「老人ホームとサ高住って、結局どう違うの?」
「特養が安いと聞くけど、本当に入れるの?」
「そもそも、施設に入れる以外の選択肢はないのかな…」
親の住まいを考え始めると、聞き慣れない言葉が次々に出てきて、違いも費用もつかめないまま立ち止まってしまう方は少なくありません。高齢期の住まい選びは、これからの暮らしの質と家計を長く左右する、大きな決断。だからこそ「なんとなく」で選んで後悔したくないですよね。
この記事では、代表的な選択肢を「施設系」「住宅系」、そして住み慣れた家で暮らし続ける「在宅継続系」の3グループに整理し、それぞれの特徴・費用・向き不向きを、2026年時点の公的データをもとに中立に比較します。「施設しかない」と思い込む前に、まずは選択肢の全体像をつかんでみましょう。
高齢者向け住宅の全体像|まず「施設」か「在宅で続ける」か
「老人ホーム」「サ高住」「特養」「介護ハウス」――。調べ始めると言葉が次々に出てきて、違いがつかめないまま迷子になってしまう方は少なくありません。種類が多いのは事実ですが、整理のコツはシンプルです。高齢者向けの住まいは、大きく3つのグループに分けて考えると一気に見通しが良くなります。
- 施設系(手厚い介護が中心):
介護付き有料老人ホーム、特別養護老人ホーム(特養)、グループホームなど - 住宅系(自由度が高い住まい):
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、住宅型有料老人ホーム、ケアハウスなど - 在宅継続系(住み慣れた家で暮らし続ける):
自宅のバリアフリーリフォーム、庭に建てる別棟(介護ハウス)など
運営面では、特養やケアハウスのように公的な性格が強いものと、有料老人ホームやサ高住のように民間が運営するものに分かれます。
そして、選ぶときの一番の決め手になるのが「介護サービスがどう提供されるか」です。施設のスタッフが直接介護を行うタイプもあれば、外部の訪問介護やデイサービスを自分で契約して利用するタイプもあります。この違いを押さえるだけで、各選択肢の性格がぐっと分かりやすくなります。
住まいの見直しが必要になる背景には、子どもの独立や退職といったライフステージの変化、階段の上り下りがつらくなるなどの身体機能の変化があります。
住まいは寝起きするだけの場所ではなく、毎日の活動の拠点であり、心の安らぎや社会とのつながりを保つ場でもあります。だからこそ、選択を誤ると「こんなはずじゃなかった」という後悔や、長く続く経済的・精神的な負担につながりかねません。
なお、本記事は「高齢者向け住宅の種類」を施設から在宅継続まで横断して比較する図鑑です。自宅・施設を含めた住まい全体の選び方は、関連記事「【2026年版】介護はどこで?自宅か施設か5選択肢を4軸で比較」で4つの判断軸とともに整理しています。あわせてご覧ください。
【施設系】手厚い介護を受けながら暮らす住まい
まずは、介護やサポートが手厚い「施設系」から見ていきましょう。介護度が上がっても住み続けやすいのが共通の強みです。ここでは代表的な介護付き有料老人ホーム・特別養護老人ホーム(特養)・グループホームを取り上げます。
介護付き有料老人ホーム
特徴
食事や掃除などの生活支援に加え、施設のスタッフ(介護職員)が24時間体制で常駐し、入浴・排泄・食事介助といった介護を直接提供してくれるのが最大の特徴です。
これは「特定施設入居者生活介護」という制度の指定を受けた施設だからこそ可能なしくみです。多くは「終身利用」が可能で、看取りまで対応する施設も多く、一度入居すれば介護度が上がっても住み替えの心配が少ないという安心感があります。
向いている人
すでに手厚い介護が必要な方、常に誰かがそばにいる安心感を求める方、将来介護度が上がることに強い不安がある方。
費用の目安
入居一時金は0円の施設から数千万円まで幅広いのが実情です。ただし全国の傾向を見ると、入居一時金は平均94.7万円に対して中央値は10.0万円で、一部の高額施設が平均を押し上げているにすぎません1。一般的な施設では数十万円〜0円に収まるケースも増えています。
月額利用料は平均15.2万円・中央値13.5万円が目安で2、ここに介護保険の自己負担分(1〜3割)などが加わります。介護費が要介護度に応じた定額(包括)のため、月額が大きく変動しにくいのも特徴です。
- メリット:介護が施設内で完結し、重度化しても住み替えの心配が少ない。看護師が日中常駐する施設も多く医療的ケアに対応しやすい。レクリエーションが豊富。
- デメリット:費用が高額になりやすい。集団生活のため施設の日課やルールに従う必要があり、プライバシーに制約を感じることがあります。
特別養護老人ホーム(特養)
特徴
地方公共団体や社会福祉法人が運営する公的な介護保険施設です。入居条件は2015年度の制度改正により原則「要介護3以上」に限定されています。比較的低価格で、手厚い介護を受けながら終身にわたって利用できるのが大きな魅力です。
要介護1・2でも入れる「特例入所」
やむを得ない事情がある場合は、要介護1・2でも「特例入所」が認められます。対象となるのは、認知症で日常生活に支障がある、知的・精神障害を伴う、家族による深刻な虐待が疑われる、単身世帯などで在宅生活が困難――といったケースです。
判断は施設長だけで行うのではなく、施設内に設置した検討委員会の合議で決めるよう手続きが厳格化されています3。「相談すればなんとかなる」という以前のイメージのままでは計画を誤るため注意が必要です。
費用の目安
入居一時金は不要(0円)。月額利用料はおおよそ8.8万円〜15.1万円が目安で4、所得に応じて居住費・食費を軽減する「負担限度額認定制度」もあり、低所得の方はさらに抑えられます。
- メリット:費用が民間施設に比べて格段に安く、看取りまで対応する施設がほとんどで、終の棲家としての安心感が高い。
- デメリット:人気が高く入居待ち(待機)が大きな課題です。厚生労働省の最新調査によると、要介護3以上の入所申込者は全国で約20万6千人にのぼり、3年前より18.4%減ったとはいえ、在宅で暮らしながら待つ人が約9万5千人(待機者全体の4割強)もいます5。
しかも入居は申し込み順ではなく、必要性の高さ(要介護度・家族の状況・認知症の進行など)をポイント評価して決まるため、同居家族がいる方などは優先順位が下がりやすい点にも留意しましょう。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
特徴
認知症の方が、5〜9人ほどの少人数ユニットで、スタッフの支援を受けながら共同生活を送る地域密着型の施設です。家庭的な環境で役割を持って暮らすことが、認知症の進行をゆるやかにすると考えられています。
入居条件
「医師による認知症の診断」「原則65歳以上で要支援2以上」に加え、施設と同じ市区町村に住民票があることが条件です。住み慣れた地域で暮らし続けられる一方、頻繁な喀痰吸引などの常時の医療的ケアが必要になると、対応が難しくなる傾向があります。
費用の目安
初期費用0円〜20万円程度、月額12万〜15万円程度が一つの目安です(地域・施設により異なります)。家賃・食費・水光熱費に、定額の介護サービス費が加わります。
なお、同じ「老人ホーム」でも住宅型有料老人ホームは性格が異なり、介護を外部サービスで受ける「住宅系」に近い住まいです。次の章であわせて整理します。
【住宅系】自由度を保ちながら見守りのある住まい
続いて、賃貸住宅に近い感覚で、自由度を保ちながら暮らせる「住宅系」です。介護は外部の事業者と自分で契約して利用するのが共通点で、その分プライバシーや生活の自由度が高い反面、重度化すると費用や住み続けやすさに注意が必要になります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
特徴
サ高住は、あくまで「賃貸住宅」という位置づけです。バリアフリー構造の住宅に、「安否確認(状況把握)」と「生活相談」の提供だけが法律で義務付けられているのが大きな特徴です。
老人ホームのような厳格なルールは少なく、外出・外泊・来客も原則自由。介護が必要になれば、住宅型有料老人ホームと同じように外部の訪問介護やデイサービスを自分で選んで利用します。
向いている人
今は自立して生活できるが、将来に備えて見守りのある環境に移りたい方。プライバシーを重視し、自分のペースで自由に暮らしたい方。
費用の目安
初期費用は敷金(家賃の数か月分)が必要なケースが多く、平均37.5万円・中央値0万円と幅があります。月額は平均11.2万円・中央値10.4万円が目安で6、ここに食費(希望者)や、利用した分の外部介護サービスの自己負担が加わります。
- メリット:外出・外泊・家族の訪問が原則自由で、プライバシーを確保しやすい。
- デメリット:介護スタッフが24時間常駐しているとは限らず、介護度が上がると外部サービスの費用負担が増えやすい。医療依存度や認知症の症状が重くなった場合に、住み替えを求められることもあります。※詳しくは後述の「選んだ後のリスク」で解説します。
ケアハウス(軽費老人ホーム)
特徴
身寄りがない、または家庭での生活が難しい高齢者が、比較的低い負担で生活できるよう公的補助が入った住まいです。食事や生活支援が受けられる「一般型(自立型)」と、特定施設の指定を受けて介護も提供する「介護型」があります。
費用の目安
初期費用は0円〜数百万円、月額はおおよそ7万〜20万円程度が目安です(※所得や施設により大きく異なります)。一般型は事務費が所得に応じて決まるため、収入が低いほど負担が軽くなります。比較的安価ですが、所得要件などがあり、施設数も限られます。
【在宅継続系】住み慣れた家で暮らし続ける選択肢
ここまで施設・住宅系を見てきましたが、住まいの選択肢は「どこかに移り住む」ことだけではありません。「住み慣れた家を離れたくない」「地域やかかりつけ医を変えたくない」という思いは多くの方が抱くものです。
そうした方にとって、自宅で暮らし続けるための環境を整えるのも有力な選択肢です。ここでは「自宅リフォーム」と「庭に建てる別棟(介護ハウス)」を取り上げます。
自宅のバリアフリーリフォーム
特徴
手すりの設置や段差解消などで、今の家を介護しやすく整える方法です。介護保険の「住宅改修費支給制度」を使えば、20万円を上限に費用の7〜9割が支給されます7。
費用相場の目安は、手すりの設置が1か所あたり約5〜15万円、段差解消スロープが約2〜45万円、玄関の引き戸化が約10〜60万円など8。ただし浴室など水回りの大掛かりな改修は上限を超え、自己負担が数十万〜数百万円になることもあります。
向き不向き
軽度〜中等度で、間取りや動線に大きな問題がない住まいに向きます。一方、廊下や浴室が狭い、2階に寝室がある、といった構造的な制約が大きい場合は、リフォームだけでは限界が出ることもあります。
庭に建てる別棟(介護ハウス)という近居
特徴
母屋とは別に、自宅の庭や敷地内に独立したコンパクトな建物を設置し、そこで暮らす方法です。家族のすぐそばにいる安心感と、お互いのプライバシーを両立できる「程よい距離感」が魅力です。介護が必要な場合は、サ高住などと同様に外部の訪問介護やデイサービスを利用します。
費用の目安
建物の種類や設備で変わりますが、二次情報での相場として、プレハブ(ユニット型)の総額目安が150〜250万円、木造の総額目安が300〜400万円程度とされています9。施設のように毎月の利用料がかからず、かかるのは光熱費と利用した分の外部介護サービス費が中心です。
屋根と壁があり基礎で土地に定着した建物は固定資産税の課税対象になり、規模や地域によっては建築確認申請も必要です。設置には庭などのスペースと、給排水・用途地域の条件確認が欠かせません。※自治体や最新情報で要確認
別棟の一例:C’ZB(シーズビー)シニアリビング
「庭に建てる別棟」の具体的な製品の一つに、私たち株式会社アイデアが手がける「C’ZB(シーズビー)シニアリビング」があります。
仕様:
- 工場で完成させた状態でクレーン付きトラックで運び、設置するためリフォーム工事が不要。給排水を接続すればトイレや浴室の設置も可能です。
- 移動型の建物で軽視されがちな断熱性能を重視した高断熱仕様で、ヒートショック対策にもなります。
- 使い終わった後は買取も可能で、従来建築で生じがちな解体費用(約150〜300万円)を避けられる場合があります。
- 1ユニットは6.0m×2.4m(駐車場1台分より少し大きい程度)。単棟・2連棟・連結で広さを調整できます。
- 分類としてはユニック車で吊り下げて設置するプレハブ・ユニット型で、トレーラーハウスとは別のカテゴリーです。
- 向いているケース:住み慣れた土地や家を離れたくない方、家族の近くにいる安心感と自分だけのプライベート空間の両方を求める方、施設の継続的な月額負担を抑えたい方。
- 慎重に検討したいケース:設置できる庭・敷地がない、給排水や用途地域の制約がある、広い居住空間が必要、または24時間体制の常時見守りが必要な重度の状態。
結局、老人ホームとサ高住は何が違う?
検索でよく見かける疑問が「老人ホームとサ高住の違い」です。見た目や費用が似ていても、両者は制度の土台からまったく異なります。ここを理解しないまま入居すると、後の介護体制でミスマッチが起きかねません。違いは大きく3点です。
- 根拠となる法律が違う:有料老人ホームは「老人福祉法」に基づく福祉的な性格の施設です。一方サ高住は「高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)」に基づく住宅(不動産)としての性格が強い住まいです。
- 契約の形が違う:介護付き有料老人ホームの多くは、居住とサービスを一体で利用する権利を買う「利用権方式」。サ高住は一般の賃貸と同じ「賃貸借契約」で、借地借家法により居住の権利が強く守られます。
- 介護の提供のされ方が違う:これが最も重要な違いです。介護付き有料老人ホームでは施設のスタッフが24時間体制で介護を直接提供します。サ高住で義務付けられているのは「安否確認」と「生活相談」のみで、身体介護は外部事業者と別途契約して受けます。
ざっくり言えば、「介護をまるごと任せたいなら老人ホーム(介護付き)、自由に暮らしながら必要な介護だけ選びたいならサ高住」という整理になります。どちらが良い・悪いではなく、求める暮らし方と介護の必要度によって向き不向きが分かれます。
なかでも特に見分けがつきにくいのが、サ高住と住宅型有料老人ホームです。どちらも介護は外部サービスで受ける「住宅系」で、費用やサービスがよく似ています。両者の違いと選び方を項目別に整理したサ高住と住宅型有料老人ホームの違いを9項目で比較した記事もあわせてご覧ください。
【一覧比較】タイプ別の違い早わかり表
ここまでの各タイプの違いを、一覧表にまとめました。何を重視するかを考えながらご覧ください。
※費用は目安で、地域・施設・所得により異なります。
| タイプ | 住まいの形態 | 主な入居条件 | 初期費用 | 月額費用 | 介護サービス | 自由度・プライバシー | 将来の柔軟性 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 介護付き有料 | 施設(利用権) | 自立〜要介護5 | 0〜数千万円 (中央値10万円) | 約15万円〜 | 施設が提供(24h) | 個室だが制限あり | 住み替え不要 |
| 住宅型有料 | 施設(利用権) | 自立〜要介護 | 0〜数十万円(目安) | 13〜20万円(目安) | 外部サービス利用 | 比較的高い | 重度化で住替リスク |
| 特養 | 施設(公的) | 原則要介護3以上 | なし | 約8.8〜15.1万円 | 施設が提供(24h) | 相部屋の場合あり | 住み替え不要(要待機) |
| グループホーム | 地域密着型施設 | 認知症・要支援2以上 同一市区町村 | 0〜20万円(目安) | 12〜15万円(目安) | 施設が提供 | 少人数の共同生活 | 重度医療で対応困難も |
| サ高住 | 賃貸住宅 | 自立〜軽度中心 | 敷金(中央値0万円) | 約11万円〜 | 外部サービス利用 | 確保されやすい | 重度化で住替リスク |
| ケアハウス | 軽費老人ホーム | 原則60歳以上・所得要件 | 0〜数百万円(目安) | 7〜20万円(目安) | 一般型は外部/介護型は施設 | 比較的確保 | 一般型は重度化で住替も |
| 自宅リフォーム | 自宅(在宅継続) | 制限なし | 改修費(補助あり) | 在宅介護費が中心 | 外部サービス利用 | 最も高い(自宅) | 構造の限界あり |
| 別棟(介護ハウス) | 戸建て(所有) | 制限なし(土地が必要) | 数百万円〜(目安) | 光熱費+外部介護費 | 外部サービス利用 | 完全に確保 | 移設・撤去・買取が可能 |
費用で選ぶ|「初期+月額×期間」のトータルコストで考える
住まい選びで一番悩むのが費用です。ただし、単月の利用料や一時金だけで決めるのは危険です。理由は2つあります。
- パンフレットの「月額利用料」には含まれない費用があること。介護保険の自己負担分、おむつなどの日用品費、医療費、理美容代などは別途かかるのが一般的で、表面上の安さに惑わされがちです。
- 介護は思いのほか長く続くこと。介護を行った期間の平均は55.0カ月(4年7か月)で、4年を超える人が約4割、10年以上に及ぶ人も17.6%います10。
そこで役立つのが、「初期費用+月額×想定期間」で見るトータルコストの視点です。
生命保険文化センターの2024年度調査では、介護の一時的な初期費用の平均は47.2万円、月額費用の平均は在宅で5.3万円、施設で13.8万円とされています11。これを平均介護期間55か月で単純に試算すると、次のようなモデルになります。※あくまで平均値による目安で、要介護度や地域で大きく変わります。
| 初期費用 | 月額 | 想定期間 | トータルコスト | |
| 在宅介護のモデル | 47.2万円 | 5.3万円 | 55か月 | 約339万円 |
| 施設介護のモデル | 47.2万円 | 13.8万円 | 55か月 | 約806万円 |
「一番費用を抑えられるのはどれか?」とよく聞かれますが、月額だけなら公的な特養が最安です。ただし原則要介護3以上で入居待ちが長いという制約があります。
一方、初期投資はかかっても月々の固定費を抑えられる在宅継続(リフォームや別棟)は、介護が長期化するほど経済的な優位が出やすいと考えられます。どこで損益が分かれるかは「介護期間の長さ」に強く左右されるため、保守的に長めの期間を想定して計算しておくと安心です。
後悔しないために知っておきたい「選んだ後のリスク」
入居前の費用や雰囲気だけでなく、「入居した後に起こりうること」まで見据えておくと、後悔をぐっと減らせます。とくに次の3点は、パンフレットには書かれにくい注意点です。
① 住宅系の「見えない退去リスク」
サ高住や住宅型有料老人ホームは、介護を外部サービスで受けます。介護保険には要介護度ごとに1か月で使える上限「区分支給限度基準額」があり、たとえば要介護1で約16万7,650円分、要介護5で約36万2,170円分です(2024年度基準、1単位約10円換算)12。
状態が悪化して1日に何度も介助が必要になると、この上限を超えてしまい、超過分は全額(10割)自己負担になります13。結果として月額が十数万円から数十万円に跳ね上がり、支払いが難しくなると、施設側から「より手厚い施設への転居」を勧められることがあります。これが「見えない退去リスク」です。
② 特養は「申し込んでも、すぐには入れない」
前述のとおり特養は費用面で魅力的ですが、入居は申し込み順ではなく必要性のポイント評価で決まります。要介護3以上でも数年単位で待つことは珍しくなく、同居家族がいる場合は優先順位が下がりやすいのが実情です14。
「いざとなれば特養」と当て込んだ計画は、思惑どおりに進まないことがあります。
特養の費用・入居条件・待機の仕組みと申し込み方法は、「特養とは?費用・入居条件・待機期間と申し込み方法を解説」で詳しく解説しています。
③ 制度や経営の変化リスク
介護保険制度は原則3年ごとに見直されます。社会保障財源の逼迫を背景に、今後、一定以上の所得がある人の自己負担割合の引き上げなどが行われる可能性も指摘されています。
※あくまで見通しであり、確定情報ではありません。
また、民間の有料老人ホームやサ高住は営利事業であるため、物価高や人手不足による経営悪化・サービス低下のリスクもゼロではありません。「今の制度・今の費用」が将来も続く前提で考えすぎないことが、長期の備えにつながります。
後悔しない住まい選びの5ステップ
多様な選択肢の中から最適な住まいを選ぶには、次の順序で検討を進めるのがおすすめです。
- Step1希望を整理する
「何を一番大切にしたいか」を明確にします(自由な生活/手厚い介護/家族との距離/費用など)。
- Step2心身の状態と必要な介護レベルを把握する
現在の要介護度や、将来予測される医療・介護のニーズを客観的に整理します。
- Step3予算を決める
初期費用にいくら出せるか、月々いくらまで払えるかを、「初期+月額×想定期間」のトータルコストで具体的に計算します(前章を参照)。
- Step4複数の選択肢を比較検討する
本記事の早わかり表のように、施設系・住宅系・在宅継続系を横並びで比べます。住まい全体の比較は別記事「【2026年版】介護はどこで?自宅か施設か5選択肢を4軸で比較」もあわせてご覧ください。
- Step5必ず見学・体験して、自分の目で確かめる
最も重要なステップです。雰囲気・スタッフの対応・入居者の表情・食事など、資料では分からないことを五感で確かめましょう。
なお、親御さんの一人暮らしが続けられるか不安で、住まいの見直し時期を判断したい方は、「要介護の親、一人暮らしはいつまで可能?限界のサインと次の住まいの選び方」もあわせてお読みください。
よくある質問
- Q老人ホームとサ高住の一番の違いは何ですか?
- A
介護サービスの受け方が一番の違いです。介護付き有料老人ホームは施設のスタッフが24時間体制で介護を直接提供しますが、サ高住は賃貸住宅に近く、義務付けられているのは安否確認と生活相談のみで、介護は外部の事業者と自分で契約して利用します。「介護をまるごと任せたいなら老人ホーム、自由に暮らしながら必要な介護だけ選びたいならサ高住」と考えると分かりやすいです。
- Q一番費用を抑えられるのはどのタイプですか?
- A
月額だけなら公的な特別養護老人ホーム(特養)が最も安く、目安は約8.8万〜15.1万円です。ただし原則要介護3以上で、入居待ちが長いという制約があります。一方、初期投資はかかっても月々の固定費を抑えられる在宅継続(自宅リフォームや庭の別棟)は、介護が長期化するほど経済的になりやすいと考えられます。月額だけでなく「初期費用+月額×想定期間」のトータルコストで比べるのがおすすめです。
- Q介護度が重くなっても住み続けられるのはどれですか?
- A
介護付き有料老人ホームと特別養護老人ホーム(特養)です。これらは施設のスタッフが24時間体制で介護を提供するため、介護度が上がっても住み替えの心配が少なく、看取りまで対応する施設も多くあります。逆にサ高住や住宅型有料老人ホームは、医療依存度が高まると外部サービス費が上限を超えて自己負担が急増し、より手厚い施設への転居を勧められる「見えない退去リスク」がある点に注意が必要です。
- Qなるべく自由に暮らしたいのですが、どれが向いていますか?
- A
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や住宅型有料老人ホームが向いています。これらは賃貸住宅に近く、外出・外泊・来客が原則自由で、必要な介護サービスを自分で選んで契約できるため、施設のルールに縛られず自分のペースで暮らしやすい傾向があります。さらに自由度を重視するなら、住み慣れた自宅で続ける在宅継続(リフォームや庭の別棟)も選択肢になります。
- Q庭に建てる「介護ハウス」のメリットと注意点は?
- A
家族のすぐそばで暮らせる安心感と、自分だけのプライベート空間を両立できるのが大きなメリットです。施設のような毎月の利用料がかからず、かかるのは光熱費と利用した分の外部介護サービス費が中心です。一方で、設置には庭などのスペースと給排水・用途地域の条件確認が必要で、基礎で土地に定着した建物は固定資産税の対象になり、規模によっては建築確認申請も必要です(自治体や最新情報で要確認)。
まとめ|「施設か在宅か」を、家族でじっくり選ぶ
高齢期の住まい選びに、「誰にとってもこれが一番」という唯一の正解はありません。
大切なのは、それぞれの住まいの特徴と費用を正しく理解し、ご本人の価値観・健康状態・経済状況に最も合うものを、ご家族でよく話し合って選ぶことです。施設に手厚く任せる道にも、住み慣れた家で続ける道にも、それぞれ合理的なケースがあります。
この記事のポイントを振り返ります。
- 高齢者向け住宅は「施設系・住宅系・在宅継続系」の3グループで整理すると分かりやすい
- 老人ホームとサ高住の違いは、介護を「施設が提供する」か「自分で外部契約する」かにある
- 費用は月額だけでなく「初期+月額×想定期間」のトータルコストで考える
- 入居後の退去リスク・特養の待機・制度改定まで見据えると後悔が減る
- 施設に入らず住み慣れた家で暮らし続けるという選択肢もある
住まい全体を「自宅か施設か」の視点で比較したい方は、「【2026年版】介護はどこで?自宅か施設か5選択肢を4軸で比較」もあわせてご覧ください。
もし「在宅で続けたいけれど、今の家のままでは不安」という思いがあるなら、住み慣れた敷地に独立した空間を持てる別棟(介護ハウス)という選択肢があります。私たち株式会社アイデアの「C’ZB(シーズビー)シニアリビング」も、そのひとつです。向き不向きのご相談も含めて、まずは気軽に情報を見てみることから始めてみてください。
脚注
- みんなの介護「【一覧表でわかる】老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)」 https://www.minnanokaigo.com/guide/cost/ ↩︎
- みんなの介護「【一覧表でわかる】老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)」 https://www.minnanokaigo.com/guide/cost/ ↩︎
- 厚生労働省「特別養護老人ホームの『特例入所』に係る指針(骨子案)について」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000052324.pdf ↩︎
- みんなの介護「【一覧表でわかる】老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)」 https://www.minnanokaigo.com/guide/cost/ ↩︎
- 厚生労働省の特別養護老人ホーム入所申込者数調査(2026年報道時点)。介護のニュースサイト Joint「特養待機者、減少傾向も依然20万人超」 https://www.joint-kaigo.com/articles/42899/
シルバー新報「特養待機者約5万人減少 厚労省調査」 https://silver-news.com/blog/detail/3053 ↩︎ - みんなの介護「【一覧表でわかる】老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)」 https://www.minnanokaigo.com/guide/cost/ ↩︎
- LIFULL介護(tayorini)「介護リフォーム、何にいくら必要?費用相場と使える補助金例」 https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/article/005/ ↩︎
- LIFULL介護(tayorini)「介護リフォーム、何にいくら必要?費用相場と使える補助金例」 https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/article/005/ ↩︎
- ハピすむ「離れの増築費用はいくら?トイレ付きの相場は?」 https://hapisumu.jp/category/extension-reform/19582/ (リフォーム事業者による二次情報。相場は目安) ↩︎
- 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」 https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html ↩︎
- 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」 https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html ↩︎
- 区分支給限度基準額(2024年度基準、1単位=約10円)に関する解説 https://pro-sup.com/other/2495/ ↩︎
- 区分支給限度基準額(2024年度基準、1単位=約10円)に関する解説 https://pro-sup.com/other/2495/ ↩︎
- 厚生労働省の特別養護老人ホーム入所申込者数調査(2026年報道時点)。介護のニュースサイト Joint「特養待機者、減少傾向も依然20万人超」 https://www.joint-kaigo.com/articles/42899/
シルバー新報「特養待機者約5万人減少 厚労省調査」 https://silver-news.com/blog/detail/3053 ↩︎