、使える制度も限られてしまいます。

【対話編】「説得」より「納得」|切り出し方ときょうだいの合意

実家じまいの話題は、親子にとって最もデリケートなテーマの一つです。多くの人が「実家じまい 説得」と検索しますが、本当に必要なのは親を言い負かす「説得」ではありません。親自身が前向きになれる「納得」です。

ここでは、感情的な対立を避け、家族で合意を作るための具体的な進め方を紹介します。

「説得」が逆効果になる理由と、「納得」への切り替え方

いきなり「家を売ろう」「片付けよう」と切り出すと、親は自分の人生や思い出を否定されたように感じ、強く身構えてしまいます。正論で押すほど、心の扉は閉じてしまうものです。

そこで、次の3つを意識してみてください。

  • 「どうしたい?」ではなく「困っていることは?」から始める:
    「これからの暮らしで、何か不安に感じることはない?」とオープンに尋ねます。「庭の手入れが大変」「高いところの掃除ができない」といった本音が出れば、そこが対話の入り口になります。
  • 家や思い出への愛着を、まず肯定する:
    「この家にたくさんの思い出があること、よく分かっているよ」と共感を示します。そのうえで「家を手放しても、思い出が消えるわけではない」と伝えると、親の抵抗感はやわらぎます。
  • 「親自身の安心」を主語にする:
    「もし体調を崩したとき、この大きな家で一人だと心配」というように、子の都合ではなく親の安心を起点に提案します。脅すのではなく、「心配している」という愛情を伝えることが鍵です。

親は”雑談”と受け取っている|データが示す親子の認識ギャップ

「何度か話したのに進まない」と感じている方は少なくありません。その背景には、親子の深刻な認識のズレがあります。

不動産関連企業のすむたすが2025年末に行った調査では、実家の処分について親子で話し合ったことがある家庭はわずか32.5%でした7

さらに、子世代の半数が「この1年で話し合いが増えた」と感じている一方、親世代の約8割は「変化はない(日常の雑談の範囲)」と捉えていたのです8。つまり、子が真剣に相談したつもりでも、親には伝わっていないことが多いのです。

この溝を埋めるには、「いつか考えようね」という曖昧な声かけではなく、具体的なスケジュールや、税制の期限といった客観的な事実を示しながら、改めて「相談の場」として向き合うことが効果的だと考えられます。

きょうだいで揉めないための「合意の段取り」

実家じまいのトラブルは、親との間だけでなく、きょうだい間でも起こります。「誰が手間と費用を負担するのか」で不公平感が生まれ、関係が悪化することは珍しくありません。

これを防ぐには、作業を始める前の「段取り」が重要です。

  • 主導者と役割を決める:
    すべてを一人で背負うと不満が溜まります。「誰が中心に動くか」「遠方のきょうだいは何を担うか」を最初に分担します。
  • 費用負担のルールを先に共有する:
    片付け費・解体費・諸経費の負担割合を、お金が動く前に話し合っておきます。
  • 処分方針と記録を共有する:
    「売却するか・残すか」などの方針と、話し合いの経緯を全員が見える形で記録します。後から「勝手に決めた」という不信感を防げます。

特定の子に財産管理を任せる場合(家族信託など)は、他のきょうだいへ目的や使いみちを丁寧に説明しないと、「財産を独り占めするのでは」という疑念を招くことがあります。透明性こそが、親族間の信頼を守る最大の防御策です。

第三者を味方につける|地域包括支援センターと専門家

家族だけで話すと、過去のしこりや感情が表面化しがちです。そんなときは、中立的な第三者の力を借りることをためらわないでください。

  • 地域包括支援センター:
    市区町村に設置された高齢者の総合相談窓口で、無料で利用できます。保健師や社会福祉士が、介護予防や高齢者の権利擁護といった客観的な視点から相談に乗ってくれます。直接の片付けや不動産仲介は行いませんが、ケアマネジャーや専門家への橋渡し役として頼りになります。
  • ケアマネジャー:
    要介護認定を受けている場合、生活環境を見直す必要性を介護の視点から伝えてくれ、親の気持ちが動くきっかけになることがあります。
  • 司法書士・税理士・弁護士:
    相続・登記・税金・家族信託など、専門的な判断が必要な場面で、安心して手続きを進める後ろ盾になります。

モノは「捨てる」より「活かす・引き継ぐ」

片付けの最大の壁は「モノを捨てること」への親の抵抗です。親にとって一つひとつの品には思い出があり、処分は自分の歴史を失うように感じられます。そこで、「処分」ではなく「思い出の整理」という視点に切り替えましょう。

  • 大切な品を最優先で確保する:写真・手紙・記念品など、かけがえのないものを先に取り分けます。デジタル化やアルバム作成も有効です。
  • 「価値あるもの」として手放す:使わない家具や骨董品は、出張買取に査定してもらい「お金に換える」ことで、親も納得しやすくなります。ゴミとして捨てるのとは心理的な意味が違います。
  • 思い出を一緒に振り返る時間を作る:古い写真を見ながら昔話をする時間は、親の寂しさをやわらげ、家族の絆を深める機会にもなります。

【実践編】実家じまいの5ステップ|費用相場・補助金・後悔回避

方針が定まったら、いよいよ実行です。

実家じまいは時間も労力も、そして心のエネルギーも必要とする大きな作業です。行き当たりばったりで進めて後悔しないよう、全体の流れと費用感をつかんでおきましょう。

実家じまいの基本5ステップ

実家じまいは、おおむね次の5つのステップで進みます。一気に終わらせようとせず、無理のないスケジュールで段階的に進めるのがコツです。

  • Step1
    家族との話し合いと計画立案

    親の意向(残したいもの・今後の住まい)を確認し、きょうだいで役割分担・費用・スケジュールを決めます。

  • Step2
    モノの仕分けと整理

    「要るもの・要らないもの・思い出の品・保留」の4つに分類しながら進めます。

  • Step3
    不用品の処分

    買取・フリマ・寄付・自治体ルールでの廃棄を使い分けます。量が多ければ専門業者も検討します。

  • Step4
    実家(不動産)の今後を決める

    売却・賃貸・解体などの出口を決めます(詳しくは次章)。

  • Step5
    各種契約の解約・変更手続き

    ライフライン、住民票、金融機関、サブスクなどをリスト化して進めます。

モノの仕分けと、絶対に失くせない「重要書類」

片付けで最も時間がかかるのが仕分けです。まずは明らかに不要なものから手をつけ、少しずつ範囲を広げましょう。判断に迷うものは「保留」の箱に入れ、後でまとめて見直すと作業が止まりません。

このとき絶対に注意したいのが、貴重品と重要書類の扱いです。現金・預金通帳・実印・不動産の登記済証(権利書)・保険証券などは、誤って処分しないよう専用の箱にまとめます。

実は、ここに大きな落とし穴があります。

前述のすむたす調査では、子世代の76.4%が実家の権利書や実印の保管場所を「把握していない」と回答しています9。これらが見つからないと、いざ売却・相続の手続きをする際に、司法書士へ本人確認情報の作成を依頼するなど、余計な費用と手間が発生します。元気なうちに「どこに何があるか」を親と一緒に確認しておくことを強くおすすめします。

片付け・遺品整理の費用相場と、費用を抑えるコツ

長年住んだ家には膨大な家財が蓄積されています。専門業者に片付け・遺品整理を依頼した場合の費用は、間取りと荷物の量におおむね比例します。以下は一般的な目安です(地域・物量により変動します)10

間取り費用相場の目安
1K・1DK約2.4万〜12万円
1LDK・2DK約7万〜25万円
2LDK・3DK約12万〜40万円
3LDK・4DK約15万〜60万円
4LDK以上(一軒家)約19万〜85万円

費用を抑えるには、次のような工夫が有効です。

  • 事前に自分たちで小物・可燃ごみを処分しておく:業者に運んでもらう量が減るほど費用は下がります。
  • 買取で費用を相殺する:骨董品や状態の良い家具・家電を買い取ってくれる業者を選ぶと、処分費を差し引けます。実際に、基本料金13.9万円の3DKの整理で、見つかった品物を6.1万円で買い取ってもらい、総額を7.8万円に抑えられた例もあります11

自力で行う?業者に頼む?|悪質業者を避ける選び方

片付けを自力で行うか、業者に依頼するかは、多くの方が迷うポイントです。

  • 自力で行う場合:
    費用は抑えられますが、時間・体力・精神的な負担が非常に大きくなります。遠方の場合や物量が多い場合は、数ヶ月から年単位かかることもあります。
  • 業者に依頼する場合:
    清掃から不用品回収まで一貫して任せられ、手間と時間を大幅に削減できます。その分、費用はかかります。

業者を選ぶ際は、悪質な高額請求や不法投棄を避けるため、必ず3社以上から現地調査を伴う相見積もりを取り、次の点を確認しましょう。

  • サービス内容(どこまで作業に含まれるか)と、追加・オプション料金の有無
  • 損害賠償保険への加入状況
  • 資格・許可の有無(「一般廃棄物収集運搬業許可」など。無許可業者による不法投棄のトラブルを防ぐため)

後悔しないための3つの注意点

実家じまいは、やり直しのきかない一度きりの決断の連続です。経験者がつまずきやすいポイントを、先回りで押さえておきましょう。

  • 思い出の品を勢いで捨てない:
    作業に疲れると「全部捨ててしまいたい」という気持ちになりがちです。判断に迷うものは「保留」にし、後日冷静に見直しましょう。
  • 不動産を売り急がない:
    まとまったお金が必要でも、相場を調べずに焦って売ると損をします。複数の不動産会社に査定を依頼し、比較することが大切です。
  • 一人で抱え込まない:
    片付けが「完了した」人は4割弱という調査もあります12。物量の多さや親の抵抗で頓挫しやすい作業です。家族や専門家と分担し、無理のないペースで進めましょう。

実家の「出口」戦略|売却・賃貸・解体と知らないと損する税金

モノの整理にめどがついたら、空き家となる実家(建物と土地)をどうするかを決めます。主な選択肢は「売却」「賃貸」「解体」の3つです。ここには、知っているかどうかで数百万円の差が出る税制も絡みます。順に見ていきましょう。

売却・賃貸・解体の比較

それぞれにメリットとデメリットがあり、立地や築年数、家族の状況によって最適解は変わります。

選択肢メリットデメリット・注意点
売却するまとまった資金が得られ、親の住み替え費用や生活費に充てられる。維持管理の負担から解放される。希望価格で売れるとは限らず、築古・立地次第では売却が難しい。仲介手数料や譲渡所得税などの諸費用がかかる。
賃貸に出す家賃収入が得られ、所有権を残せるため将来の再利用も可能。入居者募集・管理・修繕の手間や、空室・入居者トラブルのリスク。貸せる状態にするリフォーム費用も必要。
解体する倒壊リスクや「特定空き家」指定の懸念から解放され、更地は売却しやすくなる傾向。高額な解体費がかかる。更地にすると住宅用地特例が外れ、固定資産税が上がる(前述の解体のジレンマ)。

地方自治体によっては、売りたい空き家と利用希望者をマッチングする「空き家バンク」制度もあります。一般の市場では売りにくい物件でも、移住希望者などに需要があるケースがあるため、選択肢として知っておくとよいでしょう。

解体費用の最新相場と、自治体の解体補助金

解体を選ぶ場合、費用は建物の構造によって大きく変わります。30坪の戸建てを解体する場合の目安は以下の通りです(立地・付帯工事により変動します)。

構造坪単価の目安30坪の総額目安
木造約3.0万〜5.7万円約90万〜170万円
鉄骨造(S造)約4.0万〜8.0万円約120万〜240万円
RC造(鉄筋コンクリート造)約5.0万〜11.5万円約150万〜345万円

注意したいのは、これらに含まれない付帯費用です。

近年は規制強化により、アスベスト(石綿)含有建材の調査・撤去費が数十万円単位で上乗せされるケースが増えています。庭木の伐採、ブロック塀や地中の埋設物(浄化槽・井戸など)の撤去も別途必要になることがあります。だからこそ、解体でも複数業者の相見積もりが欠かせません。

一方で、負担を軽くする制度もあります。多くの自治体が老朽空き家の解体補助金を設けており、補助率は工事費の2分の1〜3分の2程度、上限は30万〜100万円程度が一般的です。たとえば兵庫県姫路市では、老朽空家対策補助金として解体工事費の2分の1(上限100万円)を補助しています13

ただし、これらの補助金は「工事の着工前」に事前申請して認定を受けることが必須です。着工後では受理されないため、スケジュール管理に注意してください。※要件・予算は自治体ごとに異なるため、管轄窓口で要確認です。

売却の最新事情|地方の空き家も売りやすくなった

「価格が安い地方の実家は、不動産会社に相手にされないのでは」と諦めている方に朗報です。2024年(令和6年)7月、「低廉な空家等の媒介の特例」が施行されました14

これは、物件価格が800万円以下(税抜)の不動産売買について、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限を最大33万円(税込)に引き上げるものです。

従来、たとえば300万円の物件では手数料上限が約15万円にとどまり、採算が合わず敬遠されがちでした。改正後は手数料が底上げされたことで、不動産会社が低廉な実家の売却にも動きやすくなっています。実際に、それまで売却を敬遠されていた地方の300万円の空き家が、この特例を使って買い手を見つけられた事例も報告されています15。まずは早めに不動産会社へ相談してみる価値があります。

相続後に効く税制|3,000万円特別控除と「選択適用の罠」

親が亡くなった後に実家を相続して売却する場合、強力な税制優遇があります。「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除」です。一定の要件を満たせば、売却益から最大3,000万円を控除できます16。この特例の適用期限は、税制改正により令和9年(2027年)12月31日まで延長されています。

適用には、主に次の要件があります(2026年時点。詳細は国税庁・税理士に要確認)17

  • 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること
  • マンション等の区分所有建物でないこと
  • 相続の直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと(要介護認定を受けて老人ホーム等に入居していた場合の特例あり)
  • 相続開始日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること

ここで一つ、見落としやすい「選択適用の罠」に触れておきます。

相続税を納めた場合に使える「取得費加算の特例」という別の制度がありますが、この3,000万円特別控除と併用はできず、どちらか一方を選ぶ必要があります。どちらが有利かは売却益や相続税額によって変わり、選択を誤ると手元に残るお金が数百万円単位で変わることもあります。必ず税理士に相談し、シミュレーションしたうえで判断してください。

実家じまい後、親はどこで暮らす?住まいの選択肢を中立比較

ここまで「家をどう手放すか」を見てきましたが、実家じまいの本当のゴールはその先にあります。それは、親がこれからどこで、どのように安心して暮らすかという「次の住まい」を決めることです。片付けて終わり、ではありません。むしろここからが本番です。

住まい選びで押さえたい4つの視点

新しい住まいを選ぶとき、次の4点を軸に考えると、親子双方が納得しやすくなります。

  • 住み慣れた環境に近いか:かかりつけ医・友人・行きつけの店との距離。急激な環境変化は、精神的なストレスや認知機能の低下を招くこともあります。
  • プライバシーが守られるか:自分のペースで暮らせる空間があるか。生活リズムや価値観の違いは、思わぬストレスの原因になります。
  • 将来の介護に備えられるか:バリアフリーか、介護サービスを使いやすいか、介護度が上がっても住み替えずに済むか。
  • 経済的な負担は妥当か:初期費用だけでなく、月額費用や将来かかる費用まで含めて長期的に試算する。

主な住まいの選択肢を費用で比較する

実家じまい後の住み替え先には、施設入居から子世帯との近居まで、いくつかの選択肢があります。費用と特徴を整理しました(費用は全国の目安で、地域・施設により大きく異なります)18

選択肢初期費用の目安月額費用の目安特徴・向き不向き
特別養護老人ホーム(特養)0円約5万〜15万円公的施設で費用が安く終身利用も可能。ただし原則要介護3以上が対象で、待機者が多く入居まで時間がかかる。相部屋はプライバシー確保が難しい。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)約20万円〜約17万〜18万円バリアフリーの賃貸住宅で自由度が高い。介護は外部サービスを別途契約するため、要介護度が上がると費用増や住み替えの可能性。
介護付き・住宅型有料老人ホーム0円〜数百万円以上約22万〜26万円食事・入浴・介護が手厚く、24時間体制で安心感が高い。その分、費用は高額になりやすい。
子世帯との完全同居低い(住宅次第)低い費用を抑えられ見守りもしやすい。一方で生活リズムや価値観の違いから、親子双方にストレスが生じやすい。
近居・敷地内の別棟(離れ)約150万〜400万円低い程よい距離で見守れ、介護もしやすい。別棟も固定資産税の対象になり、将来の活用・撤去という新たな課題も生じうる。

「親をどこに呼び寄せるか」「同居と近居のどちらが合うか」をより詳しく検討したい方は、親の呼び寄せで失敗しないための全手順や、呼び寄せ費用のチェックリスト同居と近居を経験した5家族の体験談もあわせてご覧ください。

リフォーム・施設入居の「限界」も知っておく

多くの方がまず検討する「実家の大規模リフォーム」や「施設入居」にも、それぞれ向き不向きがあります。

  • 大規模リフォームの限界:
    費用が高額になるうえ、工事中の仮住まいや騒音の負担もあります。家の構造上、理想的なバリアフリーが実現できないことや、将来の介護度上昇で再改修が必要になることもあります。
  • 施設入居の限界:
    手厚い介護を受けられる反面、費用負担は大きくなりがちです。また、親自身が「施設に入る」ことに強い抵抗や寂しさを感じ、住み慣れた暮らしや自由を失うストレスを抱えるケースも少なくありません。

どの選択肢にも完璧な正解はありません。大切なのは、親の状態と家族の状況に照らして、「親の安心と自立」「子の負担軽減」のバランスが取れる住まいを、納得して選ぶことです。

選択肢の一つ:「別棟」という近居(C’ZBシニアリビング)

住まいの選択肢の一つとして、私たち株式会社アイデアが提供する介護専用ハウス「C’ZB(シーズビー)シニアリビング」もご紹介します。これは、子世帯の敷地内に設置する、親世帯のための独立した別棟です。完全同居でも施設入居でもない、「つかず離れず」の近居という考え方です。

まず、仕様(事実)は次の通りです。

  • 工場で完成させた住まいをクレーンで設置するため、母屋のリフォーム工事が不要で工期が短い
  • 段差のないバリアフリー構造で、給排水を接続すればトイレ・浴室も設置できる
  • 一般的なユニットハウスで軽視されがちな断熱性を重視し、ヒートショック対策にも配慮
  • 使い終わった後は買取・移設が可能で、従来建築で発生する解体費(150万〜300万円程度)がかからない

向いているケース

実家で使ってきた家具や生活スタイルをそのまま残したい方、母屋と程よい距離を保ちながら見守りたい方、将来の在宅介護まで見据えて住み替えを避けたい方には、合理的な選択肢になり得ます。

向かないケース・注意点

広い居住空間が必要な場合や、設置スペース・給排水・用途地域などの条件が整わない場合には設置が難しいことがあります。また、基礎工事をして土地に定着させると別棟も固定資産税の課税対象になります。

将来、親が施設へ移ったり亡くなったりした後、その別棟をどう活用・撤去するかという「次の課題」が生じる点も、あらかじめ理解しておく必要があります。

費用・設置条件・将来の扱いを含め、ご家庭の条件に合うかどうかを比較したうえで判断いただくのが一番です。詳しくはサービスの紹介ページをご覧ください。

よくある質問

Q
実家じまいはいつから始めるべきですか?
A

「まだ早い」と感じる、親が元気なうちが始めどきです。親の判断能力が低下すると、本人名義の家の売却や預貯金の引き出しができなくなる「資産凍結」が起こり、選べる選択肢が一気に狭まります。親の入退院や帰省での気づき、相続が起こる前などが、実家の将来を話し合う自然なきっかけになります。

Q
「まだ大丈夫」と渋る親を、傷つけずに説得するには?
A

「説得」しようとせず、親自身の「納得」を引き出すのがコツです。「家をどうする?」と切り出すのではなく、「これからの暮らしで困っていることはない?」と親の不安に寄り添う形で話を始めましょう。家や思い出への愛着をまず肯定し、あくまで「親の安心」を主語に一緒に考える姿勢が、心の扉を開きます。

Q
実家の片付けや解体には、いくらかかりますか?
A

片付け・遺品整理は間取りによって異なり、1K・1DKで約2.4万〜12万円、4LDK以上の一軒家で約19万〜85万円が目安です。解体は構造により幅があり、木造30坪で約90万〜170万円が目安となります。いずれも地域や物量、付帯工事で大きく変わるため、3社以上から相見積もりを取ることをおすすめします。

Q
空き家を放置すると、固定資産税は本当に6倍になりますか?
A

「6倍」はやや誇張で、実態は固定資産税で約4.2倍が正確です。住宅用地の特例が外れると税負担は増えますが、別の調整措置が働くためです。なお2023年の法改正で、管理が不十分な「管理不全空き家」も勧告を受けると特例解除の対象になったため、放置のリスクは以前より高まっています。

Q
実家を売却するとき、使える税制優遇はありますか?
A

はい、相続した空き家の売却益から最大3,000万円を控除できる特例があり、令和9年(2027年)末まで延長されています。ただし昭和56年5月31日以前の建築などの要件があり、相続税の「取得費加算の特例」とは併用できず、どちらか一方を選ぶ必要があります。選択を誤ると損をすることがあるため、税理士への相談をおすすめします。

まとめ

実家じまいは、家を片付けて手放すだけの作業ではありません。親の次の住まいを決め、家族の新しい関係を築くためのプロセスです。心理的にも実務的にも負担の大きい決断ですが、親の心に寄り添い、計画的に専門家の力を借りて進めれば、後悔のない「新しい始まり」へと変えていけます。

最後に、この記事の要点を整理します。

  • 動くなら親が元気な「今」:認知症による資産凍結が起きると、選べる選択肢も使える制度も一気に狭まります。
  • 「説得」より「納得」:親の不安に寄り添い、安心を主語に対話する。きょうだいとは始める前に役割と費用を決めておく。
  • 費用と制度を味方につける:片付け・解体の相場を押さえ、解体補助金や3,000万円特別控除などの制度を活用する。
  • ゴールは「親の次の住まい」:施設・完全同居・近居・別棟を、費用とプライバシー、将来の介護まで含めて比較し、納得して選ぶ。

そして忘れてはいけないのが、その先で親御さんが「どこで、どう暮らすか」です。住み慣れた安心と自立を両立する選択肢の一つとして、子世帯の敷地内に設置する別棟「C’ZBシニアリビング」という近居のかたちもあります。

実家じまいや親御さんの新しい住まいでお悩みの方は、まずは気軽にサービスの詳細ページをのぞいてみてください。ご家族にとって最適な答えを見つける、その一歩になればうれしく思います。

脚注

  1. 政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!」(2024年)。住宅用地の特例、改正空家等対策特別措置法、「管理不全空き家」の新設について。 https://www.gov-online.go.jp/article/202403/entry-5949.html ↩︎
  2. 株式会社KACHIEL「管理不全空き家指定による固定資産税等への影響」(2024年)。住宅用地特例の解除で固定資産税が実質約4.2倍・都市計画税が約2.1倍になる計算根拠。管理不全空き家への指導件数(2023年666件→2024年2,545件)は国土交通省データに基づく。 ↩︎
  3. 政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!」(2024年)。住宅用地の特例、改正空家等対策特別措置法、「管理不全空き家」の新設について。 https://www.gov-online.go.jp/article/202403/entry-5949.html ↩︎
  4. 株式会社KACHIEL「管理不全空き家指定による固定資産税等への影響」(2024年)。住宅用地特例の解除で固定資産税が実質約4.2倍・都市計画税が約2.1倍になる計算根拠。管理不全空き家への指導件数(2023年666件→2024年2,545件)は国土交通省データに基づく。 ↩︎
  5. 認知症による資産凍結、成年後見制度・家族信託の仕組みと費用感(成年後見人報酬 月額2〜6万円程度、家族信託の組成費用 30〜60万円程度)。法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」ほか専門機関の情報に基づく(2026年時点)。制度選択は専門家への相談を推奨。 ↩︎
  6. 認知症による資産凍結、成年後見制度・家族信託の仕組みと費用感(成年後見人報酬 月額2〜6万円程度、家族信託の組成費用 30〜60万円程度)。法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」ほか専門機関の情報に基づく(2026年時点)。制度選択は専門家への相談を推奨。 ↩︎
  7. 株式会社すむたす「実家じまいに関する意識調査」(2025年12月)。実家の処分について親子で話し合ったことがある家庭は32.5%、親子の認識ギャップ、権利書・実印の保管場所を子の76.4%が把握していない等。マイナビニュース報道 https://news.mynavi.jp/article/20251228-3866011/ ↩︎
  8. 株式会社すむたす「実家じまいに関する意識調査」(2025年12月)。実家の処分について親子で話し合ったことがある家庭は32.5%、親子の認識ギャップ、権利書・実印の保管場所を子の76.4%が把握していない等。マイナビニュース報道 https://news.mynavi.jp/article/20251228-3866011/ ↩︎
  9. 株式会社すむたす「実家じまいに関する意識調査」(2025年12月)。実家の処分について親子で話し合ったことがある家庭は32.5%、親子の認識ギャップ、権利書・実印の保管場所を子の76.4%が把握していない等。マイナビニュース報道 https://news.mynavi.jp/article/20251228-3866011/ ↩︎
  10. 遺品整理・生前整理の費用相場(間取り別)および買取による費用相殺の事例。遺品整理プロセス(ihinseiri-process.com「遺品整理の料金相場」) https://ihinseiri-process.com/ihinseiri-ryokin-souba/ ↩︎
  11. 遺品整理・生前整理の費用相場(間取り別)および買取による費用相殺の事例。遺品整理プロセス(ihinseiri-process.com「遺品整理の料金相場」) https://ihinseiri-process.com/ihinseiri-ryokin-souba/ ↩︎
  12. 株式会社AlbaLink「実家の片付けに関する調査」。片付けが「完了した」割合は39.0%、困ったことの1位は「荷物の多さ」、2位「親の抵抗」等。 ↩︎
  13. 兵庫県姫路市「老朽空家対策補助金交付制度」。解体工事費の2分の1(上限100万円)を補助。補助率・上限・要件は自治体ごとに異なる。 https://www.city.himeji.lg.jp/kurashi/0000006739.html ↩︎
  14. 国土交通省「低廉な空家等の媒介に関する特例」(2024年7月施行)。800万円以下(税抜)の不動産売買で仲介手数料の上限を最大33万円(税込)に引き上げ。 https://staylinx.jp/contents/1124 ↩︎
  15. 国土交通省「低廉な空家等の媒介に関する特例」(2024年7月施行)。800万円以下(税抜)の不動産売買で仲介手数料の上限を最大33万円(税込)に引き上げ。 https://staylinx.jp/contents/1124 ↩︎
  16. 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」。3,000万円特別控除の要件、適用期限(令和9年12月31日まで延長)、取得費加算の特例との選択適用について(2026年時点。詳細は国税庁・税理士に要確認)。 ↩︎
  17. 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」。3,000万円特別控除の要件、適用期限(令和9年12月31日まで延長)、取得費加算の特例との選択適用について(2026年時点。詳細は国税庁・税理士に要確認)。 ↩︎
  18. LIFULL介護「老人ホーム・介護施設の費用相場」(2026年4月時点の中央値)。特養・サ高住・有料老人ホームの初期費用・月額費用の相場。離れ(別棟)の費用感は工法・給排水工事により変動。 https://kaigo.homes.co.jp/market_price/ ↩︎