排泄介助の基本とコツ|おむつ交換・トイレ誘導・ポータブルトイレの選び方

この記事は約18分で読めます。

「トイレに間に合わなくなってきた」

「おむつをいつ、どう替えればいいのか分からない」

「夜中の排泄介助で、自分が眠れない」

在宅で親や配偶者の排泄を支えていると、こうした悩みは尽きないものです。排泄はもっともデリケートなケアだからこそ、本人に申し訳なさを感じさせず、それでいて介護する側も無理をしない、その両立に頭を悩ませている方は少なくありません。

でも、安心してください。排泄介助は、本人の自立度に合わせて方法と道具を選び、いくつかのコツを押さえるだけで、負担も本人の尊厳もぐっと守りやすくなります。おむつもポータブルトイレも、「できることを奪う道具」ではなく、不安と手間を減らすための味方です。

この記事では、在宅介護の現場で本当に役立つ排泄介助の基本とコツを、次の流れで具体的に解説します。

この記事でわかること
  • 排泄介助の4つの方法と、自分のケースが分かる「自立度別・早見表」
  • 嫌がられない「トイレ誘導」の声かけと、間に合わせる工夫
  • 失敗しないポータブルトイレの選び方・置き方・介護保険の使い方
  • 漏らさないおむつの当て方と、寝たまま行う交換の手順
  • 皮膚トラブル・におい・夜間への対処と、一人で抱えないための制度

結論|排泄介助は「自立度に合わせた道具選び」と3つの心構えで負担も尊厳も守れる

排泄介助は、在宅介護のなかでもとくに負担が大きいケアです。

ある民間調査では、介護をしている家族の約65.4%が夜間のおむつ交換に負担を感じていると回答しています1。回数が多く、夜間も待ったがきかないため、介護する側の睡眠や気持ちのゆとりを大きく削ってしまうのです。

それでも、やみくもに頑張る必要はありません。排泄介助のコツは、突き詰めると次の2つに整理できます。

排泄介助のコツ
  • 本人の自立度に合わせて、排泄の方法と道具を選ぶこと
    トイレ → ポータブルトイレ → 差込便器・尿器 → おむつ、と段階的に考える。
  • 3つの心構えを守ること
    1. 本人の尊厳を守る声かけ
    2. 介護者が一人で抱え込まない
    3. 水分を制限しない

ここで大切なのは、「おむつ=介護の終わり」ではないということです。おむつやポータブルトイレは、できることを奪う道具ではなく、本人の不安と介護者の負担を減らし、日中の活動や眠りを守るための道具です。自立度に合わせて使い分けるのが、正しい排泄介助だと考えられます。

さらに、費用や手間は一人で抱える必要もありません。ポータブルトイレなどは介護保険の特定福祉用具購入(年間10万円を上限に、所得に応じて1〜3割負担)で買えますし2、訪問介護やケアマネジャー、自治体の助成も活用できます。

それでは、おむつ交換・トイレ誘導・ポータブルトイレの選び方を中心に、本人の気持ちと介護者の負担の両面から、具体的な進め方を順に見ていきましょう。

排泄介助の基本|4つの方法と「自立度別・介助レベル早見表」

排泄介助と一口にいっても、本人の状態によって方法はまったく異なります。まずは全体像をつかみ、ご自身のケースが「今どの段階にあるか」を確認しましょう。

ここがずれていると、必要以上に重い介助をしてしまったり、逆に無理をさせてしまったりします。

排泄介助の4つの方法

排泄の方法は、自立度が高い順に大きく4つに分かれます。

トイレ介助自分で歩ける、または支えがあればトイレまで行ける人への、見守り・誘導・移乗の介助。もっとも自立度が高い方法です。
ポータブルトイレトイレまで歩くのが難しいが、ベッドのそばでなら座って排泄できる人向け。寝室に置く簡易便器です。
差込便器・尿器ベッドから起き上がるのが難しい人が、寝たまま使う道具です。
おむつ交換排泄のコントロールが難しい人や、寝たきりの人に使います。

多くの場合、加齢や体調で少しずつ自立度が下がり、トイレからポータブルトイレ、おむつへと移っていきます。

ただし、一度おむつにしたら戻れない、というわけではありません。体調の回復やリハビリで、日中はトイレ・夜はパッド、といった組み合わせに戻せることもあります。

自立度別・介助レベル早見表

本人の状態と、向いている排泄方法・道具の目安を表にまとめました。

※あくまで一般的な目安で、最終的な判断はケアマネジャーや医療職と相談して決めるのが安心です。

本人の状態向いている方法道具の目安
支えがあればトイレまで歩けるトイレ介助(見守り・誘導)手すり・パンツ式(必要なら薄型パッド)
立てるが歩行は不安定/間に合わないポータブルトイレ+トイレ併用ポータブルトイレ・パンツ式+パッド
座位は保てるが立ち座りが難しいポータブルトイレ中心家具調・高機能ポータブルトイレ
寝たきりに近い/排泄の自覚が難しいおむつ交換・差込便器テープ式+尿とりパッド

「立てるのに、漏らすのが心配だから」と早々に終日おむつにしてしまうと、かえって筋力や排泄機能が落ちてしまうことがあります。本人ができることは、できる範囲で続けてもらうのが基本です。

まず手元にそろえたい必要物品

おむつ交換やベッド上のケアは、途中で物を取りに行くと手が止まり、本人もつらい時間が延びます。使うものは、始める前にワンセットで手元に置いておくのが鉄則です。

  • 排泄用品
    新しいおむつ・尿とりパッド、トイレットペーパー、おしりふき
  • 衛生・スキンケア用品
    使い捨て手袋、陰部洗浄用ボトル(100円ショップのドレッシングボトルでも代用可。38〜40度のぬるま湯を入れる)、泡タイプの洗浄剤、皮膚を保護するスキンバリアクリーム
  • 後始末用品
    防水シーツ、汚れたおむつを包む新聞紙、においを抑える防臭ポリ袋

新聞紙は、汚れたおむつを包むと水分とにおいを吸ってくれるので、ごみの日まで快適に過ごすための地味ながら役立つアイテムです。

トイレ誘導のコツ|尊厳を守る声かけと「間に合わせる」工夫

「トイレに行きたがらない」「間に合わずに漏れてしまう」

これは在宅介護で本当に多い悩みです。トイレ誘導は力ずくではうまくいきません。本人の気持ちに配慮しながら、タイミングと環境を整えるのがコツです。

自尊心を守る3つの原則

排泄は、もっともデリケートな行為です。失敗を責められると、本人は強い羞恥心や情けなさを感じ、ときには介助そのものを拒むようになります。次の3つを意識してください。

否定しない

「さっき行ったでしょう」「また漏らして」は禁句です。失敗を見つけても、「少し汗ばんだみたいだから着替えましょうか」と、さらりと受け止める声かけが関係を守ります。

急かさない

トイレでせかされると、出るものも出なくなります。終わるまで落ち着いて待ちましょう。

全部はやらない

ズボンの上げ下ろしなど、本人ができる部分は任せます。「やってあげる」より「できるところを見守る」姿勢が自立を保ちます。

汚れた下着を押し入れに隠してしまう…。そんな行動も、「迷惑をかけたくない」「みじめな姿を見せたくない」という心の表れだと考えられます。叱るのではなく、隠さなくてもいい安心感をつくることが、結果的にトラブルを減らします。

トイレ介助の基本的な流れ

支えがあればトイレに行ける人への介助は、次のような流れになります。すべてを手伝うのではなく、本人ができる動作は任せ、危ない部分だけ支えるのがコツです。

  1. 声をかけてトイレまで誘導し、必要に応じて移動を支える。
  2. 手すりや体を支えながら、ズボンと下着を下ろす。できる人は自分で。
  3. 便座に安全に座ったのを確認し、いったん離れて待つ。
  4. 排泄が終わったら、清拭と着衣を介助する。前から後ろへ拭く。
  5. 立ち上がり・移動を支え、最後に手洗いを促す。

立ち座りのときは、急に立つと血圧が下がってふらつくことがあります。「ゆっくり立ちましょう」と声をかけ、めまいやふらつきがないか様子を見ながら進めましょう。

「理由付け誘導」と排泄日誌でタイミングをつかむ

とくに認知症がある場合、「トイレに行きましょう」とストレートに誘うと拒まれることがあります。そんなときは、別の目的を添える「理由付け誘導」が有効です。「お茶を飲む前に少し歩きましょう」「手を洗いに行きましょうか」と誘い、自然にトイレの近くへ向かうイメージです。

また、やみくもに連れて行っても空振りが続き、お互い疲れてしまいます。数日間、排尿・排便の時間を記録する「排泄日誌」をつけると、その人のリズム(起床後・食後など)が見えてきます。そのタイミングに合わせて声をかければ、成功率が上がり、漏れも減らせます。

「間に合わせる」ための環境づくりと安全

間に合わない原因は、本人の問題だけではありません。トイレまで遠い、場所が分かりにくい、夜は暗くて怖い。こうした環境のハードルも見逃せません。次の工夫で、ぐっと行きやすくなります。

  • トイレのドアに大きな文字や絵で「トイレ」と表示する。
  • 床に誘導ラインのテープを貼り、進む方向を示す。
  • 夜間は人感センサー付きの足元灯で経路を照らす。
  • 手すりや、立ち座りしやすい補高便座を取り入れる。

移乗や見守りでは、安全とプライバシーの両立を心がけます。便座に安全に座れたら、ドアやカーテンの外でさりげなく見守り、終わった合図で介助に入ると、本人の尊厳を守りながら排泄を促せます。

住まいの動線づくりについては、介護部屋の作り方の記事もあわせて参考にしてください。

ポータブルトイレの選び方と使い方|設置位置・保険・処理まで

トイレまで歩くのが難しくなってきたとき、おむつに移る前の有力な選択肢がポータブルトイレです。ベッドのそばで座って排泄できるため、本人の「トイレで用を足したい」という気持ちを守りながら、夜間の移動の負担と転倒の不安を大きく減らせます。

種類の考え方と選ぶ判断軸

ポータブルトイレは、素材や機能でいくつかのタイプに分かれます。代表的なものと、おおまかな価格の目安は次のとおりです。

※金額は特定福祉用具購入を利用し、自己負担1割で購入した場合の目安です。

タイプ特徴と向いている人価格の目安(1割負担時)
樹脂製(標準型)軽量で安く、丸洗いしやすい。一方で軽い分、立ち座りで体重をかけると不安定になりやすい。自立度が高め・短期利用向き約1,500〜3,000円
家具調(木製など)寝室に置いても違和感のないデザイン。重さがあり安定し、転倒しにくい。長く使う場合に向く約2,000〜5,000円
高機能タイプ温水洗浄・脱臭機能・座面の高さ調整などつき。拭き取りや立ち上がりの介助負担を減らせる約4,000〜10,000円

選ぶときの判断軸は、安定感・座面の高さ・ひじ掛け・機能の4点です。

立ち座りの支えにするため、ぐらつかない安定感は最優先。座面はベッドや車いすと近い高さにそろえると移乗が楽になります。ひじ掛けは跳ね上げや取り外しができると、横移動での移乗がしやすくなります。

タイプ別のより詳しい比較は、介護部屋の作り方の記事でも紹介しています。

設置位置のセオリー「ベッドから1歩以内・約30度」

意外と見落とされがちですが、ポータブルトイレは「どこに置くか」で安全性も使いやすさも大きく変わります。基本は次のとおりです。

ポータブルトイレをどこに置くか?
  • ベッドの端から便座まで、1歩以内(おおよそ30〜50cm)に置く。
  • ベッドに対して約30度の角度をつけて配置する。
  • 麻痺がある場合は、動かしやすい側(健側)に置く。

こうすると、立ち上がらなくてもお辞儀をするように横滑りで移れるため、立位が不安定な人でも移乗しやすく、介助する人の腰の負担も軽くなります。

なお、公的機関にはポータブルトイレ使用時の転倒・はさまれといったヒヤリハットの報告もあります3。本体がずれないよう床に固定し、ひじ掛けに全体重をかけて立たないよう注意しましょう。

介護保険での購入と、使い方・処理のポイント

購入

ポータブルトイレ(腰掛便座)は、排泄物が触れる衛生用品のため、介護保険のレンタルの対象外です。代わりに「特定福祉用具購入」の対象となり、年間10万円を上限に、所得に応じて1〜3割負担で購入できます4

購入には事前の手続きが必要で、指定された事業者から買う必要があるなど条件もあるため、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してから進めると安心です。制度の細かい要件は変わることもあるので、最新情報は市区町村の窓口で確認してください。

使い方・処理

使い方と後始末では、においと衛生の対策が肝心です。使う前にバケツへ少量の水や専用の防臭液を張っておくと、汚れの付着とにおいの広がりを抑えられます。使用後はできるだけ早く汚物を片づけ、バケツはこまめに洗浄しましょう。

においをさらに抑えたい場合は、水を使わず一回ごとに防臭フィルムで密閉する自動ラップ式のタイプもあります。部屋全体のにおい対策は、後述の「よくあるトラブル」でも触れます。

おむつ交換のコツ|選び方・漏らさない当て方・手順

おむつ交換は、排泄介助のなかでも「うまくできているか不安」という声がもっとも多い部分です。ポイントは、本人に合ったおむつを選ぶことと、漏らさない当て方を知ること

この2つを押さえるだけで、漏れの後始末という最大の負担がぐっと減ります。

おむつの選び方|自立度とサイズで決める

おむつは「外側(アウター)」と「中に敷く尿とりパッド(インナー)」の組み合わせで使います。アウターの選び方は、本人の自立度で決めます。

介護用おむつの選び方
  • 自分で立てる・座れる人
    パンツ式+尿とりパッド。自分で上げ下ろしでき、トイレやポータブルトイレとの併用もしやすい。
  • 寝たきりに近い・立位が難しい人
    テープ式+尿とりパッド。寝たまま交換しやすい。

サイズ選びも漏れを防ぐ重要なポイントです。

パンツ式はウエストがおへその高さにくるサイズを、テープ式はおしりのいちばん広い部分(ヒップ)に合わせて選びます。大きすぎると隙間ができて漏れます。ぴったり目を意識しましょう。

「漏らさない当て方」3つの鉄則

漏れの多くは、おむつそのものより「当て方」が原因です。次の3つを守るだけで、横漏れ・背漏れは大きく減らせます。

介護用オムツの漏れない当て方
  • 足回りのギャザーを立てる:内側に折り込まず、しっかり立てて肌に沿わせると、尿の通り道に壁ができて漏れにくくなります。
  • パッドは重ねない:「不安だから」と何枚も重ねると、かえってギャザーが潰れて隙間ができ、逆効果です。原則は「アウター1枚+インナー1枚」。吸収量が足りない夜間は、枚数を増やすのではなく6〜8回吸収できる大容量パッド1枚に替えます。
  • テープはクロス気味に留める:下側のテープは斜め上へ、上側のテープは斜め下へ。おなかとテープの間に指が1〜2本入るゆとりを残すと、食い込まず、すき間もできません。

寝たきりの方のテープ式おむつ交換の手順

寝たまま行うテープ式の交換は、流れを覚えてしまえば落ち着いて進められます。基本の手順は次のとおりです。手袋をはめ、汚れに触れた手ときれいな手を分ける(不潔・清潔を分ける)意識を持つと衛生的です。

おむつ交換の手順
  1. 新しいおむつを開き、足回りのギャザーを立てて準備しておく。
  2. あおむけのまま古いおむつのテープを外し、排泄物を拭き取る。
  3. 体を横向き(側臥位)にし、古いおむつを体の内側へ小さく丸め込む。
  4. 新しいおむつを古いおむつの下に差し込み、背骨の中心とおむつの中心を合わせる。
  5. 体を反対側へ向け、古いおむつを引き抜いて新しいおむつを広げる。
  6. あおむけに戻し、ギャザーを整えてテープをクロス気味に留める。

陰部の洗浄は「こすらず洗い流す」

便のあとなどは、おしりふきで何度もこするのは禁物です。皮膚を傷つけ、かぶれの原因になります。38〜40度のぬるま湯を入れたボトルで汚れを洗い流し、水分はやわらかいタオルで押さえるように「押し拭き」します。

仕上げに皮膚を保護するスキンバリアクリームを塗っておくと、次の排泄物が肌に触れにくくなり、皮膚トラブルの予防になります。この「こすらない」ケアは、本人の痛みを防ぐだけでなく、「大切に扱われている」という安心感にもつながります。

なお、おむつ交換の頻度や1日の使用枚数には個人差があります。「何回替えるべき」と一律に決めず、本人の排泄量や皮膚の状態を見ながら調整しましょう。

よくあるトラブルと対処|漏れ・皮膚トラブル・におい・夜間

正しく道具を選び、当て方を工夫しても、トラブルがゼロになるわけではありません。ここでは、とくに相談の多い4つの困りごとへの対処をまとめます。

皮膚トラブル(かぶれ・ただれ)

尿や便が長く肌に触れたり、強くこすったりすると、痛みを伴う「失禁関連皮膚炎」を起こすことがあります。予防の基本は、こすらず洗い流す・押し拭きする・保護クリームを塗るの3つです5

赤みやただれが続く、痛みが強いといった場合は、自己判断せず、訪問看護師やかかりつけ医に相談してください。

におい・ごみの問題

部屋にこもるにおいは、本人の羞恥心を強め、家族の生活の質も下げてしまいます。においの主な原因は、室内に置かれた排泄物そのものと、移乗時などに飛び散った微量の尿です。

対策としては、ポータブルトイレのバケツに防臭液を張る、使用済みのおむつは新聞紙で包んでから防臭袋に入れる、といった方法が手軽で効果的です。

部屋全体のにおいを根本から抑える方法については、介護の臭い対策の記事で原因別に詳しく解説しています。

夜間頻尿・夜間の漏れ

夜中に何度も起きてしまう場合、無理にそのつどトイレへ連れて行くと、本人も介護者も眠れません。夜間は「こまめに替えること」よりも、お互いの睡眠を守ることを優先しましょう。

夜間用の大容量パッドを使って「朝まで交換不要」の状態をつくり、「ここなら漏れても大丈夫」と安心して眠ってもらうのが現実的です。ベッドのそばにポータブルトイレを置いておけば、起きたときの移動も最小限で済みます。

やってはいけない3つの注意点

よかれと思ってやったことが、かえって本人の状態を悪くしてしまうこともあります。次の3つは、とくに避けたい落とし穴です。

1. 水分を制限しない

「トイレの回数を減らしたい」「漏れが怖い」という理由で水分を控えるのは危険です。高齢者の水分不足は、脱水症状だけでなく、便秘や尿路感染症を招き、かえって頻尿を悪化させることもあると考えられています。

必要な水分量には個人差がありますが、食事以外で1日に1〜1.5リットル程度を一つの目安に、しっかり水分をとってもらいましょう。

2. 能力があるのに、安易に終日おむつにしない

歩ける・立てる力が残っているのに、後始末の手間を理由に終日おむつにしてしまうと、トイレまで歩くという日常のリハビリ機会を奪い、筋力や排泄機能の低下を早めてしまうおそれがあります。

日中はトイレやパンツ式、夜はテープ式や大容量パッドといったメリハリをつけ、できる力はできる範囲で使い続けてもらうのが、長い目で見て本人のためになります。

3. ポータブルトイレの転倒・においを甘く見ない

ポータブルトイレは便利な反面、移乗時の転倒や、寝室のにおいという課題もあります。本体をしっかり固定する、無理な移乗をさせない、防臭対策をする。

こうした基本を守らないと、事故やストレスのもとになります。設置や機能の選び方に迷ったら、福祉用具専門相談員に相談しましょう。

一人で抱えないために|頼れるサービスと制度

排泄介助は密室になりやすく、家族だけで抱え込むとあっという間に限界がきます。負担を分け合い、費用を軽くするために、使える人・サービス・制度を知っておきましょう。

プロに任せる・相談する

  • 訪問介護:ヘルパーに排泄介助やおむつ交換を任せられます。できること・できないことや料金の目安は、訪問介護の記事で確認できます。
  • ケアマネジャー・福祉用具専門相談員:本人の状態や部屋の広さに合わせて、ポータブルトイレやおむつの選定、設置の最適化を手伝ってくれます。

排泄ケアを1日の生活リズムにどう組み込むかは、在宅介護の一日のスケジュールの記事も参考になります。

費用を軽くする制度

排泄ケアには継続的な費用がかかります。おむつ代は、ある調査では1か月あたり平均6,000〜9,000円程度とされ、重度になるとさらにかかることもあります6

次の制度を上手に使いましょう。

排泄ケアの費用を軽くする制度
  • 特定福祉用具購入(介護保険)
    ポータブルトイレなどを年間10万円を上限に1〜3割負担で購入できます7
  • 自治体のおむつ助成
    市区町村が独自に紙おむつ代を助成している場合があります。たとえば神奈川県中井町では、要介護4・5で住民税非課税の方に年額最大6万円などの助成があります8金額や条件は自治体ごとに大きく異なるため、お住まいの役場の高齢者福祉窓口で確認してください。
  • おむつ代の医療費控除
    おおむね6か月以上寝たきりで、治療上おむつが必要と医師が認めた場合、おむつ代が医療費控除の対象になります9。申請に必要な書類や条件は変わることがあるため、最新情報を確認しましょう。
    控除の手続きや助成の使い方は、おむつ代の助成と医療費控除とは?申請方法と対象を解説で詳しく解説しています。

住環境という選択肢|トイレ動線を根本から整える

ここまで道具と介助のコツを見てきましたが、排泄の負担は住まいそのものにも大きく左右されます。トイレが遠い、寒い、においがこもる。こうした住環境の問題は、道具だけでは解決しきれないこともあります。

とくに冬の寒いトイレは、急激な温度変化によるヒートショックのリスクもあり、軽視できません。

住環境を整える方法には、いくつかの選択肢があります。それぞれに長所と短所があるため、費用・工期・プライバシー・介護のしやすさ・将来の扱い・設置条件といった観点で比べて検討するとよいでしょう。

選択肢主な特徴注意点
母屋のリフォーム住み慣れた家でトイレや動線を改善できる工事費・工期がかかり、間取りによっては限界も
施設への入居専門職による排泄ケアを受けられる費用負担・本人の環境変化が大きい
庭に別棟を設置トイレ・浴室つきの介護空間を新たに用意できる設置できる土地・条件の確認が必要

3つめの「庭に別棟」という方法のひとつが、当社の介護専用ハウス「シニアリビング」です。

給排水の接続によりトイレや浴室を備えられ、リフォーム工事なしで庭に設置できます。高断熱仕様のため冬のトイレでも寒暖差が小さく、ヒートショック対策にもつながります。使い終わったあとは撤去・買取も可能です。

一方で、設置するスペースのある戸建てに向く反面、土地に余裕がない場合や、ごく短期間だけの利用を想定する場合には、レンタルの福祉用具や母屋の一部改修のほうが合うこともあると考えられます。

どの方法が自分たちの条件に合うかを比べたうえで、選択肢の一つとして検討してみてください。詳しくはシニアリビングのサービスページをご覧ください。

よくある質問

Q
高齢者のおむつ交換は1日に何回くらいが目安ですか?
A

一律に何回とは決められず、本人の排泄量や皮膚の状態に合わせて調整するのが基本です。日中は汚れたらそのつど、夜間は6〜8回吸収できる大容量パッドを使って「朝まで交換不要」にすると、本人も介護者も眠りを守れます。回数を無理に減らすより、漏れと皮膚トラブルを防ぐことを優先しましょう。

Q
おむつの漏れを防ぐコツはありますか?
A

「サイズを合わせる」「ギャザーを立てる」「パッドを重ねない」の3つが基本です。とくに不安だからとパッドを何枚も重ねると、かえってギャザーが潰れて隙間ができ、逆に漏れやすくなります。原則はアウター1枚+インナー1枚で、足回りのギャザーをしっかり立てて肌に沿わせてください。

Q
ポータブルトイレは介護保険のレンタルで使えますか?
A

いいえ、ポータブルトイレ(腰掛便座)は排泄物が触れる衛生用品のため、レンタルの対象外です。代わりに「特定福祉用具購入」の対象となり、年間10万円を上限に所得に応じて1〜3割負担で購入できます。事前手続きや指定事業者からの購入など条件があるため、ケアマネジャーに相談してから進めましょう。

Q
認知症でトイレを嫌がるときはどうすればいいですか?
A

「トイレに行きましょう」と直接誘うのではなく、別の目的を添える「理由付け誘導」が有効です。「お茶の前に少し歩きましょう」「手を洗いに行きましょうか」と誘い、自然にトイレへ向かうようにします。「さっき行ったでしょう」などの否定は避け、排泄日誌でその人のリズムをつかむと成功しやすくなります。

Q
排泄の回数を減らすために水分を控えてもいいですか?
A

いいえ、水分を控えるのは危険です。高齢者の水分不足は脱水だけでなく、便秘や尿路感染を招き、かえって頻尿を悪化させることもあると考えられています。必要量には個人差がありますが、食事以外で1日1〜1.5リットル程度を目安に、しっかり水分をとってもらいましょう。

まとめ|自立度に合わせて道具を選べば、排泄介助は楽になる

排泄介助は、在宅介護でもっとも負担の大きいケアのひとつです。けれど、本人の自立度に合わせて方法と道具を選び、いくつかのコツを押さえれば、漏れや後始末に追われる毎日は確実に変えられます。

おむつもポータブルトイレも、本人の力を奪うものではなく、不安と手間を減らし、お互いの眠りと尊厳を守る味方です。

今日から意識したいポイントを、最後に整理しておきましょう。

Point
  • 本人の自立度を確かめ、トイレ・ポータブルトイレ・おむつを段階的に選ぶ
  • 声かけ・水分・「できることは任せる」の3原則で、尊厳と健康を守る
  • ポータブルトイレは「ベッドから1歩以内・約30度」で安全に設置する
  • おむつはサイズを合わせ、パッドは重ねず、皮膚は「洗い流して押し拭き」
  • ケアマネジャーや訪問介護、福祉用具の制度・助成を使い、一人で抱えない

そして、排泄の負担は道具だけでなく、トイレの動線や室温といった住まいの環境にも大きく左右されます。「もっと根本から介護しやすい住まいを整えたい」と感じたら、選択肢の一つとして、トイレや浴室を備えた庭の別棟という方法もあります。

当社の介護専用ハウス「シニアリビング」について詳しく知りたい方は、サービス紹介ページをのぞいてみてください。まずは情報を集めることが、無理のない在宅介護への第一歩です。

脚注

  1. 介護ポストセブン(株式会社エス・エム・エス)「介護用おむつに関する意識調査」(2025). https://kaigo-postseven.com/204385 ↩︎
  2. 越谷市「居宅介護(介護予防)福祉用具購入費の支給について」(2024). https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/fukushi/kaigohoken/ninteiari/fukusiyougu.html ↩︎
  3. 公益財団法人テクノエイド協会「福祉用具 事故・ヒヤリハット情報」(2024). https://www.techno-aids.or.jp/hiyari/ ↩︎
  4. 越谷市「居宅介護(介護予防)福祉用具購入費の支給について」(2024). https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/fukushi/kaigohoken/ninteiari/fukusiyougu.html ↩︎
  5. 一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会「失禁ケアについて」(2023). https://jwocm.org/public/continence/ ↩︎
  6. みんなの介護(株式会社クーリエ)「介護のおむつ代は一ヶ月にいくら?」(2024). https://www.minnanokaigo.com/enquete/no39/ ↩︎
  7. 越谷市「居宅介護(介護予防)福祉用具購入費の支給について」(2024). https://www.city.koshigaya.saitama.jp/kurashi_shisei/fukushi/kaigohoken/ninteiari/fukusiyougu.html ↩︎
  8. 神奈川県中井町「高齢者支援(高齢者等介護用品支給助成事業)」(2024). https://www.town.nakai.kanagawa.jp/soshiki/kenkokakoreikaigohan/koreifukushi_kaigo/441.html ↩︎
  9. 国税庁「おむつに係る費用の医療費控除」(2024). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1137.htm ↩︎