同居介護の費用はいくら?月額の目安と世帯で変わる制度

同居介護の費用を、介護サービスの自己負担・親の生活費・初期費用の三つの層で示した図解サムネイル 介護準備・始め方

親との同居が決まった方、すでに始まっている方のなかには、「毎月いくらかかるのか」「自分たちの世帯からいくら出ていくのか」が見通せないまま、家計簿を開いている方も多いのではないでしょうか。

親の年金でどこまで賄えるのかが分からないまま、時間だけが過ぎてしまうことも珍しくありません。家族だからこそ、お金の話はかえって切り出しにくいものです。

同居後の家計は、「三つの層」に分けて整理すると見通しが立ちやすくなります。そのうえで知っておきたいのが、同居には「増える出費」だけでなく「減る給付」もあるということです。

親が受けている公的な負担軽減のいくつかは、住民票上の「世帯」を単位に判定されます。そのため、住民税が課税されている子どもと同じ世帯になると、自己負担の上限額が上がったり、制度の対象から外れたりすることがあります。そして、その分かれ目となる世帯は、同居を始めるときに自分たちで選べます。

この記事では、介護と住まいの現場に関わる株式会社アイデアが、2026年時点の一次情報をもとに、同居介護の家計と制度の要点を整理しました。

この記事でわかること
  • 同居後に家計から出ていくお金を、「三つの層」に分けて見積もる方法
  • 同居して同じ世帯になると、親の介護の負担がどの制度で上がるのか
  • 住民票の世帯を「分ける・分けない」の判断材料(かえって逆効果になる条件を含む)
  • 同居開始日から逆算して進める準備の手順
  • 2025年4月から会社側に義務づけられた、仕事と介護の両立支援

なお、同居にするかどうかをまだ決めかねている場合は、自宅・リフォーム・別棟・近居・施設の5つを費用やプライバシーなどで比べた介護はどこで?自宅か施設か5択を4軸で比較【2026年版】を先に読んでいただくのがおすすめです。

同居で家計はどう変わるか|三つの層に分けて見る

同居後の家計を、介護サービスの自己負担・親の生活費・初期費用の三つの層に分けて示した図解

同居後の出費が見通しにくくなるのは、性質の違う三つのお金が、同じ財布からまとめて出ていくためです。その三つとは、①介護サービスの自己負担、②親の生活費、③はじめに一度だけかかる費用です。

これらを別々に書き出すと、毎月出ていくお金と最初に一度だけ出ていくお金が分かれ、家計の全体像がつかめます。

層① 介護サービスの自己負担

生命保険文化センターの調査によると、介護に要した費用の月額平均は9.0万円です1。ただし、これは施設に入所している人も含めた平均で、介護を行った場所で分けると、在宅は月5.3万円、施設は月13.8万円と2.6倍の開きがあります2。

そのため、同居して在宅で介護をする世帯の目安は、在宅の5.3万円のほうです。要介護度別の月額平均は次のとおりです3。

要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
月額平均5.4万円7.5万円8.5万円12.4万円11.3万円

表を見ると、要介護4(12.4万円)が要介護5(11.3万円)を1.1万円上回っています。「介護度が重いほど高くなるはずでは?」と思われるかもしれませんが、誤植ではありません。

同じ調査で介護を行った場所を要介護度別に見ると、施設の割合は要介護4が58.7%、要介護5が54.9%です4。施設の月額は在宅の約2.6倍なので、施設の割合が高い要介護4の平均が押し上げられていると考えられます。ただし、この説明は二つの集計表を照らし合わせた推論で、報告書が述べているものではありません。

介護保険で使えるサービスの量には、要介護度ごとに月の上限が決められており、これを「区分支給限度基準額」と呼びます。上限まで使い切ったときの1割負担の目安は次のとおりです5。

要介護116,765単位約16,800円
要介護219,705単位約19,700円
要介護327,048単位約27,000円
要介護430,938単位約30,900円
要介護536,217単位約36,200円

1単位あたりの単価は地域やサービスの種類で変わるため、金額は目安です。親本人の所得によって2割・3割負担になる場合はそれぞれ2倍・3倍になり、上限を超えて使った分は全額が自己負担です。

費用の内訳は、在宅介護の費用|月5〜10万円の内訳と負担を減らす6つの制度で、5つの費目と要介護度別のシミュレーションに分けて整理しています。

層② 親の生活費

介護サービスの費用だけを見ていると、同居後の家計は半分しか見えません。食事や衣服、通院など、日々の生活費も毎月出ていきます。

目安の出発点は、親が子世帯とは別に暮らしていたときの生活費です。総務省の家計調査によると、2025年平均で、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月148,445円、夫婦のみの無職世帯は月263,979円でした6。

もちろん、この全額がそのまま子世帯の追加負担になるわけではありません。同居すれば家賃などの住居費が重ならず、水道光熱費の基本料金も一本化でき、冷蔵庫や洗濯機といった家電も共有できるからです。

一方で、食費、医療費や薬代、衣類代、日用品費、通院の交通費などは、同居しても減らず、暮らす人数の分だけ増えます。

そのため実際の試算では、単身世帯の消費支出(月148,445円)から住居費と光熱費の重なる分を差し引いた金額を、「同居で増える生活費」として見積もります。親の年金から毎月いくら家計に入れてもらうかは、この引き算のあとで話し合うとスムーズです。

層③ はじめに一度だけかかる費用

同居を始めるときは、介護用ベッドの購入、手すりの設置や段差の解消といった住宅の改修、部屋の模様替えや家具の買い替えなど、まとまった費用が一度に出ていきます。

生命保険文化センターの調査によると、介護に要した一時的な費用の平均は47万円で7、前回2021年度の74万円から27万円下がっています8。ただし、減った理由は調査では述べられていません。

また、住まいにどこまで手を入れるかで、この費用は数十万円から数百万円まで幅があります。

親の年金でどこまで賄えるか

三つの層を足したあと、最後に差し引くのが親の収入、主に年金です。厚生労働省の資料によると、2024年度末時点の平均年金月額は、厚生年金(第1号・受給資格期間25年以上)が151,142円、国民年金が59,431円でした9(厚生年金の額は、併給される基礎年金を含みます)。

親が厚生年金を受け取っている場合、単身無職世帯の消費支出(月148,445円)とほぼ釣り合います。しかし、そこに在宅の介護費(平均月5.3万円)が加わると、毎月5万円ほど足りなくなる計算です。

一方、国民年金だけの場合は、生活費の段階ですでに毎月9万円ほど不足します。親が国民年金だけかどうかが、子世帯からの持ち出しが日常的になるかどうかの大きな分かれ目です。

ただし、これらは全国平均で、ご自身の家の金額ではありません。親が実際に受け取っている額は毎年届く「年金振込通知書」で確認でき、税金や社会保険料が差し引かれたあとの手取り額が、実際に使える額です。

この年金振込通知書を家族で一緒に見ることが、お金の話を切り出す自然なきっかけになります。

また、この見積もりを何年分で考えるかも大切です。生命保険文化センターの同じ調査では、介護期間の平均は55.0か月(4年7か月)です10。

ただし、一時費用・月額・期間の三つの平均を掛け合わせても、実際に払われた総額の平均にはなりません。三つは別々の設問への回答から出た数字で、同じ世帯の総額を集計したものではないためです。

掛け算で出した金額は、全体の規模をつかむための目安にとどまります。

加えて、この調査は回答者の自己申告によるアンケートなので、何を介護の費用と数えるかには回答者ごとの幅があります。

同居すると、親の介護費用は上がるのか|世帯で決まる制度と本人で決まる制度

介護保険の制度を、世帯で判定されるものと親本人で判定されるものに振り分けた対比図解

「親と同居を始めたら、親の介護費用が高くなった」という話には、制度上の理由があります。介護保険などの負担軽減のしくみのなかに、親本人の所得ではなく、住民票上の世帯の課税状況で判定されるものがいくつかあるからです。

ただし、同居すればすべての制度で負担が増えるわけでもありません。判定のしかたは制度ごとに違います。

世帯で決まるもの

次の四つは、住民票上の世帯を単位に判定されます。そのため、市町村民税(住民税)が課税されている子どもと同じ世帯になると、負担が増える可能性があります。

高額介護サービス費の負担上限額

1か月の介護サービスの自己負担が上限を超えたとき、超えた分があとから払い戻される制度です。上限額は所得に応じて段階的に決まり、低い区分に入るには、世帯全員が市町村民税非課税であることが条件です11。

区分上限額(月額)
生活保護の被保護者など個人 15,000円
世帯全員が非課税で、本人の年金収入等が一定額以下世帯 24,600円(個人 15,000円)
世帯全員が非課税(上記以外)世帯 24,600円
課税所得380万円未満の人がいる世帯世帯 44,400円
同 380万円以上690万円未満世帯 93,000円
同 690万円以上世帯 140,100円

この表の上3行は「世帯全員が非課税かどうか」で判定され、下3行は「同じ世帯にいる第1号被保険者(65歳以上)の課税所得」で判定されます12。この制度が分かりにくいのは、同じ表のなかで判定の基準が切り替わっているためです。

払い戻しの申請手順や、実際にいくら戻るかの計算方法は、高額介護サービス費でいくら戻る?申請4ステップと2回目以降の手続きにまとめています。

特定入所者介護サービス費(補足給付)

特別養護老人ホームなどの施設やショートステイを利用するときに、食費や居住費(滞在費)の自己負担を軽くする制度です。

対象になるには、世帯全員が市町村民税非課税であること、別世帯の配偶者も非課税であること、本人と配偶者の預貯金等の合計が基準額以下であること、の三つをすべて満たす必要があります13。

2026年8月からは、第2段階と第3段階①を分ける年金収入等の基準額が、80.9万円から82.65万円に改定されました14。あわせて、第3段階①・②の食費の負担限度額が日額30円から60円引き上げられています15。

この制度は施設だけの話に見えますが、ショートステイの食費や滞在費にも適用されます。介護する家族が休むためにショートステイを定期的に使う場合、同じ世帯になって補足給付から外れると、利用のたびに負担が増えます。

第1号被保険者(親)の介護保険料の所得段階

65歳以上の人が納める介護保険料は、親本人の課税状況や所得に加えて、住民票上の世帯に課税されている人がいるかどうかによっても段階が変わります。段階の数や保険料の額は市区町村の条例で定められ、地域差があります16。

後期高齢者医療の保険料の軽減

75歳以上の人が加入する後期高齢者医療の保険料は個人単位で計算されますが、全員に定額でかかる「均等割」の軽減判定には世帯主の所得が含まれます。

世帯主が後期高齢者医療の被保険者でなくても参照されるため、所得のある子どもが世帯主になると、親が受けていた均等割の軽減が外れることがあります17。

本人で決まるもの

一方、次のものは親本人の所得を起点に判定されます。

介護保険の負担割合(1割・2割・3割)

判定は2段階です。第1段階では親本人の合計所得金額を見て、160万円未満なら、その時点で1割に確定します18。

160万円以上の場合にだけ第2段階へ進み、ここで初めて同じ世帯にいる第1号被保険者(65歳以上)全員の年金収入とその他の合計所得金額が参照されます。区切りは、単身なら280万円・340万円、第1号被保険者が2人以上なら346万円・463万円です19。

第2段階で合算されるのは、65歳以上の人だけです。40〜64歳の子どもはそもそも第1号被保険者ではないため、どれだけ収入があっても、親の負担割合の判定には影響しません。

判定の基準と、源泉徴収票と所得証明書で親の割合を確かめる手順は、介護保険の負担割合はどう決まる?1・2・3割の判定基準と確かめ方で整理しています。

40〜64歳の子が同居したときに実際に起きること

ここまでの内容を、よくあるケースに当てはめてみます。親は年金暮らしで、市町村民税は非課税。子は50代の会社員で、住民税が課税されている。この二人が同じ世帯になると、何が変わるでしょうか。

  • まず、高額介護サービス費の月の上限額は、上の表で「世帯全員が非課税」の24,600円から、課税世帯の44,400円に上がります。上限の差は月19,800円、年間237,600円で20、自己負担が24,600円を超える月は、最大でこの差額の分だけ負担が増えます。
  • ただし、上限がさらに高い93,000円や140,100円の区分には入りません。これらの区分は同じ世帯にいる第1号被保険者の課税所得で判定され、65歳未満の子どもは、いくら収入があっても判定の対象外だからです21。
  • 次に、補足給付は「世帯全員が非課税」という条件を満たさなくなるため、原則として対象から外れます22。親自身の介護保険料の段階も、上がる方向に動きます。
  • 一方、介護サービスの負担割合は1割のままです。親本人の合計所得金額が160万円未満なら、第1段階で1割に確定するためです23。

つまり、同居で変わるのは主に「月の自己負担の上限額」と「ショートステイなどの食費・滞在費の軽減」であって、デイサービスや訪問介護を1回使うごとの負担割合ではありません。

制度ごとに影響の出方が違うため、「同居すると必ずすべての介護費用が高くなる」とも「同居しても何も変わらない」とも言えないのが実際のところです。そして、こうした負担増が起きるかどうかの多くは住民票上の世帯をどう登録するかに左右され、その登録は同居を始めるときに自分たちで選べます。

住民票の世帯をどうするか|これから同居する人と、すでに同居している人

これから同居する人と、すでに同居している人で分かれる住民票の世帯の手続きを示したフローチャート

「世帯分離」と聞くと、一つになっている世帯を分け直す手続きを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、これから同居を始めるなら、最初から別の世帯のまま同居するという選び方ができます。

これから同居する人は、転入届の時点で選べる

親を呼び寄せて転入届を出すときは、親を世帯主とする別の世帯として届け出られます。同じ住所に複数の世帯があることは、住民基本台帳の制度上認められているためです24。

最初に同じ世帯にしてしまうと、あとから分ける二度手間になります。しかも、介護保険や医療保険の負担区分の多くは月初や年度の基準日で判定されるため、あとで分けても、さかのぼって取り戻せるとは限りません。

ただし、別の世帯として届け出るには、「同居はしているが、生計はそれぞれ独立している」という実態が必要です。窓口が見ているのはその事実で、住所だけでは判断されません。

呼び寄せにかかる費用の全体像は、親の呼び寄せ費用は4つに分かれる|同居・近居の違いと転入後14日の手続きで、引越しや家財の処分、住所を移したあとの保険料まで含めて整理しています。

すでに同居している人は世帯変更届

すでに同じ世帯になっている場合は、市区町村の窓口に「世帯変更届」を出します。住民基本台帳法にもとづく手続きで、変更があった日から14日以内に届け出ます25。

届出の手数料は、通常かかりません。本人確認書類のほか、介護保険被保険者証や健康保険証の提示を求める自治体もあります。

届出が受理されれば、原則としてその日から住民票に反映されます。ただし、介護保険の負担区分に何月の利用分から反映されるかは別なので、市区町村の介護保険担当の窓口で確認しておくのが確実です。

なお、住民基本台帳法は「世帯」を細かく定義していません。実務では「居住と生計をともにする社会生活上の単位」という解釈が使われており、窓口で聞かれることや求められる資料に自治体ごとの差が出るのはこのためです。

そして、「介護保険の負担を軽くしたい」という動機だけでは、生計が別であることの根拠になりません。食費や日用品費を別々に管理しているか、光熱費の分担のルールがあるかなど、家計が独立している実態を説明できることが前提です。実態と異なる届出はできません。

世帯を分ける前に確かめる四つのこと

世帯を分ければ必ず家計が楽になるわけではありません。介護保険の負担が軽くなる一方で、国民健康保険料が増えたり、使えていた制度が使えなくなったりして、全体の負担がかえって増える場合もあります。事前に確かめたいのは次の四つです。

国民健康保険の「平等割」が二重にかかる

国民健康保険料には、所得に応じてかかる部分のほかに、1世帯あたり定額でかかる「平等割」があります。自営業などで子どもも親も国民健康保険に加入している場合、世帯を二つに分けると、この平等割がそれぞれの世帯にかかります。

たとえば京都府宇治市の2026年度は、医療分22,700円、後期高齢者支援分7,000円、子ども支援分700円の合計30,400円が1世帯あたりの年額です26。双方の世帯に40〜64歳の国保加入者がいれば、介護分6,000円が加わります27。

ただし、親が75歳以上なら、この心配はありません。後期高齢者医療制度に移っているため、親の側に国保の平等割は生じないからです。世帯分離の損得は、親が75歳未満か以上かで構図が大きく変わります。

高額医療・高額介護合算療養費が分断される

毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間に支払った医療保険と介護保険の自己負担を合算し、上限額を超えた分が払い戻される制度です28。

この合算は同じ医療保険に加入している世帯が単位なので、同じ国保どうし、同じ後期高齢者医療どうしの家族が住民票上で別の世帯になると、医療費と介護費を合算できず、払い戻しが減る場合があります。

子どもの健康保険の被扶養者から外れる可能性がある

健康保険法では、父母などの直系尊属を被扶養者にする場合、同居していることは要件とされていません29。判断の核心は、主に子どもの収入によって生計を維持されているかどうかです。

そのため、住民票の世帯を分けただけで、自動的に被扶養者から外れるわけではありません。ただし、健康保険組合によっては別居扱いとして継続的な送金の証明などを求めることがあるため、勤務先の健康保険組合や人事・総務に事前に確認しておくのが安全です。

税の扶養控除は、住民票を分けても自動的には外れない

所得税や住民税の扶養控除で見るのは「生計を一にしている」かどうかという実態で、住民票の世帯が同じかどうかではありません30。

70歳以上の親を扶養する場合の控除額は、同居老親等以外の老人扶養親族が48万円、同居老親等が58万円です(所得税、2026年4月1日現在)31。住民票上の世帯分離と扶養控除は両立しえますが、生活の実態や送金の状況によって判断が分かれることもあるため、税務署や税理士に確認しておくと安心です。

決め方

判断するときは、次の6つを並べて、同じ世帯と別の世帯の両方を比べてみましょう。

  • 高額介護サービス費の上限額(市区町村の介護保険課)
  • 第1号被保険者の介護保険料の段階(同上)
  • 国民健康保険料または後期高齢者医療の保険料(市区町村の国保年金課)
  • 高額医療・高額介護合算療養費(同上、または加入している健康保険)
  • 健康保険の被扶養者資格(勤務先の健康保険組合)
  • 所得税・住民税の扶養控除(税務署または税理士)

問い合わせ先が市区町村・勤務先の健康保険組合・税務署に分かれるので手間に感じるかもしれませんが、市区町村の窓口では、同じ世帯と別の世帯の両方で保険料や負担額の試算を頼めます。転入届の前に相談しておけば、手続きをやり直す手間を防げます。

同居開始日から逆算する準備

同居開始日から逆算して、相談・要介護認定の申請・工事の着工判断・転入届・勤務先への申し出を並べたタイムライン

同居介護の準備では、「要介護認定と介護サービスの手配」「住まいの整備」「役所や勤務先での手続き」の三つが同時に進みます。とくに要介護認定には日数がかかるため、同居を始めたい日から逆算して動かないと間に合いません。

6か月前から3か月前

この時期にまず取り組みたいのは、要介護認定の申請と、相談先の確保です。

最初に、親が住んでいる、または転居先の市区町村の地域包括支援センターに相談しましょう。地域包括支援センターには、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)を置くことが原則とされており32、相談は無料です。要介護認定の申請からサービスの使い方まで、ここが相談の入口です。

要介護認定の結果は、原則として申請から30日以内に出ます33。市区町村の調査員による認定調査と主治医意見書の両方がそろってから審査に進むため、かかりつけ医への連絡も早めに済ませておきます。

認定の結果が出るまでは、介護保険で使えるサービスの量が確定しないため、ケアプラン(介護サービス計画)も本決まりになりません。引越しの準備と並行して早めに申請しておくと、段取りが楽になります。

介護の準備全体の流れは、【保存版】介護準備チェックリスト|いつから何を始める?に、領域別のチェックリストとしてまとめています。

1か月前から同居開始まで

同居直前の1か月は、暮らしを左右する決定が重なります。とくに住民票の世帯と住まいの形は、この時期に確定します。

親が引っ越してきたら、転入した日から14日以内に転入届を出し、このときに親を同じ世帯にするか、別の世帯にするかを決めます。判断の材料は「決め方」で挙げた6つの項目です。

前の市区町村で要介護認定を受けている親を呼び寄せる場合は、前の市区町村から、認定の内容を証明する書面(受給資格証明書)を受け取っておきます。

転入先で資格を取得した日から14日以内にこの書面を添えて申請すると、認定審査会の審査を経ずに、書面の内容に即した認定を受けられます34。前の要介護度を引き継げるしくみです。

住まいの工事は、手すりの取り付けや段差の解消といった小さなものなら数日で終わります。一方、母屋の間取りを変えるリフォームや別棟の設置は数週間から数か月かかるため、大きな工事を考えている場合は、この時期を待たず、要介護認定の結果が出る前から着工の判断を進めておく必要があります。

さらに、働いている方は勤務先への申し出も必要です。介護休業は、原則として休業開始予定日の2週間前までに申し出ます35。

家族で決める三つの金額

手続きと並行して、感情的になりやすい役割分担を決める前に、家族でまず「三つの金額」を決めておきます。

  1. 親が毎月いくら出すか
    年金振込通知書で確かめた手取り額から、親自身が自由に使うお金と、定期的な通院などの医療費を残した額が、家計に入れられる上限になります。
  2. 子世帯が毎月いくらまで出すか
    「親のためだから」と際限なく持ち出すと、子世帯の暮らしや教育費、自分たちの将来への備えが立ち行かなくなります。上限を超えそうになったときが、サービスの組み替えや住まい方を見直す合図です。
  3. 外部サービスにいくら使うか
    デイサービスやショートステイ、ホームヘルパーの利用料を、削れない固定費として先に確保しておきます。

金額を先に合意しておくと、話し合いが「誰がどれだけ我慢するか」というぶつかり合いから、「決めた予算をどう配分するか」という相談に変わります。

きょうだいがいる場合は、費用の分け方と、付き添いなどの実際の手間をどう扱うかも決めておきます。手取り収入の比率で費用を分ける、通院の付き添いや夜間の対応を金額に換算して精算に反映する、といった方法があります。

介護費用で兄弟と揉めたくない人へ|負担割合と役割分担のコツでは、家族間のトラブルを防ぐための合意書に入れる項目まで整理しています。

住環境をどう整えるか|三つの選択肢を並べて比べる

介護保険の住宅改修・母屋の本格リフォーム・庭に設置する介護専用ハウスを、費用・工期・プライバシー・将来の扱いで比べた表

同居に向けた住まいの整え方は、大きく分けて「介護保険を使った住宅改修」「母屋の本格的なリフォーム」「庭などの敷地に設置する介護専用ハウス(別棟)」の三つです。費用の桁も工事の規模も違うため、どこまで整えるかを先に見極めると迷いが減ります。

介護保険の住宅改修は20万円で終わらない

介護保険には、自宅のバリアフリー改修を支える「住宅改修費の支給」があります。支給限度基準額は原則として1人20万円で、所得に応じて1割から3割の自己負担があるため、実際の支給額(保険給付)は18万円・16万円・14万円のいずれかになります36。

対象になる工事は、次の6種類に限られています37。

  • 手すりの取り付け
  • 段差の解消
  • 滑りの防止や移動を円滑にするための床材の変更
  • 引き戸などへの扉の取り替え
  • 洋式便器などへの便器の取り替え
  • これらの工事に付帯して必要になる改修

見落とされやすいのは、20万円の枠が一生に一度きりではないことです。要介護状態区分が3段階以上重くなった場合と、別の住宅に転居した場合には、あらためて20万円までの枠が設定されます38。

親を呼び寄せて子どもの家で同居を始める場合はこの「転居」にあたるため、実家で改修に使った実績があっても、新しい住まいであらためて利用できます。

自治体独自の助成は市区町村差が大きい

介護保険とは別に、市区町村が独自の助成制度を設けていることもあります。たとえば大阪市には、介護保険の対象にならない関連工事の費用に給付する「高齢者住宅改修費給付事業」があります39。

こうした制度の有無や名前、助成の上限額は市区町村によって大きく違うため、同居先の市区町村の高齢福祉の窓口に確認してみてください。

なお、介護保険の地域支援事業には「福祉用具・住宅改修支援事業」という項目があり、令和5年4月1日現在で843保険者、全体の53.7%が実施しています40。前年度の905保険者(57.6%)からは減っています41。

ただし、この事業の中身は、助言・相談・情報提供が494保険者、住宅改修が必要な理由書の作成の委託や助成が723保険者です42。工事費そのものに上乗せする助成とは性質が違うため、混同しないよう注意が必要です。

三つの選択肢を並べる

三つの選択肢の特徴を比べると、次の表のようになります。

観点介護保険の住宅改修母屋の本格リフォーム庭に設置する介護専用ハウス(別棟)
初期費用上限20万円+自治体の助成数十万円〜数百万円数百万円〜
工期・手間数日〜2週間程度数週間〜数か月基礎工事のあと短期で設置
プライバシー母屋のまま変わらない間取りしだいで改善できる建物が分かれるため確保しやすい
母屋への影響最小限生活しながらの工事は負担が大きい母屋に手を入れない
将来の扱い原状回復は自費資産として残る/解体費がかかる買取制度のある商品がある
設置条件持ち家・賃貸とも可(賃貸は所有者の承諾)持ち家敷地の広さ・搬入経路・建築確認が必要

親の要介護度が比較的軽く、手すりや段差の解消など部分的な改修で暮らせるなら、まずは介護保険の住宅改修を使うのが手軽で現実的です。

一方、車椅子に合わせて間取りを変える必要がある場合や、長い同居を前提にする場合は、母屋のリフォームが候補です。さらに、「母屋の間取りや動線を変えたくない」「生活のリズムが違うので距離を保ちたい」という場合は、庭に建てる別棟が有力な選択肢になります。

リフォームの費用相場や補助金・減税は介護リフォームの費用と補助金|4制度の使い方と申請の順序で、庭に離れを建てる場合の費用と法規は【2026年版】庭に離れを増築する費用|3工法×広さ別の総額と注意点で整理しています。
施設への入居も含めて広く比べたい場合は、高齢者向け住宅の種類と費用|8種類を3分類で比較【2026年版】も参考になります。

別棟の仕様と、向かないケース

当社(株式会社アイデア)が製造している介護専用ハウス「シニアリビング」は、1ユニットが6.0m×2.4mで、駐車場1台分より少し大きい寸法です。

単棟でも介護用ベッドに加えて洗面台や簡易トイレを置け、2連棟なら浴室や来客スペースも設けられます。3棟・4棟と連結すれば、平屋住宅に相当する広さにもできます。

工場で室内まで仕上げてクレーン付きのトラックで設置するため、母屋が工事で長く使えなくなる心配がありません。給排水を接続すればトイレや浴室も使えます。断熱性能を高くしているのは、冬の温度差による体への負担を抑えるためです。

さらに、介護の役目を終えたあとは買取にも対応しており、従来の建築物で必要になる解体や撤去の費用がかかりません。

その一方で、別棟が向かないケースもはっきりしています。

  • 敷地に必要な広さがない、または設置場所まで搬入する経路を確保できない場合
  • マンションなど、そもそも設置する庭や敷地がない場合
  • たん吸引や在宅酸素など、医療的な処置が常に必要な状態にある場合
  • 親自身が、母屋から離れて別棟で寝起きすることに強い不安や抵抗を感じている場合

また、別棟の設置は建ぺい率・容積率や用途地域の制限を受け、規模や地域によっては建築確認の申請が必要になります。敷地に設置できるかどうかは、市区町村の建築指導課に確認してください。

仕事を続けるための制度|2025年4月に会社側の義務が増えた

2025年4月に施行された会社側の五つの義務と、労働者が使える両立支援制度を上下に並べた図解

親の介護を理由に仕事を辞めた人は、2022年10月からの1年間で約10.6万人にのぼりました43。こうした介護離職を防ぐため、育児・介護休業法が改正され、2025年4月1日から会社側に新しい義務が課されています。

2025年4月に変わった五つのこと

介護に関する改正は、すべて2025年4月1日に施行されました44。

  1. 介護休暇を取れる人が広がった。
    労使協定で「勤続6か月未満」の労働者を対象から外せるしくみが廃止され、入社直後でも取れるようになりました。
  2. 申し出た人への個別周知・意向確認が義務になった。
    家族の介護に直面したことを労働者が申し出たとき、会社は利用できる制度の内容や申出先、介護休業給付金について個別に知らせ、利用の意向を確認しなければなりません。
  3. 40歳前後での情報提供が義務になった。
    介護保険の第2号被保険者になる40歳に達する日の属する年度、または40歳の誕生日から1年間のいずれかの期間に、会社から介護休業などの制度の情報が提供されます。
  4. 両立しやすい職場環境の整備が義務になった。
    研修の実施、相談窓口の設置、自社の両立事例の収集・提供、制度の利用を促す方針の周知のうち、いずれか一つ以上を行うことが会社に求められます。
  5. 介護のためのテレワークが努力義務になった。
    要介護状態の家族を介護する労働者がテレワークを選べるよう、措置を講じるよう努めることが会社に求められます。

この五つのうち、テレワークだけが「努力義務」で、残りの四つは「義務」です。これまで従業員から言い出しにくかった介護の両立支援について、会社の側から案内するしくみに変わりました。40歳前後で案内を受けたら、その機会に勤務先の制度を確かめておくと安心です。

なお、同じ改正で2025年10月1日に施行された部分は、3歳から小学校入学前の子どもを育てる労働者への支援が中心で、介護に関する新しい項目は含まれていません45。

介護休業以外にも使えるものがある

介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できます。休業中は、雇用保険から賃金の67%にあたる介護休業給付金が支給されます46。

ただし、この93日は、家族が自分でつきっきりの介護をするための期間ではなく、仕事を続けながら介護できる体制を整えるための期間として設計されており47、介護保険の手続きやケアプランの調整に充てることが想定されています。

日々の通院の付き添いや急な対応には、介護休業とは別に、次のような制度48が用意されています。

  • 介護休暇:年5日(対象家族が2人以上なら年10日)まで、時間単位で取得できます
  • 所定外労働の免除:請求すれば残業が免除され、介護が終わるまで何回でも請求できます
  • 時間外労働の制限:時間外労働を、月24時間・年150時間までに制限できます
  • 深夜業の制限:午後10時から午前5時までの深夜の勤務を制限できます
  • 短時間勤務等の措置:3年以上の期間内に2回以上、短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護費用の援助のいずれかを利用できます

制度を使うための要件や提出書類は、介護休業給付金はいくら?支給額・受給条件・手続きを2026年版で解説にまとめています。

外部サービスの費用を、失う収入と並べる

デイサービスやショートステイを使うことに、「親の世話を他人に任せてしまうようで申し訳ない」と罪悪感を抱く方は少なくありません。とくに同じ屋根の下で暮らしていると、「そばにいるのだから、できるだけ自分で」という気持ちが強く働きがちです。

しかし、家計の判断として比べるべきものは二つあります。外部サービスに払う毎月の費用と、介護のために時短勤務や離職を選んだときに失う収入です。

失う収入には、目の前の給与に加えて、昇給や賞与の機会、将来受け取る年金の減少も含まれます。数年単位で見れば、それが月数万円のサービス費用を上回ることは珍しくありません。

この比較をしておくと、外部サービスを使うことは「我慢の問題」から「予算配分の問題」に変わります。罪悪感に流されずに、金額と事実をもとに判断できるようになります。

続けるための運用|家計と体制を毎月まわす

専用口座の確認から切り替え条件の点検までを毎月1周する運用サイクルを示した循環図

準備を整えて同居を始めても、暮らし始めてから家計や家族関係が崩れることがあります。その多くは、「お金の出入りの把握」と「介護体制の見直し」という毎月の作業が止まったときに起こります。

同居介護を長く続けるには、気合いに頼るより、毎月無理なく回る仕組みをつくっておくほうが確実です。

お金の置き場所を一つにする

まず取り組みたいのが、親の年金の入金と介護にかかる支払いを、介護専用の口座一つにまとめることです。子世帯の生活費と親の介護費が同じ口座で混ざると、毎月いくら介護にかかっているのかが見えなくなるためです。

そのうえで、月に一度、決まった日にその口座の入出金を確認し、親の口座から出た額と、子世帯から出た額の内訳を記録しておきます。

この記録が手元にあれば、きょうだいと介護の話をするときも、「今月は親の年金からこれだけ、自分たちからこれだけ出している」と事実をもとに共有できます。記録がないまま記憶に頼って話すと、「自分ばかりが大変な思いをしている」という感情的なすれ違いにつながりがちです。

レスパイトを予算に入れる

ショートステイやデイサービスには、親のリハビリや人との交流の場になるほかに、介護する家族が介護から一時的に離れて、心身を休める時間をつくるという役目もあります。これをレスパイトと呼びます。

在宅介護を無理なく続けるには、このレスパイトを最初から毎月の固定費として予算に組み込んでおくことが大切です。「余裕があれば使う」という位置づけにすると、疲れがたまって休みが必要な月ほど、手配する余力がなくて使えなくなるからです。

介護保険で使えるサービスの量には要介護度ごとに上限があるので、その枠のなかに、ショートステイや追加のデイサービスの分をあらかじめ確保しておきます。上限を超えた分は全額が自己負担になるので、月の途中で使い切らないよう、ケアマネジャーと配分を相談しておくと安心です。

同居ならではの距離をつくる

同居介護の難しさは、物理的に離れられないところにあります。厚生労働省の調査によると、主な介護者が要介護者と同居している割合は45.9%で、主な続柄は配偶者が22.9%、子が16.2%、子の配偶者が5.4%です49。

同じ家のなかでも、決めごとをつくれば距離は保てます。お互いの居室を分ける、夜は干渉しない時間帯を決める、来客のときの対応を決めておく、といったことを書き出して家族で共有しておけば、そのつど気をつかったり話し合ったりする負担が減ります。

また、本人が望んでいない介助や、自分でできることまで先回りして手を出すことにも注意が必要です。できることを取り上げてしまうと、本人の意欲が下がり、身体機能の低下を早めることがあるためです。

そして、介護する側の家族にも、一人になれる時間と場所が必要です。母屋の間取りや広さの都合でそれを確保しきれない場合は、住まいの形そのものを変える選択肢もあります。

切り替える条件を先に決める

在宅介護を続けられなくなる日は、ある日突然やってくるわけではありません。夜間のトイレの介助が増えて細切れにしか眠れなくなる、睡眠不足で仕事に支障が出る、急な通院の付き添いで仕事を休む日が増える。こうした小さな負担が少しずつ積み重なるので、その渦中にいると、切り替えどきに気づきにくいものです。

だからこそ、同居を始める時点で、「どんな状態になったら体制を切り替えるか」という条件を家族で決めておくことが大切です。たとえば、次のような指標です。

  • 夜間の介助が週3回を超える状態が2週間続いた。
  • 主な介護者の睡眠が6時間を下回る日が続いている。
  • 介護を理由に仕事を休む日が月2日を超えた。
  • 家のなかでの親の転倒が月に1回以上起きている。
  • ケアマネジャーから、在宅での継続は難しいと言われた。

これらの数字はあくまで目安で、公的に定められた基準ではありません。家庭の事情や体力、働き方に合わせて書き換えて構いません。

あわせて、条件に達したときに何をするかまで決めておきます。ショートステイの日数を増やす、住まいの形を変える、施設への申し込みを始める、といった次の一手です。「やめる」ではなく「切り替える」と決めておけば、罪悪感で判断が遅れるのを防げます。

よくある質問

Q
同居すると、親の介護費用は上がりますか?
A

上がることがあります。高額介護サービス費の上限額、施設やショートステイの食費・居住費を軽くする補足給付、介護保険料の段階は、住民票の世帯の課税状況で判定されるためです。親が非課税で子が課税されている場合、上限額は月24,600円から44,400円に上がります。一方、1割・2割・3割の負担割合は親本人の所得が起点なので、40〜64歳の子の収入では変わりません。

Q
住民票の世帯は分けたほうがいいですか?
A

家庭の条件によって答えが変わります。世帯を分けて親の世帯が全員非課税になれば、介護保険の上限額が下がったり、施設やショートステイの食費・居住費の軽減(補足給付)を受けられたりします。ただし、世帯ごとに定額でかかる国民健康保険の平等割が二重にかかる、医療と介護の自己負担を合算できなくなるなど、逆に負担が増える場合もあります。転入届を出す前に、市区町村の窓口で両方の試算を頼むのが確実です。

Q
同居介護は月にいくらかかりますか?
A

在宅で介護した世帯の月額平均は5.3万円です(生命保険文化センター2024年度調査)。ただし、これは介護サービスの自己負担の数字で、親の生活費は別に必要です。65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月148,445円です(総務省 家計調査2025年平均)。同居すれば住居費や光熱費の基本料金は重なりませんが、食費・医療費・日用品費・通院の交通費は人数分増えます。

Q
親の年金だけで足りますか?
A

年金の種類によって大きく変わります。2024年度末の平均月額は、厚生年金(受給資格期間25年以上、基礎年金を含む)が151,142円、国民年金が59,431円です。厚生年金なら単身世帯の生活費とほぼ釣り合いますが、介護費が月5.3万円加わると、毎月5万円ほど足りなくなります。国民年金だけなら、生活費の段階ですでに月9万円ほど不足します。

Q
仕事を辞めずに続けられますか?
A

2025年4月の法改正で会社側の義務が増え、以前より続けやすくなっています。介護に直面したことを申し出れば、会社から制度の個別周知と意向確認があります。介護休業(通算93日まで、3回まで分割、給付は賃金の67%)は介護の体制を整えるための期間なので、日々の対応には介護休暇や残業の免除、短時間勤務、テレワークなどを組み合わせます。

まとめ|最初に決めるのは、間取りではなく世帯

同居介護の家計は、介護サービスの自己負担だけを見ていても全体がつかめません。親の日々の生活費と、はじめに一度だけかかる費用を合わせた三つの層を並べて、ようやく現実的な見通しが立ちます。

そしてもう一つ忘れてはならないのが、同居では出費が増えるうえに、親が受けていた給付や負担の軽減が減ることもある点です。その分かれ目が、住民票上の「世帯」の扱いです。

この記事のポイントを振り返ります。

Point
  • 家計は三つの層に分けて見ます。介護サービスの自己負担、親の日々の生活費、最初に一度だけかかる費用。混ぜずに書き出すと、どこを動かせばよいかが見えます。
  • 制度ごとに、判定の単位が違います。高額介護サービス費の上限額や、施設・ショートステイの食費・居住費の軽減(補足給付)は世帯の課税状況で判定され、負担割合(1割〜3割)は親本人の所得で判定されます。「同居すればすべて合算されて損をする」「世帯を分ければすべて安くなる」とは限りません。
  • 住民票の世帯は、同居を始めるときに選べます。転入届の時点で親を別の世帯にしておけば、あとから分け直す手間がかかりません。ただし、生計が別である実態が前提です。
  • 世帯を分けたほうが不利になる場合もあります。国民健康保険の平等割、医療と介護の合算、健康保険の被扶養者。介護保険以外の制度への影響も確かめてから決めます。
  • 役割分担の前に、三つの金額を決めます。親が家計に入れる額、子世帯が出せる上限、外部サービスの予算。数字を先に決めておくと、話し合いが我慢比べになるのを防げます。

もし今日から動き出すなら、まずは親と一緒に年金振込通知書を見て、手取り額を確かめること。そして、これから転入の手続きをする場合は、市区町村の窓口で「同じ世帯にした場合」と「別の世帯にした場合」の両方の試算を頼むこと。この二つから始めてみてください。

また、住まいや家族の距離感で行き詰まったときは、母屋のリフォームのほかに、庭に介護専用の別棟を設ける方法もあります。母屋の間取りを変えずに、距離を保ちながらすぐそばで見守れます。

ただし、敷地の広さと搬入経路が必要で、たん吸引や在宅酸素のように医療的な処置が常に必要な状態には向きません。仕様や設置の条件は、シニアリビングの「距離を保つ介護」のページにまとめています。

お金や制度の数字が並ぶと、気が重くなるかもしれません。それでも、家計の全体像と選択肢が数字で見えていれば、漠然とした不安に振り回されずに、次の一歩を決められるはずです。

脚注

  1. 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」(2025). https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r6/2024honshiall.pdf ↩︎
  2. 生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」(2024年度調査). https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html ↩︎
  3. 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」(2025). https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r6/2024honshiall.pdf ↩︎
  4. 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」(2025). https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r6/2024honshiall.pdf ↩︎
  5. 広島市「サービスの支給限度額」(2025). https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/fukushi-kaigo/1014902/1006001/1025727/1025730/1011386.html ↩︎
  6. 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」(2026). https://www.stat.go.jp/data/kakei/2025np/pdf/summary.pdf ↩︎
  7. 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」(2025). https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r6/2024honshiall.pdf ↩︎
  8. 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」(2025). https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r6/2024honshiall.pdf ↩︎
  9. 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2025). https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/nenpou/2008/dl/gaiyou_r06.pdf ↩︎
  10. 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」(2025). https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r6/2024honshiall.pdf ↩︎
  11. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1390『介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて』の一部改正について」(2025). https://www.mhlw.go.jp/content/001499328.pdf ↩︎
  12. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1390『介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて』の一部改正について」(2025). https://www.mhlw.go.jp/content/001499328.pdf ↩︎
  13. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1506 令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について」(2026). https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0602085932175/ksvol.1506.pdf ↩︎
  14. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1506 令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について」(2026). https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0602085932175/ksvol.1506.pdf ↩︎
  15. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1506 令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について」(2026). https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0602085932175/ksvol.1506.pdf ↩︎
  16. e-Gov法令検索「介護保険法」(1997)第27条第11項・第36条・第129条第2項/「介護保険法施行規則」(1999)第140条の66. https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123/https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036 ↩︎
  17. 東京都後期高齢者医療広域連合「保険料の決め方」(2026). https://www.tokyo-ikiiki.net/seido/1001968/1001975/index.html ↩︎
  18. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1390『介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて』の一部改正について」(2025). https://www.mhlw.go.jp/content/001499328.pdf ↩︎
  19. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1390『介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて』の一部改正について」(2025). https://www.mhlw.go.jp/content/001499328.pdf ↩︎
  20. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1390『介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて』の一部改正について」(2025). https://www.mhlw.go.jp/content/001499328.pdf ↩︎
  21. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1390『介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて』の一部改正について」(2025). https://www.mhlw.go.jp/content/001499328.pdf ↩︎
  22. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1506 令和8年8月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し等に係る周知への協力依頼について」(2026). https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0602085932175/ksvol.1506.pdf ↩︎
  23. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1390『介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて』の一部改正について」(2025). https://www.mhlw.go.jp/content/001499328.pdf ↩︎
  24. e-Gov法令検索「住民基本台帳法」(1967)第25条. https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000081 ↩︎
  25. e-Gov法令検索「住民基本台帳法」(1967)第25条. https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000081 ↩︎
  26. 宇治市「国民健康保険料の決め方」(2026). https://www.city.uji.kyoto.jp/soshiki/40/83857.html ↩︎
  27. 宇治市「国民健康保険料の決め方」(2026). https://www.city.uji.kyoto.jp/soshiki/40/83857.html ↩︎
  28. 厚生労働省「高額介護合算療養費制度」. https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-29.html ↩︎
  29. e-Gov法令検索「健康保険法」(1922)第3条第7項. https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 ↩︎
  30. 国税庁「No.1180 扶養控除」(2026年4月1日現在). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm ↩︎
  31. 国税庁「No.1180 扶養控除」(2026年4月1日現在). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm ↩︎
  32. e-Gov法令検索「介護保険法」(1997)第27条第11項・第36条・第129条第2項/「介護保険法施行規則」(1999)第140条の66. https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123/https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036 ↩︎
  33. e-Gov法令検索「介護保険法」(1997)第27条第11項・第36条・第129条第2項/「介護保険法施行規則」(1999)第140条の66. https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123/https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036 ↩︎
  34. e-Gov法令検索「介護保険法」(1997)第27条第11項・第36条・第129条第2項/「介護保険法施行規則」(1999)第140条の66. https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123/https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036 ↩︎
  35. 厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課「令和6年育児・介護休業法改正について【介護関係を中心に】」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001435348.pdf ↩︎
  36. 横浜市「介護保険の住宅改修費について」(2026). https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/kaigo-hoken/kaishuhi/juukai.html ↩︎
  37. 横浜市「介護保険の住宅改修費について」(2026). https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/kaigo-hoken/kaishuhi/juukai.html ↩︎
  38. 横浜市「介護保険の住宅改修費について」(2026). https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/kaigo-hoken/kaishuhi/juukai.html ↩︎
  39. 大阪市「高齢者住宅改修費給付事業」(2026). https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000630443.html ↩︎
  40. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1314 令和5年度介護保険事務調査の集計結果について」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/001309789.pdf ↩︎
  41. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1314 令和5年度介護保険事務調査の集計結果について」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/001309789.pdf ↩︎
  42. 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1314 令和5年度介護保険事務調査の集計結果について」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/001309789.pdf ↩︎
  43. 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」(2023). https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf ↩︎
  44. 厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課「令和6年育児・介護休業法改正について【介護関係を中心に】」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001435348.pdf ↩︎
  45. 厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課「令和6年育児・介護休業法改正について【介護関係を中心に】」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001435348.pdf ↩︎
  46. 厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課「令和6年育児・介護休業法改正について【介護関係を中心に】」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001435348.pdf ↩︎
  47. 厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課「令和6年育児・介護休業法改正について【介護関係を中心に】」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001435348.pdf ↩︎
  48. 厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課「令和6年育児・介護休業法改正について【介護関係を中心に】」(2024). https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001435348.pdf ↩︎
  49. 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況」(2023). https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/05.pdf ↩︎