「さっき言ったばかりなのに、また同じことを聞いてくる」
「知らない人が見える、と言い出した」
親のいつもと違う様子に気づいたとき、多くの方が「これは認知症なの? もしそうなら、どのタイプなんだろう」と検索します。でも調べるほど専門用語が多くて、かえって不安になっていませんか?
実は、認知症は一つの病気ではありません。原因となる脳の病気ごとに、最初に出るサインも、目立つ症状も、進み方も大きく違います。
この記事では、4大認知症(アルツハイマー型・脳血管性・レビー小体型・前頭側頭型)の違いを、専門用語ではなく「家族の生活の場面」に引きつけて整理します。医師のように診断するためではなく、あなたが少しでも早く気づき、正しい相談先にたどり着くための「地図」としてお使いください。
結論|認知症は「種類」で最初のサインも接し方の勘所も変わる
では、なぜ「種類」を知ることが、家族にとって助けになるのでしょうか?
理由は大きく3つあります。タイプの見当がつくと、①これから起きやすいことの見通しが立ち、②日々の接し方の勘所が変わり、③「まだ決めつけない」という慎重さを持てるからです。「もの忘れ」だけを追いかけていると、もの忘れが目立たないタイプを見落としてしまうこともあります。
日本で最も多いのはアルツハイマー型で、認知症の原因の約7割を占めるという研究があります(アルツハイマー型67.6%、血管性19.5%、レビー小体型4.3%、前頭側頭型1.0%、混合型3.3%)1。本記事では、この4大認知症(アルツハイマー型・脳血管性・レビー小体型・前頭側頭型)を中心に、それぞれの症状の違いを家族の目線で整理していきます。
一点だけ、先にお願いがあります。読み進めると「うちの親はこれだ」と当てはめたくなりますが、症状は教科書どおりに出るとは限らず、いくつかのタイプが重なることも、治療で治せる別の病気が隠れていることもあります。
だからこそ、確定はかならず医療機関に委ねてください。この記事は、その受診や相談へたどり着くための下ごしらえだと考えていただければ十分です。
大前提|「認知症」と「加齢のもの忘れ・MCI」はどう違う?
タイプ別の話に入る前に、土台となる3つのことを、なるべくやさしい言葉で整理しておきます。ここが分かると、あとの説明がぐっと理解しやすくなります。
「歳のせいのもの忘れ」と「認知症のもの忘れ」は別物
認知症とは、脳の病気などによって認知機能が低下し、日常生活に支障が出るようになった状態を指します2。ポイントは「生活に支障が出ているかどうか」です。年齢を重ねれば誰でも多少はもの忘れをしますが、それとは分けて考えられています。
いちばん分かりやすい違いは、「忘れ方」です。加齢によるもの忘れは、体験の一部を忘れます。「朝ごはんのメニューが思い出せない」といった具合で、ヒントがあれば思い出せますし、本人にも「忘れっぽくなった」という自覚があります。
一方、認知症のもの忘れは、体験のまるごと全部が抜け落ちます。「朝ごはんを食べたこと自体を覚えていない」ため、ヒントを出されても思い出せず、忘れたことへの自覚も乏しいことが多いのです3。
その中間にある「MCI(軽度認知障害)」
MCI(軽度認知障害)は、正常な状態と認知症の「中間」に位置します。同年代と比べて認知機能の低下は見られるものの、日常生活はおおむね自立している段階です4。この時期に変化に気づけると、生活習慣の見直しや早めの相談につなげやすくなります。
「これはもの忘れ? それともMCI? もう認知症?」という見分け方の詳しいチェックリストは、別の記事で丁寧に扱っています。あわせて認知症の初期症状と見分け方|家族がすぐすべき初動5ステップもご覧ください。
どのタイプにも共通する「中核症状」と「BPSD」という2階建て
もう一つ、全タイプに共通する大事な枠組みがあります。認知症の症状は、大きく「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」の2階建てで理解すると、混乱しにくくなります5。
- 中核症状:
脳の細胞が壊れることで直接起きる症状。記憶障害、時間や場所が分からなくなる見当識障害、段取りが立てられなくなる実行機能障害などが当てはまります。 - BPSD(行動・心理症状):
中核症状を抱えた本人が、不安や体調不良、周囲の接し方などに反応して二次的に示す症状。物盗られ妄想、徘徊、暴言、抑うつなどがこれにあたります。
ここで覚えておきたいのは、BPSDは接し方や環境を整えることで和らぐ余地があるという点です6。つまり「困った言動」の多くは、本人のわがままでも家族の失敗でもありません。
暴言や徘徊、妄想などへの具体的な対応のしかたは、認知症の親への接し方|暴言・徘徊・妄想への対応と心構えで詳しく解説しています。本記事では、この先「タイプによって接し方の勘所がどう変わるか」に絞ってお伝えします。
4大認知症のタイプ別・症状と進み方の違い
ここからが本題です。4つのタイプを、「原因のあらまし」「最初に出やすいサイン」「特徴的な症状」「進み方」という同じ切り口で見ていきます。同じものさしで並べると、違いがくっきり見えてきます。
読み進める前に、大切な前置きをひとつ。以下はあくまで「典型的な例」です。実際には症状の出る順番も強さも人によって大きく異なり、複数のタイプが混ざることもあります。「うちの親はこれだ」と決めつけず、「こういう可能性もあるのか」という気持ちで読んでください。
① アルツハイマー型認知症 ─ 「新しいことが覚えられない」から始まる
認知症の原因として最も多いタイプです7。脳内に異常なたんぱく質が長い時間をかけて溜まり、記憶をつかさどる海馬を中心に、脳が少しずつ縮んでいくと説明されています。
最初に出やすいサインは、直近の出来事に関するもの忘れです。暮らしの中では、次のような形で表れやすいと考えられます。
- 同じことを何度も繰り返し聞く – さっき答えたばかりの予定を、また尋ねる、等
- 物をどこに置いたか分からず、探し物が増える
- 料理の味つけが変わる、作れるレパートリーが減る
- 日付や曜日があいまいになる
特徴的な症状としては、深刻な記憶障害に加えて、しまった場所を忘れたことを受け入れられず「誰かに財布を盗まれた」と身近な家族を疑う物盗られ妄想が高い頻度で見られます。慣れた道で迷ってしまうこともあります。
進み方は、月単位・年単位でゆっくりと、右肩下がりに進んでいく傾向があります。
② 脳血管性認知症 ─ 「できる時とできない時の差」が大きい
脳梗塞や脳出血など、脳の血管のトラブルによって神経細胞が傷つくことで起こるタイプです8。高血圧や糖尿病といった生活習慣病が背景にあることが多いとされています。
最初に出やすいサインは、必ずしももの忘れとは限りません。むしろ、次のような変化が先に出ることがあります。
- 自分から動こうとする意欲が落ちる – 趣味や外出をしなくなる、等
- 頭の回転が遅くなり、返事や判断に時間がかかる
- レシピを見ても、段取りよく料理を進められなくなる
特徴的な症状として、ささいなことで急に泣いたり怒ったりする感情失禁があります。また、しっかりしている部分と、そうでない部分がまだらに混在する「まだら認知症」と呼ばれる状態が見られるのも、このタイプの特徴です。手足のしびれや歩きにくさ、飲み込みにくさなど、体の症状を伴うこともあります。
進み方は、脳卒中の発作が起きるたびに階段を下りるように段階的に悪化する傾向があります。だからこそ、再発予防が大切になります。
③ レビー小体型認知症 ─ 「いない人が見える」「日によって差が激しい」
レビー小体という異常なたんぱく質が脳に溜まって起こるタイプで、パーキンソン病とごく近い関係にあると説明されています。最初のうちは、もの忘れがあまり目立たないことがあるのがポイントです。そのため「認知症だとは思わなかった」と見過ごされやすいタイプでもあります。
最初に出やすいサインには、他のタイプにはない特徴的なものがあります。
- 実際にはいない人や虫、動物が、はっきりと見える(幻視)
- 睡眠中に大声を出したり、手足を激しく動かしたりする(レム睡眠行動障害)
- 頭がはっきりしている時と、ぼんやりしている時の波が激しい
- 動作がゆっくりになる、歩幅が小刻みになる、手が震える
特徴的な症状は、リアルな幻視、認知機能の大きな変動、パーキンソン症状、立ちくらみなどの自律神経症状です。進み方は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進む傾向があります。歩行が不安定になりやすく、転倒のリスクが高い点にも注意が必要です。
なお、このタイプは一部の薬に敏感に反応することがあるとされ、薬の使い方は必ず医師の管理のもとで行う必要があります。市販薬なども含め、自己判断で対応しないことが大切です。
④ 前頭側頭型認知症 ─ 「もの忘れ」より「性格が変わった」が目印
脳のうち、理性や感情のコントロール、社会的なルールの認識をつかさどる前頭葉や、言葉の理解に関わる側頭葉が縮むことで起こるタイプです。このタイプは初期にもの忘れがほとんど目立たないことが多く、代わりに性格や行動の変化が前面に出ます。
最初に出やすいサインは、次のようなものです。
- 身だしなみに急に無頓着になる
- 周囲の目を気にせず、自分勝手に見える行動をとる
- 毎日決まったコースを歩く、同じ時間に同じ物を食べるなど、決まりきった行動を繰り返す(常同行動)
- 悪気なく万引きをする、信号を無視するなど、社会のルールから外れた行動をとる
- 甘い物を好んで大量に食べるようになる
特徴的な症状は、常同行動と、理性のブレーキが効きにくくなること(脱抑制)による行動の変化、そして他者への共感の乏しさです。
進み方は年単位でゆっくりですが、初期は「性格が悪くなった」「うつ病では」などと誤解されやすく、正しい相談にたどり着くまで時間がかかりやすいという難しさがあります。「本人がわざとやっている」と責めないことが、何より大切になります。
一覧でわかる|4大認知症の違い比較表
ここまでの内容を、一枚の表にまとめます。「うちの親の様子は、どれに近いだろう?」と見比べるときの手がかりにしてください。
| タイプ | 最初に出やすいサイン | もの忘れの目立ち方 | 特徴的な症状 | 進み方 |
|---|---|---|---|---|
| アルツハイマー型 | 直近のもの忘れ(同じことを何度も聞く) | 目立つ(初期から) | 物盗られ妄想、見当識障害、道に迷う | ゆっくり右肩下がり |
| 脳血管性 | 意欲低下、思考の遅さ、段取りの悪化 | まだら(部分的) | 感情失禁、まだら認知症、手足の麻痺・歩行障害 | 発作のたび階段状に |
| レビー小体型 | 幻視、睡眠中の異常行動、調子の波 | 初期は目立たないことも | くり返す幻視、認知機能の変動、パーキンソン症状、転倒 | 良し悪しをくり返し進行 |
| 前頭側頭型 | 性格変化、身だしなみの乱れ、常同行動 | 初期は目立たない | 脱抑制(万引き等)、常同行動、共感の乏しさ | 年単位でゆっくり |
ここで、あらためて大切なお願いです。この表は「見当をつけるための地図」であって、診断そのものではありません。実際には症状が重なり合ったり、典型例とは違う順番で出たりします。表を見て「たぶんこれだ」と思っても、それはまだ仮説の段階です。次の章で、その理由をもう少し詳しくお話しします。
タイプだけで決めつけないで|混合型・若年性・「治る認知症」
4つのタイプを知ると、つい「うちはアルツハイマー型だ」と当てはめたくなります。でも、家族の自己判断だけで決めてしまうのは、実はとても危険です。理由は3つあります。
いくつかのタイプが混ざる「混合型」がある
実際の現場では、アルツハイマー型と脳血管性が同時に存在する「混合型」も少なくありません。高齢になるほど複数の要因が絡みやすく、症状の出方も複雑になります。ひとつのタイプの説明にきれいに当てはまらないことは、めずらしくないのです。だからこそ、専門家による見極めが必要になります。
65歳未満で発症する「若年性認知症」もある
認知症は高齢者だけのものではありません。65歳未満で発症する若年性認知症もあります。18〜64歳での有病率は、人口10万人あたり50.9人(推計で約3.57万人)と報告されています9。
働き盛りでの発症となるため、就労の継続や障害年金の活用など、高齢者とは異なる支援が必要になります。「まだ若いから認知症のはずがない」という思い込みが、気づきを遅らせてしまうこともあります。
治療で改善する「治る認知症」が隠れていることがある
そして、最も見逃したくないのがこれです。認知症によく似た症状を起こすけれど、治療によって改善が期待できる病気があります。たとえば、脳に髄液がたまる正常圧水頭症や、頭を打った後にじわじわ血がたまる慢性硬膜下血腫、甲状腺の働きの低下、ビタミン欠乏などです10。
これらは、早く原因に気づいて適切な治療を受けることで、症状が大きく良くなる可能性があります。もし「認知症だから仕方ない」と家族が思い込んで受診しなければ、治せたはずの状態を見逃してしまうかもしれません。
これこそが、「自己判断で終わらせず、必ず専門家に診てもらう」べき最大の理由です。
タイプがわかると「接し方の勘所」が変わる
タイプを知ることには、もう一つ大きな意味があります。それは、家族の接し方の勘所が見えてくることです。
先にお伝えしたとおり、BPSD(行動・心理症状)は、周囲の接し方や環境によって和らぐ余地があります11。タイプごとの特徴を知っておくと、「なぜこの対応が良いのか」が腑に落ちやすくなります。
以下は、公的機関や自治体が家族向けに紹介している生活上の工夫の一例です12、13。医療的な治療に代わるものではありませんが、日々の接し方のヒントになります。
| タイプ | 接し方の勘所(生活の工夫) |
|---|---|
| アルツハイマー型 | 物盗られ妄想を正論で否定しない。「それは困ったね、一緒に探そう」と不安に寄り添い、本人が自分で見つけられるようさりげなく導く。 |
| 脳血管性 | 一度にたくさん指示せず、短く一つずつ伝える。急がせない。急な感情の起伏(感情失禁)に驚かず、穏やかに受け止める。 |
| レビー小体型 | 幻視を「何もいない!」と強く否定しない。「私には見えないけれど、あなたには見えるのね」と受け止める。転倒予防のため段差解消・手すりなど環境を整える。 |
| 前頭側頭型 | 常同行動は危険がなければ無理に止めない。万引き等は叱っても止まらないため、近所の店や地域包括支援センターに事情を伝え、地域で見守る体制をつくる。 |
共通しているのは、「本人を変えようとする」のではなく「接し方や環境のほうを変える」という発想です。この考え方は、すべてのタイプに通じる土台になります。
症状ごとのより具体的な声かけや対応は、認知症の親への接し方|暴言・徘徊・妄想への対応と心構えにまとめていますので、あわせてご覧ください。
「性格が変わった」のではなく「脳が変化した」
ここで、少しだけ家族の気持ちの話をさせてください。
親の不可解な言動を前にすると、「わざと困らせている」「歳をとってわがままになった」と感じ、つい強く叱ってしまうことがあります。そして後から「どうしてあんなに怒ってしまったんだろう」と、自分を責めてしまう。この繰り返しに、多くのご家族が苦しんでいます。
でも、思い出してください。暴言も、妄想も、ルールから外れた行動も、本人の性格が悪くなったからではなく、脳の変化によって起きている症状です。そして、いちばんつらいのは、これまでできていたことができなくなっていく本人自身かもしれません。
「これは親の性格の問題ではなく、病気の症状なんだ」。そう捉え直すことは、決して親を突き放すことではありません。むしろ、無用な衝突を減らし、あなた自身の心を守るための大切な視点です。タイプを知ることは、この「捉え直し」を助けてくれます。
「認知症かも」と思ったら|相談・受診の順路
タイプの見当がついても、つかなくても、次にやるべきことは同じです。それは「専門家に相談する」こと。ここでは、家族が動きやすい相談の順路を紹介します。
大前提として、家族の役割は「診断すること」ではありません。「いつ・どんな場面で・どんな変化があったか」を観察して記録し、専門家に伝えること。これが家族にできる、いちばん価値のある仕事です。
まずは「地域包括支援センター」へ
「本人が病院に行きたがらない」「何科に連れて行けばいいか分からない」。そんなときの最初の相談先が、地域包括支援センターです14。市区町村ごとに設置された公的な総合相談窓口で、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどの専門職がいます。
ここの大きな利点は、本人を連れて行かなくても、家族だけで、しかも無料で相談できることです。受診を嫌がる本人への声のかけ方、適切な医療機関へのつなぎ方まで相談できます。「どこにあるか分からない」という場合は、市区町村の窓口やホームページで確認できます。
次に「かかりつけ医」、必要なら「もの忘れ外来」へ
高血圧などで日ごろ通っているかかりつけ医がいれば、本人も抵抗なく受診できることが多いものです。
かかりつけ医から、より専門的なもの忘れ外来や認知症疾患医療センター(脳神経内科・精神科など)を紹介してもらう流れが、本人の負担も少なくスムーズです15。いきなり大きな病院を受診するより、紹介状を持って行くほうが落ち着いて受けられます。
なお、受診をどうしても嫌がるときの具体的な声かけの工夫や、受診後の要介護認定の進め方は、認知症の初期症状と見分け方|家族がすぐすべき初動5ステップで詳しく解説しています。また、通院が難しくなってきた場合には、医師が自宅に来てくれる在宅医療(訪問診療)という選択肢もあります。
地域差があることも知っておく
ここで一つ、現実的な注意点です。医療や介護の体制には地域差があります。専門的な診断ができる医療機関が近くにない地域や、初診の予約が数か月待ちになる地域もあります。
ですから、ネット上の一般論だけで判断せず、お住まいの自治体が発行している「認知症ケアパス(認知症ガイドブック)」を早めに手に入れておくと安心です16。地域の相談窓口や医療機関、使えるサービスが具体的にまとまっています。
進み方に合わせた「見守りと住まい」の備え
タイプによって、進み方も、家族に必要な備えも変わってきます。たとえばレビー小体型なら転倒への備え、アルツハイマー型や前頭側頭型なら外出・徘徊への見守り、脳血管性なら再発予防が意識したいポイントになります。
「今の困りごと」だけでなく「これから起きそうなこと」を見据えて、暮らしの環境を考えておくと、あわてずにすみます。
住まいの見直しは、その備えの一つです。選択肢を、家族が比較しやすいように整理してみます。
| 選択肢 | 費用の目安 | プライバシー | 介護のしやすさ | 将来の扱い |
|---|---|---|---|---|
| 在宅を続ける(見守り強化) | 比較的小さい | 保ちやすい | 間取り次第で負担大 | 柔軟 |
| 施設・グループホーム | 月々の負担が続く | 限られる | 専門職に任せられる | 退去・住み替え |
| 母屋のリフォーム | 中〜大(工事) | 同居度合いによる | 改善しやすい | 建物に残る |
| 庭に別棟を設置 | 中程度 | 「近くて別」を保てる | 目が届きやすい | 使用後に買取の場合も |
私たちが手がけるシニアリビング(別棟介護)は、この表の「庭に別棟を設置」にあたる選択肢です。既存の自宅はそのままに、リフォーム工事なしで庭に介護専用の高断熱ハウスを設置でき、使い終えたあとは買取ができる場合もあります。
一方で、設置には一定の敷地や給排水の条件、用途地域の確認が必要で、広い間取りを求める方には合いません。あくまで「近くで見守りたいが、母屋の同居は避けたい」という条件に合う場合の選択肢の一つとしてご検討ください。
今日からできる|観察と相談のチェックリスト
最後に、今日から始められる3つのステップにまとめます。むずかしく考えず、できることから一つずつで大丈夫です。
- 気づいた変化を記録する:
「いつ・どんな場面で・どんな様子だったか」を、スマホのメモや手帳に残します。受診のときに、何より役立つ情報になります。 - タイプの「見当」をつける(決めつけない):
この記事の比較表を手がかりに「レビーに近いかも」と仮説を持ちます。あくまで相談を助けるためのメモであって、診断ではありません。 - 相談先に動く:
まずは地域包括支援センター、そしてかかりつけ医へ。そして、家族の間で情報を共有し、一人で抱え込まないこと。これがいちばん大切です。
認知症の種類を知ることは、不安を煽るためではなく、次の一歩を落ち着いて踏み出すためにあります。この記事が、その地図になれば幸いです。
よくある質問
- Q認知症の種類でいちばん多いのはどれですか?
- A
アルツハイマー型です。ある研究では、認知症の原因の約7割(67.6%)を占めると報告されています。次いで脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型と続きますが、実際にはアルツハイマー型と脳血管性が混ざる「混合型」も少なくありません。
- Qもの忘れが目立たなくても認知症のことはありますか?
- A
はい、あります。「認知症=もの忘れ」と思われがちですが、レビー小体型は幻視や睡眠中の異常行動から、前頭側頭型は性格や行動の変化から始まることが多く、初期はもの忘れが目立たないことがあります。脳血管性も、意欲の低下や段取りの悪化が先に出る場合があります。もの忘れ以外の変化にも目を向けることが早い気づきにつながります。
- Q「治る認知症」があると聞きましたが本当ですか?
- A
認知症によく似た症状を起こし、治療で改善が期待できる状態があります。正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、甲状腺の働きの低下、ビタミン欠乏などです。これらは早く原因に気づいて適切な治療を受けることが大切なので、「歳のせい」「認知症だから仕方ない」と自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。
- Q家族が症状からタイプを見分けてしまってよいのでしょうか?
- A
「見当をつける」ことは問題ありませんが、「診断」はしないでください。症状は典型例どおりに出るとは限らず、複数のタイプが重なることもあります。ご家族の役割は、いつ・どんな場面で・どんな変化があったかを記録し、その情報を医師に正確に伝えることです。確定はかならず専門家に委ねましょう。
- Q「認知症かも」と思ったら、最初にどこへ相談すればいいですか?
- A
まずはお住まいの地域の「地域包括支援センター」への相談がおすすめです。市区町村ごとに設置された公的な総合相談窓口で、本人を連れて行かなくても家族だけで無料で相談できます。日ごろ通っているかかりつけ医がいれば、そこから専門のもの忘れ外来を紹介してもらう流れもスムーズです。
まとめ|「種類を知る」ことは、落ち着いて次の一歩を踏み出すため
認知症は一つの病気ではなく、原因ごとに最初のサインも、目立つ症状も、進み方も違います。タイプの見当がつくと、これから起きやすいことの見通しが立ち、家族としての接し方の勘所も見えてきます。
けれども、それはあくまで「相談へつなぐための地図」。決めつけず、確定は専門家に委ねることが、ご本人にとっても家族にとっても、いちばん安心できる進め方です。
最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
- 4大認知症はサインが違う:
アルツハイマー型はもの忘れ、脳血管性はまだらな変化、レビー小体型は幻視や調子の波、前頭側頭型は性格・行動の変化から始まりやすい。 - 「もの忘れ」だけが認知症ではない:
もの忘れが目立たないタイプもあるため、いつもと違う変化に幅広く目を向ける。 - 決めつけないことが大切:
症状は重なり合い、混合型や”治る認知症”もある。だからこそ受診で確かめる。 - タイプがわかると接し方が変わる:
困った言動は性格ではなく脳の変化による症状。捉え直しが家族の心も守る。 - まずは相談から:
気づいた変化を記録し、地域包括支援センターやかかりつけ医へ。一人で抱え込まない。
親の変化に気づいた「今」は、不安なタイミングかもしれません。でも、正しい知識を持って早めに動けることは、ご家族にとって大きな強みです。そして、進み方に合わせて暮らしの環境を整えることも、これからの備えの一つになります。
「近くで見守りたいけれど、母屋での同居は避けたい」という方は、庭に設置できる別棟という選択肢もあります。ご関心があれば、シニアリビング(別棟介護)の情報も、選択肢の一つとしてのぞいてみてください。
まずは気軽に、できることから始めていきましょう。
脚注
- 厚生労働科学研究費補助金 認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」総括研究報告書(2013). https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/21048 ↩︎
- 厚生労働省 政策レポート「認知症を理解する」. https://www.mhlw.go.jp/seisaku/19.html ↩︎
- 厚生労働省「認知症に関するハンドブック(軽度認知障害〈MCI〉・加齢によるもの忘れとの違い)」(2023). https://www.mhlw.go.jp/content/001100282.pdf ↩︎
- 厚生労働省「認知症に関するハンドブック(軽度認知障害〈MCI〉・加齢によるもの忘れとの違い)」(2023). https://www.mhlw.go.jp/content/001100282.pdf ↩︎
- 厚生労働省 政策レポート「認知症を理解する」. https://www.mhlw.go.jp/seisaku/19.html ↩︎
- 厚生労働省 政策レポート「認知症を理解する」. https://www.mhlw.go.jp/seisaku/19.html ↩︎
- 厚生労働科学研究費補助金 認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」総括研究報告書(2013). https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/21048 ↩︎
- 国立長寿医療研究センター「意外と身近な『血管性認知症』」. https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/059.html ↩︎
- 厚生労働省・日本医療研究開発機構(AMED)「わが国の若年性認知症の有病率と有病者数」(2020). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001324265.pdf ↩︎
- 国立長寿医療研究センター「認知症の原因となる正常圧水頭症」. https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/110.html ↩︎
- 厚生労働省 政策レポート「認知症を理解する」. https://www.mhlw.go.jp/seisaku/19.html ↩︎
- 東京都大田区「大田区認知症サポートガイド」. https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/fukushi/kourei/nintisyou/orange-guide.html ↩︎
- 国立長寿医療研究センター「認知症の方への接し方(啓発リーフレット)」. https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/news/documents/LeafletA4j.pdf ↩︎
- 厚生労働省「福祉・介護 認知症に関する相談先」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00003.html ↩︎
- 厚生労働省「福祉・介護 認知症に関する相談先」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00003.html ↩︎
- 厚生労働省「福祉・介護 認知症に関する相談先」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00003.html ↩︎