役所から届いた「介護保険負担割合証」に「2割」と書かれていて、不安になっていませんか。あるいは、これから親の介護サービスが始まるのに「うちの親は1割なのか、それとも2割・3割なのか」「毎月いくら払うことになるのか」が読めず、もやもやしている方も多いはずです。
お金のことだからこそ、想定外の出費でつまずきたくないですよね。
実は介護保険の負担割合は、「本人の所得」と「世帯の年金収入」の2段階で決まる、れっきとしたルールがあります。仕組みさえ分かれば、負担割合証が届く前でも自分の親が何割になるのかを自分で判定できます。そして、たとえ2割・3割でも、月々の負担には上限があり、軽くする制度も用意されています。
この記事では、次のことが分かります。
読み終わるころには、漠然とした不安が「自分で確かめられる安心」に変わっているはずです。まずは結論から見ていきましょう。
- 【結論】介護保険の負担割合は「2段階」で決まる
- そもそも「負担割合」とは? 1〜3割になった背景と対象者
- 判定のカギ「合計所得金額」と「年金収入+その他の合計所得金額」をかみ砕く
- 【自分で判定】負担割合フローチャート(単身/複数世帯)
- 負担割合はいつ・どこで決まる? 負担割合証と8月の更新
- 負担割合が翌年「上がる・下がる」引き金を先回りで知る
- 【軽減策1】月の上限を決める「高額介護サービス費」
- 【軽減策2】施設の食費・居住費を抑える補足給付ほか
- 【注意】「世帯分離で安くなる」の落とし穴
- 【実行手順】今日からできる5ステップ
- 負担を長い目で抑える「住まいの工夫」という選択肢
- よくある質問
- まとめ:負担割合は「自分で確かめられる」
- 脚注
【結論】介護保険の負担割合は「2段階」で決まる
親の介護保険サービスが始まろうとしているとき、いちばん気になるのは「毎月いくら払うのか」ではないでしょうか。役所から届いた介護保険負担割合証に「2割」と書かれていて、不安になった方もいるかもしれません。
まず安心していただきたいのは、介護保険の自己負担は原則1割だということです。実際、サービスを利用している人の約88%は1割負担で、2割・3割はあわせて約12%にとどまります1。2割・3割になるのは、一定以上の所得がある一部の方だけです。
では、その「一部」に自分の親が当てはまるのかどうか。これは、次の2段階の基準で決まります。
- STEP1(本人の所得):65歳以上の本人の「合計所得金額」がいくらか
- STEP2(世帯の年金収入など):同じ世帯にいる65歳以上全員の「年金収入+その他の合計所得金額」の合計がいくらか
この2つの数字を、本人が住む世帯に65歳以上が「1人だけ(単身)」か「2人以上(複数)」かで当てはめると、1割・2割・3割が判定できます。
具体的な金額ラインは次のとおりです2。
| 負担割合 | STEP1:本人の合計所得金額 | STEP2:世帯の年金収入+その他の合計所得金額 |
|---|---|---|
| 3割 | 220万円以上 | 単身340万円以上 / 複数463万円以上 |
| 2割 | 160万円以上 | 単身280万円以上 / 複数346万円以上 |
| 1割 | 上記のいずれにも当てはまらない方(および第2号被保険者・住民税非課税の方など) | |
ポイントは、STEP1とSTEP2の両方の条件に該当した場合、初めて2割・3割になるという点です。たとえば本人の所得が高くても、世帯の年金収入の合計が基準に届かなければ、負担割合は下の段にとどまります。
この記事では、この表を自分の親に当てはめて自分で判定できるところまで、順番に解説していきます。
なお、ここで扱うのは「負担割合がどう決まるか」と「負担を軽くする方法」です。介護保険サービス全体の使い方や費用の内訳そのものを知りたい方は、別記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください(記事の後半でご案内します)。
そもそも「負担割合」とは? 1〜3割になった背景と対象者
介護保険サービスを使うと、かかった費用のうち決められた割合だけを自己負担します。残りは介護保険(みんなの保険料と税金)でまかなわれる仕組みです。この自己負担の割合が、1割・2割・3割の「負担割合」です。
なぜ2割・3割ができたのか
介護保険が始まった当初は、所得にかかわらず全員が1割負担でした。その後、高齢化で制度を支える費用が増え続けたため、負担能力に応じて負担してもらう(応能負担)という考え方が導入されます。
具体的には、2015年8月に2割負担、2018年8月に3割負担が設けられました3。一定以上の所得がある方に、少し多めに負担してもらう形へと変わってきたわけです。
負担割合が決まるのは「65歳以上」の人
負担割合の判定対象になるのは、第1号被保険者(65歳以上)です。一方、第2号被保険者(40〜64歳)は、所得の多い少ないにかかわらず一律で原則1割です4。生活保護を受けている方も1割負担となります。
つまり、2割・3割の判定が問題になるのは「65歳以上の親」のケースです。この記事も、65歳以上の親を想定して読み進めていただくとわかりやすいはずです。
負担割合が「効く」範囲に注意
もう一つ大切なのが、負担割合が適用されるのは介護保険の対象となるサービス費の自己負担分だけだという点です。
たとえば施設に入ったときの食費・居住費や、日常生活費(おむつ代・理美容代など)は、負担割合とは関係なく原則として全額自己負担になります。この「割合の外側」の費用にも軽減策はありますので、記事の後半でまとめて取り上げます。
判定のカギ「合計所得金額」と「年金収入+その他の合計所得金額」をかみ砕く
負担割合の判定でつまずきやすいのが、前出の表に出てきた2つの専門用語です。ここを理解すれば、自分で判定できるようになります。少していねいに見ていきましょう。
「合計所得金額」とは
合計所得金額とは、収入そのものではなく、収入から必要経費などを差し引いた「所得」の合計です。年金なら公的年金等控除、給与なら給与所得控除、事業なら必要経費を引いた後の金額を合計します。ここで注意したいのは、医療費控除・扶養控除・基礎控除といった「所得控除」を引く前の金額だという点です。
さらに、介護保険の判定では、いくつかの特例的な調整が入ります5。
- 土地・建物を売った譲渡所得がある場合は、マイホーム売却時の3,000万円控除などの特別控除を差し引いた後の金額を使います。つまり、自宅を売って大きな譲渡所得が出ても、特別控除の枠内なら判定に響きにくいということです。
- 給与所得や公的年金等の雑所得がある場合は、控除の見直しの影響を相殺するため、最大10万円を差し引いて計算します。
「自宅を売ったら来年から3割になるのでは」と心配する方がいますが、上記のとおり特別控除後で見るため、過度に恐れてサービスの利用を控える必要はありません。判断に迷うときは、市区町村の窓口で確認しましょう。
「年金収入」と「その他の合計所得金額」とは
STEP2で使う「年金収入+その他の合計所得金額」は、次の2つを足したものです。
- 年金収入:
老齢基礎年金・老齢厚生年金などの公的年金の、税金が引かれる前の総収入額です。ここで重要なのは、遺族年金・障害年金などの非課税年金は含めないという点です6。負担割合の判定では、これらは収入としてカウントされません。 - その他の合計所得金額:
合計所得金額から、公的年金にかかる雑所得を除いた部分です。具体的には、給与所得・事業所得・不動産所得などが該当します。
なお、この「非課税年金は含めない」というルールは負担割合の判定の話です。後半で説明する施設利用時の軽減策(補足給付)では、逆に非課税年金も合算するため、扱いが変わります。この違いが混乱のもとになりやすいので、頭の片隅に置いておいてください。
【自分で判定】負担割合フローチャート(単身/複数世帯)
いよいよ本題です。手元に次の3つを用意すると、自分の親の負担割合を試算できます。
- 親の確定申告書(または住民税の通知書)
- 公的年金等の源泉徴収票
- 市区町村から届く介護保険料の決定通知書
判定の基礎になるのは前年の所得です(1〜7月に利用する分は前々年の所得で見ます)。
世帯に65歳以上が「1人だけか」「2人以上か」で見る表が変わるので、2パターンに分けて示します。図にすると一段とわかりやすいので、フローチャートの図解もあわせてご覧ください。
パターンA:世帯に65歳以上が1人
- 本人の合計所得金額が160万円未満 → 1割
- 本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満
- 世帯の年金収入+その他の合計所得金額が280万円以上 → 2割
- 同 280万円未満 → 1割
- 本人の合計所得金額が220万円以上
- 世帯の年金収入等が340万円以上 → 3割
- 同 280万円以上340万円未満 → 2割
- 同 280万円未満 → 1割
パターンB:世帯に65歳以上が2人以上
本人の合計所得金額の基準(160万円・220万円)は1人の場合と同じです。違うのは、世帯の年金収入等の基準額が高めに設定されている点です7。
- 本人の合計所得金額が160万円未満 → 1割
- 本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満
- 世帯の年金収入等が346万円以上 → 2割
- 同 346万円未満 → 1割
- 本人の合計所得金額が220万円以上
- 世帯の年金収入等が463万円以上 → 3割
- 同 346万円以上463万円未満 → 2割
- 同 346万円未満 → 1割
単身と複数で基準が違うのは、世帯の人数が多いほど生活に必要な費用も増えるため、複数世帯の基準額を高めに設定しているからだと考えられます。実際、1割と2割を分けるラインは、単身が280万円、複数が346万円と、66万円の差があります。
具体例で確認してみる
数字だけだとイメージしにくいので、よくある2つのケースで当てはめてみます。
例1:一人暮らしの母(75歳)、年金収入のみ290万円
年金収入290万円から公的年金等控除(この例では110万円)を引くと、合計所得金額は180万円。これは「160万円以上220万円未満」に当てはまります。さらに、世帯の年金収入等は290万円で「単身280万円以上」を満たします。
両方を満たすので、判定は2割です。もし年金収入が280万円未満だったら、合計所得が160万円を超えていても1割のままです。
例2:夫婦世帯。夫(80歳)は年金300万円+不動産所得100万円、妻(78歳)は年金70万円のみ
夫の合計所得金額は、年金所得(300万円−110万円=190万円)+不動産所得100万円=290万円で「220万円以上」。世帯の年金収入等は、夫(300万円+100万円)+妻70万円=470万円で「複数463万円以上」。両方を満たすので夫は3割です。
一方で妻は、合計所得金額が160万円未満なので、同じ世帯に高所得の夫がいても妻自身は1割です。負担割合は世帯でまとめて決まるのではなく、あくまで本人ごとに判定されることがわかります。
負担割合はいつ・どこで決まる? 負担割合証と8月の更新
「自分で計算した割合と、役所の判定が合っているか確かめたい」。そう思ったら、いつ・どこで割合が決まるのかを知っておくと安心です。
毎年7月下旬に「負担割合証」が届く
要介護・要支援の認定を受けている人には、市区町村から毎年7月下旬ごろに介護保険負担割合証が郵送されます8。ここに、その人の負担割合(1割・2割・3割)と有効期間が記載されています。有効期間は毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。サービスを利用するときは、ケアマネジャーや事業所・施設にこの割合証を提示します。
つまり負担割合は、前年の所得をもとに毎年判定し直され、8月で切り替わるのが基本のリズムです。「去年は1割だったのに今年から2割になった」というのは、前年の所得が基準を超えたときに起こります。
年度の途中で変わることもある
有効期間の途中でも、次のような場合は随時、割合が見直されることがあります9。
- 所得の修正申告などをしたとき:
判定の基礎になる所得が変わるため、その年の8月1日にさかのぼって割合が変更されます。過去に1割で利用していた分について、差額を後から請求されることがあります(注:追徴できる期間は最長5年)。 - 世帯構成が変わったとき:
転入・転出、世帯員の死亡、新たに65歳になった人がいる場合などです。原則として、その事由が起きた月の翌月初日から新しい割合が適用されます(注:事由が月の初日に起きたときはその月から)。変更後は、新しい負担割合証が交付されます。
負担割合が翌年「上がる・下がる」引き金を先回りで知る
長く介護が続くことを考えると、「来年は割合が変わるかもしれない」と先回りできると、家計の計画が立てやすくなります。割合が動く引き金は、大きく2つです。
引き金1:所得の変動
前年の収入が変わると、合計所得金額が160万円・220万円という境界線をまたぎ、翌年の割合が変わることがあります。
たとえば、不動産を売って特別控除の枠を超える譲渡所得が出た、株式の譲渡益を申告した、事業所得が増えた、といったケースです。逆に、収入が減れば翌年の割合が下がることもあります。
引き金2:世帯構成の変化
判定では「同じ世帯にいる65歳以上全員の年金収入等」を合算します。そのため、誰が同じ世帯にいるかが変わると、基準額の見方(単身か複数か)も世帯合計額も変わります。
一人暮らしの親を呼び寄せて同居したり、配偶者が亡くなって単身になったりと、住民票の異動そのものが引き金になり得ます。同居を検討するときは、介護負担や費用だけでなく、こうした制度面の影響も一度確認しておくと安心です。
知っておきたい「2割負担の対象拡大」の動き
制度を長く続けるための見直しとして、国では2割負担の対象を広げる案が検討されています。現在2割の対象となる所得基準を引き下げ、これまで1割だった中間所得層の一部を2割へ移す方向で議論が進んでいるとされ、対象は最大で数十万人規模になるとの試算もあります(※あくまで検討段階の見通しで、確定した内容ではありません)10。
実際にどうなるかは今後の改正次第ですので、最新情報は厚生労働省や市区町村で要確認です。長期の介護費用を見積もるときは、負担が増える可能性も少し見込んでおくと安心でしょう。
【軽減策1】月の上限を決める「高額介護サービス費」
ここからは、負担割合が高くても自己負担を抑えられる軽減策を見ていきます。最初に知ってほしいのが、もっとも頼りになる高額介護サービス費です。
これは、1か月に支払った介護保険サービスの自己負担の合計が、所得区分ごとの上限額を超えたら、超えた分が払い戻される制度です11。つまり、たとえ3割負担でも、月々の自己負担は青天井にはならず、上限で止まる仕組みになっています。これが「最悪のケースでも家計は破綻しない」と言える根拠です。
| 所得区分 | 月の負担上限額 |
|---|---|
| 現役並み所得(課税所得690万円以上) | 140,100円(世帯) |
| 現役並み所得(課税所得380万〜690万円未満) | 93,000円(世帯) |
| 現役並み所得(課税所得145万〜380万円未満) | 44,400円(世帯) |
| 一般(住民税課税世帯) | 44,400円(世帯) |
| 住民税非課税世帯 | 24,600円(世帯) |
| 生活保護受給者など | 15,000円(個人) |
たとえば一般的な課税世帯なら、月44,400円が事実上の上限ラインです。負担割合が2割・3割でサービスをたくさん使った月でも、この金額を超えた分は戻ってきます。
申請のコツは「最初の1回」
高額介護サービス費は、初回に市区町村へ支給申請書を出し、払い戻し用の口座を登録しておけば、以降は超過分が自動的に振り込まれるのが一般的です。一度手続きしておけば、毎月申請する必要はありません。届いた案内を放置しないことが大切です。
なお、申請の手順や必要書類、振り込みまでの流れは「高額介護サービス費でいくら戻る?申請4ステップを解説」でくわしく紹介しています。
ただし「上限の対象外」に注意
この上限が効くのは、保険サービス費の自己負担分だけです。次のような費用は対象外で、別に支払う必要があります。
- 施設入所やショートステイの食費・居住費
- 福祉用具の購入費・住宅改修費
- おむつ代・理美容代などの日常生活費
このうち食費・居住費には、次に説明する別の軽減策が用意されています。
【軽減策2】施設の食費・居住費を抑える補足給付ほか
高額介護サービス費でカバーしきれない費用にも、いくつかの軽減策があります。「対象になる人・効果・注意点」を整理しておきましょう。
補足給付(特定入所者介護サービス費/負担限度額認定)
特別養護老人ホームなどの施設入所や、ショートステイを利用するときの食費・居住費を軽減するのが補足給付です12。対象になるのは、次の両方を満たす人です。
- 世帯全員が住民税非課税であること
- 本人と配偶者の預貯金・有価証券などの資産が、一定額以下であること
ここで注意したいのが、負担割合の判定とはルールが違う点です。補足給付では、負担割合では除外されていた遺族年金・障害年金などの非課税年金も収入として合算して判定します。
また、令和7年(2025年)8月には、年金額の改定にあわせて判定基準額の一部(第2段階の年金収入「80万円」が「80.9万円」になるなど)が見直されています13。基準は改定されることがあるため、利用前に負担限度額認定証を早めに申請し、最新の基準を市区町村で確認しておきましょう。
高額医療・高額介護合算制度
医療と介護の両方で出費がかさむ世帯に役立つのが、この合算制度です。同じ世帯で1年間(8月1日〜翌年7月31日)に支払った医療保険と介護保険の自己負担の合計が基準額を超えたら、超えた分が払い戻されます14。
たとえば70歳以上の一般所得の世帯で年56万円、住民税非課税世帯で年31万円といった基準が設けられています。慢性的な通院と介護が重なっている場合は、加入している医療保険の窓口へ申請しましょう。
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
住民税非課税で特に生計が苦しい人に向けて、利用者負担や食費・居住費を原則4分の1(老齢福祉年金受給者は2分の1)軽減する制度もあります15。対象となる施設・サービスや要件は自治体によって運用が異なるため、当てはまりそうな場合は市区町村の窓口やケアマネジャーに相談してみてください。
これらの軽減策や費用の全体像は、在宅介護の費用と負担を減らす制度の記事でより詳しく解説しています。手続きや相場まで知りたい方はあわせてご覧ください。
【注意】「世帯分離で安くなる」の落とし穴
負担を軽くする話になると、よく登場するのが世帯分離です。インターネットでは「世帯分離をすれば介護費用が安くなる」という情報をよく見かけます。たしかに効果がある場合もありますが、安易に行うとかえって損をすることもあるため、ここは慎重に判断してほしいところです。
期待される効果
世帯分離とは、同じ住所に住みながら、住民票上の世帯を分けることです。同居している親を別世帯にすると、親が住民税非課税世帯の要件を満たしやすくなり、介護保険料の段階が下がったり、高額介護サービス費の上限が下がったり(たとえば44,400円から24,600円へ)する可能性があります。
見落としやすい副作用
一方で、世帯分離には次のような副作用があり、世帯全体で見るとかえって負担が増えることもあります。
- 国民健康保険料の負担増:
世帯ごとにかかる「平等割」が二重に発生し、保険料の合計が上がることがあります。 - 合算制度が使えなくなる:
医療と介護を世帯で合算する高額医療・高額介護合算制度のメリットを受けられなくなる場合があります。 - 税の扶養控除が外れる:
これまで親を扶養に入れていた場合、扶養控除が使えなくなり、子世帯の所得税・住民税が増えることがあります。
そもそも「目的次第」では認められない
世帯分離の本来の要件は、生計が実際に別であることです。生活費や光熱費を完全に共有しているのに「介護費用を安くしたいから」という理由だけで申請すると、窓口で認められないことがあります。形式だけ分離しても、実態が生計同一とみなされれば、扶養控除が否認され追徴課税となるリスクもあります。
つまり世帯分離は、誰にでも得な「魔法の杖」ではありません。介護保険料やサービス費の軽減額だけでなく、国保料の増加・合算制度の喪失・税負担の増加まで含めて、世帯全体の損得を試算してから判断することが欠かせません。
判断に迷うときは、ケアマネジャーやファイナンシャルプランナー、市区町村の窓口に相談しましょう。
【実行手順】今日からできる5ステップ
ここまでの内容を、すぐ動けるアクションに整理します。順番にチェックしてみてください。
- ステップ1前年の所得資料を集める
親の確定申告書(または住民税通知書)、公的年金等の源泉徴収票、介護保険料の決定通知書を手元に用意します。
- ステップ2この記事のフローで割合を試算する
世帯に65歳以上が1人か2人以上かを確認し、本人の合計所得金額と世帯の年金収入等を当てはめます。
- ステップ3届いた負担割合証と照合する
試算結果と、毎年7月下旬に届く負担割合証の割合・有効期間が合っているか確認します。疑問があれば市区町村へ。
- ステップ4軽減策の準備をする
高額介護サービス費の口座を登録し、施設やショートステイの利用予定があれば負担限度額認定を早めに申請します。
- ステップ5世帯分離は慎重に
検討する場合は、世帯全体の損得を試算してから。迷えば自治体・ケアマネに相談します。
なお、この記事で示した基準額や上限額は改定されることがあり、運用には自治体差もあります。最終的な確認は、市区町村の介護保険窓口と、お手元の負担割合証で行ってください。
負担を長い目で抑える「住まいの工夫」という選択肢
ここまでは、負担割合や軽減策という「制度面」の話でした。最後に少し視点を変えて、「環境面」からも負担を抑えられることをお伝えします。
在宅介護を無理なく続けられる住環境を整えておくと、施設に移るタイミングを遅らせたり、介助そのものの負担を軽くしたりできることがあります。これは長い目で見ると、費用面でも体力面でも効いてくる工夫です。
その選択肢の一つが、自宅の庭に設置する別棟の介護専用ハウス「C’ZBシニアリビング」です。仕様面の特徴は次のとおりです。
- 既存の自宅はそのままに、庭に設置するだけ(大がかりなリフォーム工事が不要)
- 冬の寒さ・夏の暑さに配慮した高断熱仕様で、ヒートショック対策にも
- 一人用から夫婦用まで対応し、連結して広げることも可能
- 使い終わった後は買取に対応できる場合があり、解体費用を抑えやすい
向き不向きもはっきりしています。
庭にスペースがあり、親のプライバシーと近さを両立したい世帯には向いていると考えられます。一方で、屋内の同じ空間での見守りを重視する場合や、設置できる敷地がない場合は、自宅のリフォーム・住み替え・施設利用のほうが合うこともあります。
費用・工期・プライバシー・介護負担・将来の扱い(売却や撤去)・設置条件(建築確認や固定資産税など)といった観点で、ほかの選択肢と並べて比較することが大切です。なお設置の可否や法的な扱いは地域差があるため、具体的な条件は要確認です。
住まいの選択肢を費用面から比較したい方は在宅介護の費用の記事を、介護保険サービス全体の中での位置づけを知りたい方は介護保険サービスの種類と使い方の記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
- Q親の介護保険負担割合を、自分で計算する方法はありますか?
- A
はい、できます。用意するのは親の確定申告書(または住民税通知書)、公的年金等の源泉徴収票、介護保険料の決定通知書の3点です。まず本人の「合計所得金額」を確認し、次に同じ世帯にいる65歳以上全員の「年金収入+その他の合計所得金額」を合計します。あとは世帯に65歳以上が1人か2人以上かに分けて、本記事の判定フローに当てはめれば、おおよその割合が分かります。
- Q親が2割負担になりました。1割に戻すことはできますか?
- A
負担割合は前年の所得で自動的に決まるため、任意に「戻す」ことはできません。ただし、翌年に所得が基準を下回れば、その年の8月から1割に変わります。また判定の基礎となる所得に誤りがある場合は、市区町村の窓口で確認・訂正を依頼できます。負担額そのものを抑えたい場合は、高額介護サービス費などの軽減策の利用を検討しましょう。
- Q負担割合は1年の途中で変わることがありますか?
- A
はい、変わることがあります。所得の修正申告をした場合は、その年の8月1日にさかのぼって割合が変更されます。また、転入・転出や世帯員の死亡など世帯構成が変わった場合は、原則として事由が起きた月の翌月初日から新しい割合が適用され、新しい負担割合証が交付されます。
- Q負担割合が3割でも、自己負担に上限はありますか?
- A
はい、あります。「高額介護サービス費」という制度があり、1か月の介護保険サービスの自己負担が所得区分ごとの上限額を超えると、超えた分が払い戻されます。一般的な課税世帯なら月44,400円が上限の目安です。ただし施設の食費・居住費や福祉用具の購入費などは上限の対象外なので、別の軽減策とあわせて確認しましょう。
- Q世帯分離をすれば介護費用は安くなりますか?
- A
一概には言えません。住民税非課税の要件を満たして介護保険料や高額介護サービス費の上限が下がる場合がある一方、国民健康保険料の負担増や、医療と介護を合算する制度が使えなくなる、扶養控除が外れて税金が増えるといった副作用もあります。本来は「生計が別であること」が要件で、目的次第では認められません。世帯全体の損得を試算し、迷う場合は市区町村やケアマネジャーに相談してください。
まとめ:負担割合は「自分で確かめられる」
介護保険の負担割合は、原則1割。2割・3割になるのは一定以上の所得がある一部の方だけで、しかも「本人の所得」と「世帯の年金収入」の2段階という明確なルールで決まります。
仕組みさえ分かれば、負担割合証が届く前でも親が何割になるかを自分で判定でき、たとえ2割・3割でも、月々の負担には上限と軽減策が用意されています。漠然とした不安は、ここまでで「確かめられる安心」に変わったのではないでしょうか。
最後に、大切なポイントを振り返っておきましょう。
- 負担割合は本人の合計所得金額と世帯の年金収入等の2段階で判定され、単身か複数世帯かで基準が変わる
- 判定は前年の所得がもとで、毎年8月に更新。負担割合証で割合と有効期間を確認できる
- 2割・3割でも高額介護サービス費で月の負担に上限がかかり、施設利用時は補足給付などの軽減策もある
- 世帯分離は得とは限らず、副作用も含めて世帯全体の損得で判断する
- 基準額や制度は改定されることがあるため、最終確認は市区町村の窓口と負担割合証で
負担割合や軽減策は「制度面」の備えですが、在宅介護を長く続けやすくする「住まいの工夫」も、結果として負担を抑える一手になります。
自宅の庭に設置する別棟の介護ハウス「C’ZBシニアリビング」も、その選択肢の一つです。親との距離感やプライバシーを大切にしながら在宅介護を続けたい方は、どんな住まい方ができるのか、サービスの紹介ページをのぞいてみてください。まずは気軽に、選択肢を知ることから始めてみましょう。
脚注
- 厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会 給付と負担について(参考資料)」(2023). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001119101.pdf ↩︎
- 札幌市「介護保険サービスを利用したときの利用者負担割合について」(2025). https://www.city.sapporo.jp/kaigo/kaigohoken/riyousyahutan.html ↩︎
- 厚生労働省「給付と負担について」(2023). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001164209.pdf ↩︎
- 厚生労働省「給付と負担について」(2023). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001164209.pdf ↩︎
- 野田市「介護保険利用者負担割合について(合計所得金額について)」(2025). https://www.city.noda.chiba.jp/kurashi/fukushi/hoken/1010809.html ↩︎
- 横浜市「介護保険の負担割合の判定にあたって、遺族年金、障害年金等の非課税年金も収入の対象になりますか。」(2021). https://www.city.yokohama.lg.jp/faq/kukyoku/kenko/kaigo-hoken/20211018170319178.html ↩︎
- 札幌市「介護保険サービスを利用したときの利用者負担割合について」(2025). https://www.city.sapporo.jp/kaigo/kaigohoken/riyousyahutan.html ↩︎
- 厚生労働省「一定以上所得者の利用者負担の見直しに伴う事務処理等について(介護保険最新情報Vol.997)」(2021). https://www.mhlw.go.jp/content/000801668.pdf ↩︎
- 厚生労働省「一定以上所得者の利用者負担の見直しに伴う事務処理等について(介護保険最新情報Vol.997)」(2021). https://www.mhlw.go.jp/content/000801668.pdf ↩︎
- 厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会 給付と負担について(参考資料)」(2023). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001119101.pdf ↩︎
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1390『介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて』の一部改正について」(2025) https://www.mhlw.go.jp/content/001576434.pdf ↩︎
- 守谷市「介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」(2025). https://www.city.moriya.ibaraki.jp/kenkou_fukushi/kaigohoken/1003232/1003240/1003242.html ↩︎
- 守谷市「介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」(2025). https://www.city.moriya.ibaraki.jp/kenkou_fukushi/kaigohoken/1003232/1003240/1003242.html ↩︎
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム|サービスにかかる利用料(高額医療・高額介護合算制度)」. https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html ↩︎
- 福岡県「介護保険サービスの利用者負担を軽くする制度」(2025). https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/kaigohoken-riyousyafutankeigen.html ↩︎