自治体のリフォーム補助金|調べ方3段階と窓口で聞く7項目

日本地図の中から1つの市区町村を虫めがねで拡大し、住まいの改修制度を探す図 リフォーム・補助金

親が暮らす実家のバリアフリー改修を見積もってもらったら、介護保険の20万円の枠ではとても足りない。そんな悩みに直面する方は少なくありません。市区町村が独自の助成を出していると聞いても、親が住む街にそうした制度があるのかどうかは、すぐには分かりません。

役所に問い合わせて確かめたいと思いつつも、どの課にかければいいのか、何を聞けばいいのかが見当もつかず、つい後回しになっていないでしょうか。そうして迷っているうちに、業者とのあいだで工事の日程だけが先に決まっていくことがあります。

実は、自治体の助成で取り返しがつかなくなるのは、制度を知らなかったときよりも、工事が始まってから制度を知ったときです。助成には踏むべき順序があり、それを外すと、要件に当てはまっていても受け取れなくなります。

裏を返せば、順序さえ守れば防げる取りこぼしがあります。親が住む街に制度があるかの調べ方も、最初の電話で確かめることも、押さえるべき段取りはあらかじめ決まっています。

この記事でわかること
  • 工事を始めてよいタイミング(申請書を出しただけでは着工できない制度があります)
  • 親が住む自治体に助成があるかを調べる、3段階の手順
  • 担当窓口の見つけ方と、最初の電話で確かめる7つの項目
  • 申請書類を、本人・施工業者・ケアマネジャーなどでどう分担するか

その工事、いつから始められますか

相談、申請、決定の通知、着工の順に並んだ時間軸の図

工事を始めてよい日は、助成を出す自治体がそれぞれ定めています。たとえば大分県別府市の「在宅高齢者住宅改造助成事業」の案内には、「決定通知の到着前に着工した場合は、申請は無効になります」と書かれています1。

つまり別府市では、着工してよいかどうかの境目は、申請書を提出した日ではなく、市から決定通知が届いた日なのです。

「申請した日」と「決定通知が届いた日」は別ものです

同じ大分県の佐伯市でも、申請書を出したあとに職員が訪問調査をして可否を決め、その「工事可の通知(決定通知)が出てから、工事を開始します」と案内しています2。現地の調査を挟むぶん決定までには時間がかかり、佐伯市の案内ではおよそ1〜2か月です3。

そのため、申請書を出した翌週には工事を始められるつもりで業者と日程を組んでしまうと、この1〜2か月がまるごと抜け落ちます。

東京都北区の案内にも、「工事着工前の申請が必要です。着工後の申請は無効です。決定通知書が到着してから工事を開始してください」と明記されています4。

もちろん、すべての自治体が決定通知の到着を待つ決まりにしているわけではありません。しかし、別府市、佐伯市、北区の3区市で同じ扱いが確認できる以上、自分が使う制度がどちらなのかは、業者と着工日を決める前に確かめておく必要があります。

着工後の申請を受け付けない自治体は、珍しくありません

たとえば神奈川県川崎市の「高齢者住宅改造費助成事業」では、事業案内のすぐ横に「必ず事前に御相談ください。(工事着手後に申請された場合は、助成を受けることができません。)」という注意書きが添えられています5。

また熊本市は「助成金の交付を受けるためには、事前申請が必要です」と明記し6、静岡県浜松市も着工前に窓口へ問い合わせるよう案内しています7。助成の中身は地域ごとに違っても、着工前という条件だけは揃っています。

実際、調べた範囲では、着工したあとの申請を受け付けると明記している自治体は見当たりませんでした。そのため、すでに工事を始めてしまった場合は、残念ながら、今回の工事で自治体の助成を受けるのは難しいと考えたほうが現実的です。

もっとも、介護のための住まいの手直しは時期をずらして続くことが多いので、次の工事から、業者へ連絡する前に窓口へ電話する順序に切り替えれば間に合います。

介護保険の住宅改修とは、扱いが違います

介護保険の住宅改修費も、事前の申請が原則です。介護保険法施行規則は、住宅改修を行おうとするときに、支給を受ける本人があらかじめ申請書と必要書類を市町村へ提出するよう定めています8。

ただし介護保険には、やむを得ない事情がある場合に、住宅改修が完了したあとで申請書を提出できる例外が置かれています9。ここが、自治体独自の助成(介護保険とは別に市区町村が出す助成)と大きく違うところです。

そのため、「介護保険ではあとから事情を説明して認めてもらえた」という話を、自治体の助成にそのまま当てはめないようにしてください。なお、介護保険側の20万円の枠や対象になる工事の範囲は、介護保険のリフォーム上限は20万円|実例と活用法で詳しく解説しています。

自分の市区町村に制度があるかを調べる

検索サイト、自治体サイト、電話の順に絞り込む3段階の階段図

親が住む市区町村に独自の助成があるかどうかは、3段階で調べられます。まず全国の検索サイトで候補を洗い出し、次に自治体の公式サイトで裏を取り、それでも分からなければ電話で確定させる、という流れです。

なお、介護リフォームで使える公的支援の全体像(費用相場、介護保険、自治体の上乗せ・横出し、2つの減税)は、介護リフォームの費用と補助金|4制度の使い方と申請の順序にまとめています。

第1段階:全国の検索サイトで候補を拾う

最初に使いたいのが、一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会が運営する「地方公共団体における住宅リフォーム支援制度検索サイト」です10。都道府県を選ぶと、そこから市区町村ごとの制度を検索できます。

絞り込みの条件には、支援分類と支援方法の2つがあります。支援分類は耐震化・バリアフリー化・省エネルギー化・環境対策・防災対策・同居対応・その他の7つ、支援方法は補助・融資・利子補給・専門家等派遣・その他の5つです11。

介護のための改修を探すなら、支援分類は「バリアフリー化」、支援方法は「補助」を選びます。さらに、親を呼び寄せて同居する計画や、二世帯住宅に改める予定があるなら、「同居対応」でもう一度検索すると確実です。同居対応は介護専用の分類ではないので、別々に検索しないと見落とします。

ただし、このサイトで分かるのはあくまで制度の候補までです。サイト自身も「最新の情報については各地方公共団体にお問い合わせください」と明記しています12。掲載されていても今年度の受付が終わっている制度や、逆に掲載されていない制度もありうるので、ここで見つからなくても次の段階へ進みましょう。

第2段階:自治体の公式サイトで裏を取る

検索サイトで候補の制度名が見つかったら、その名称をそのまま自治体の公式サイトで検索します。そのとき確かめたいのは、ページの更新日、対象になる年度、今年度の受付状況の3点です。

制度名がうまく見つからないときは、次のように言葉を変えながら探してみてください(〇〇には市区町村名が入ります)。

  • 〇〇市 高齢者 住宅改造 助成
  • 〇〇市 高齢者 住宅改修 補助
  • 〇〇市 バリアフリー 改修 助成
  • 〇〇市 住環境 整備 高齢者
  • 〇〇市 自立支援 住宅改修

同じ趣旨の制度でも、自治体によって呼び名はさまざまです。「住宅改造」と呼ぶ自治体もあれば、「住宅改修」「住環境改善」「自立支援住宅改修」といった言葉を使う自治体もあるので、1つの言い方で見つからなくても、制度がないとは限りません。

また、年度の切り替わりで名称が変わることもあるため、出てきたページが前年度のものなら、同じサイト内で今年度の案内を探し直してみましょう。

第3段階:見つからなければ電話で確定させる

ネットで見つからなかったときに取れる道は、時間をかけて探し続けるか、電話で制度の有無を確かめるかの2つです。

実は、電話で「ない」と確定させることにも価値があります。制度がないとはっきり分かれば、介護保険の枠内でどうやりくりするか、所得税や固定資産税の減税でいくら取り戻せるか、という次の検討へすぐ移れるので、答えの出ない検索に時間を使わずに済みます。

かける先は、役所の代表電話で構いません。担当課が分からなくても、用件を伝えれば交換の担当者が所管の部署へつないでくれます。

窓口はどこか。一度の電話で何を聞くか

自治体の窓口に電話で確認する7つの項目のチェックリスト

自治体独自の助成(介護保険とは別に市区町村が出す助成)を担当する部署は、次のように自治体ごとに名前が揃っていません。

  • 東京都北区:福祉部 高齢福祉課(申請は高齢者あんしんセンター)13
  • 神奈川県川崎市:各区役所 高齢・障害課 高齢者支援担当14
  • 静岡県浜松市:中央福祉事業所 長寿支援課ほか15
  • 熊本県熊本市:各区役所 福祉課16
  • 大分県別府市:高齢者福祉課 高齢者福祉係17

同じ趣旨の制度でもこれだけ部署名が違うので、特定の課を探すより、代表電話にかけて用件を伝え、担当課へつないでもらうほうが早くたどり着けます。

介護保険の窓口と分かれている自治体があります

同じ役所の中でも、介護保険の住宅改修と自治体独自の助成とで、窓口が分かれていることがあります。たとえば東京都北区では、要支援・要介護と判定された人は、介護保険の住宅改修を介護保険課で申請し、浴槽や流し・洗面台の取り替えなどは、区の高齢福祉課の制度として高齢者あんしんセンターで申請します18。

担当が分かれている自治体では、介護保険の窓口に尋ねても、独自の助成について詳しく答えられるとは限りません。

ケアマネジャーや地域包括支援センターが入口の自治体もあります

役所の窓口のほかに、ケアマネジャーや地域包括支援センターを最初の相談先にしている自治体もあります。たとえば熊本市は事前相談の窓口として「各区役所の福祉課または地域包括支援センター(ささえりあ)」を挙げており19、大分県豊後大野市も、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターへ先に相談するよう案内しています20。

親にすでに担当のケアマネジャーがついているなら、まずそこに相談するのが近道です。地域の制度を日常的に扱っている専門職なので、助成の有無も書類の段取りも知っています。

まだ要介護認定を受けておらず担当者がいない場合は、親が住む地域の地域包括支援センターに相談してみましょう。

最初のひと言

代表電話にかけた場合でも、担当課に直接つながった場合でも、最初に伝える内容は同じです。長く説明する必要はなく、次のように切り出してみてください。

「高齢の親の住まいをバリアフリーに改修したいのですが、介護保険の住宅改修とは別に、市(区)独自の助成制度はありますか。」

このひと言で、担当部署に取り次いでもらえるか、制度がないと分かるかのどちらかになります。とくに「介護保険とは別に」と前置きしておくと、管轄の違う窓口へ何度も回される手間を減らせます。

つながったら、この7つを聞きます

担当者につながったら、次の7つをその場でまとめて確認しておくと、何度もかけ直さずに済みます。

  1. 制度の正式名称・・・あとで自治体のサイトを検索し直すときに使います
  2. 対象になる人の条件・・・年齢、要介護認定の要否、所得、住民票、持ち家か賃貸か
  3. 対象になる工事・・・手元の見積書のどの項目が当てはまるか
  4. 今年度の予算と受付状況・・・受け付けているか、予算が残っているか
  5. 申請の締切・・・受付終了日と、工事を完了させて実績報告を出す期限
  6. 必要な書類・・・誰が用意するものかもあわせて
  7. いつから工事を始めてよいか・・・申請書を出した時点か、自治体から交付決定の通知が届いてからか

このうち、聞き漏らすと最も取り返しがつかないのは7番目です。着工してよい日を確かめないまま業者と日程を決めてしまうと、助成そのものを受けられなくなるおそれがあるからです。

通話が終わったら、対応した担当者の氏名、部署名、電話した日付をメモに残しておきましょう。あとで業者や別の職員とのあいだで話が食い違ったときに、この記録が手がかりになります。

申請書類は、3者で分担して揃える

本人と家族、施工業者、ケアマネジャーや地域包括支援センターが分担して用意する申請書類の一覧

申請に必要な書類は自治体ごとに違いますが、熊本市、別府市、北区の案内を比べると、次の4点はほぼ共通して求められています21,22,23。

  • 自治体の様式による申請書
  • 工事の見積書(部位ごとの内訳が分かるもの)
  • 工事の内容を示す図面(現況と完成後)
  • 改修前の写真

このうち、本人や家族だけで用意できるのは申請書くらいで、見積書や図面、写真は施工業者に作ってもらうことになります。さらに制度によっては、ケアマネジャーなどの専門職が作る書類も加わります。

誰が何を用意するか

書類の準備は、本人・家族、施工業者、ケアマネジャーや地域包括支援センターの3者で分担して進めます。たとえば別府市は、本人が用意する書類と業者に依頼する書類を公式ページ上で分けて示しており24、この分け方は他の自治体にもおおむね当てはまると考えられます。

用意する人主な書類
本人・家族申請書、世帯全員の課税・納税証明、建物の登記事項証明、所有者が別ならその承諾書、振込先の口座
施工業者部位別の内訳がある見積書、現況と完成後の平面図、日付入りの改修前写真、製品のカタログ
ケアマネジャー・地域包括支援センター等改修が必要な理由、身体の状況や動作の評価にあたる調査票

3者が別々に書類を用意するので、すべてが揃うまでの時間は、準備がいちばん遅い1者に引きずられます。したがって、申請を決めたら3者に同時に依頼しておくのが確実です。

写真だけは、撮り直しがききません

見積書や図面は、不備があってもあとから作り直せます。しかし改修前の写真だけは、解体が始まると現場の様子が変わってしまうため、工事が始まった時点で二度と手に入らなくなります。

しかも写真には細かい条件があり、別府市は撮影日付を入れること、段差などにはスケール(定規・メジャー)を当てて撮ること、全景と改修箇所の両方を撮ることを指定しています25。北区も、改修前後で同一アングル・日付入りの写真を求めています26。

そのため、施工業者が初めて現地を見に来る日に、「助成の申請に使うので、指定どおりの写真を撮ってほしい」と頼んでおきましょう。

身体の状況に関する書類は、本人だけでは作れません

制度によっては、親の身体の状況や生活動作を評価した書類も求められます。たとえば熊本市は、設計図や施工前写真、見積書に加えて、「熊本市高齢者実態把握票」「高齢者・障害者住宅改造相談受付票」「日常生活動作能力調査表」の提出を求めています27。

この3つは、熊本市の案内でも地域包括支援センター(ささえりあ)の職員に作成してもらう書類とされています28。熊本市や豊後大野市が最初の相談先に地域包括支援センターやケアマネジャーを置いているのも、家族だけでは作れない書類が手続きに含まれているためと考えられます。

年度予算と締切から逆算する

4月から翌年3月までの年度の帯に、受付開始と年度内の工事完了期限、減っていく予算を示した図

自治体独自の助成(介護保険とは別に市区町村が出す助成)は、年度ごとの予算で運用されています。そのため、要件を満たしていても、その年度の受付が終わっていれば使えません。

予算に達した時点で締め切る制度があります

たとえば静岡県浜松市の案内には、「高齢者住宅改造費補助金が年度内に予算上限に到達した場合には、申請受付を終了します」と明記されています29。同じように、別府市は「予算の上限に達し次第、募集を締め切らせていただきます」30、豊後大野市は「予算がなくなり次第募集を中止します」としています31。

3市とも同じ趣旨で、確認できた自治体の多くは、年度の途中でも予算に達した時点で受付を終えます。助成の枠には早い者勝ちの側面があると考え、早めに動いたほうが安全です。

要件を満たしても、採択されるとは限りません

たとえば大分県佐伯市の注意事項には、「この事業は、大分県と市の予算内で行うため、応募多数の場合は、優先順位をつける等、必ず助成を受けられるものではありません」と書かれています32。

つまり、条件に当てはまれば誰でも自動的に交付される制度ばかりではありません。助成をあてにして資金計画を固める前に、先着順なのか、優先順位をつけて選ぶのかを窓口で確かめておきましょう。

年度のどこにいるかで、打てる手が変わります

受付の期間や工事の完了期限は、自治体の年度ごとの案内に示されています。たとえば別府市の令和8年度の案内では、受付の開始が5月12日で、工事の完了が2月中になりそうな場合は事前に相談するよう求めています33。

春から夏にかけての年度前半なら、予算が残っている可能性が高く、工期にも余裕を持てます。しかし秋から冬にかけて年度末が近づくほど、予算と工期の両方から選択肢が狭まります。秋以降に動き始めるなら、今から申請して今年度に間に合うかを、最初の電話で確かめてください。

退院日が決まっているなら、そこから逆算します

親の退院に合わせて改修するなら、申請から決定通知が届くまでの日数をつかみ、そこから逆算して段取りを組みます。佐伯市の案内では約1〜2か月ですが34、これは1つの市の例であって、全国の目安ではありません。決定までの日数を示していない自治体も多いため、親が住む市区町村の期間は窓口に聞くことになります。

それでも、この約1〜2か月という目安は、段取りの感覚をつかむのに使えます。たとえば決定まで1か月、工事に2週間かかると見込むなら、退院のかなり前から動き始めなければ間に合いません。

したがって、退院の日程が見えてくる病院の退院前カンファレンスのころには、自治体の窓口や地域包括支援センターへ連絡を入れておくと間に合いやすくなります。手すり1本の小さな工事でも、助成を使うなら準備期間が必要です。

業者に任せる部分と、自分で確かめる部分

施工業者に任せる作業と、制度名や業者の条件など自分で自治体に確かめる項目を左右に分けた図

リフォーム業者は工事の専門家ですが、補助金の制度に詳しいとは限りません。介護保険とは別に市区町村が出す助成は、地域ごとに名称も条件も違うので、地元の業者でも把握していないことがあります。

「制度がない」を業者の言葉で判断しない

そのため、業者から「この地域にはそんな助成金はありませんよ」と言われても、それだけで諦める必要はありません。担当者が制度を知らないだけかもしれませんし、手続きが煩わしいので触れていないだけかもしれません。

反対に「この工事なら補助金が使えますよ」と勧められたときも、制度の正式名称、申請窓口、締切は、自分で役所に確かめておきましょう。業者の伝聞をもとに着工日を決めると、交付決定の通知が届く前に工事が始まってしまうおそれがあるからです。

なお、訪問販売や点検商法への備えは、介護リフォームの費用と補助金|4制度の使い方と申請の順序の失敗パターンの項にまとめています。

業者の条件と支払いの方式も、契約前に確かめる

制度によっては、工事をする施工業者の側に条件がつきます。たとえば埼玉県加須市の「住宅改修等資金助成制度」は、市内の事業者が行う工事を対象とし、着工の2週間前までに申請するよう求めています35。ただし、この制度の所管は産業振興課(商工振興)で、高齢者向けの助成とは別枠です。

こうした条件に契約後に気づくと、別の業者で見積もりを取り直すことになります。

また、介護保険の住宅改修には、自治体が給付分を業者へ直接支払う受領委任払いという方式もありますが、自治体独自の助成がどの方式で支払われるかは制度ごとに違います。立て替える額も変わるので、業者の条件とあわせて、契約を結ぶ前に窓口で確かめておくと安心です。

対象から外れる条件を、先に確かめる

浜松市、佐伯市、川崎市、熊本市の助成が、年齢・認定・世帯・所得・工事の種類のどれで対象を区切っているかを並べたカード

介護保険とは別に市区町村が出す助成は、年齢、要介護認定、所得、上限額のどれをとっても、自治体ごとに独自の基準で設計されています。実在する4市の条件を並べると、次のとおりです。

市対象になる人金額の設計
静岡県浜松市3660歳以上で、要支援1・2または要介護1〜5の認定を受けていること。市・県民税が非課税の世帯で、市税を完納していること補助対象経費の2分の1。限度額75万円(厚生労働大臣が定める地域は100万円)。他制度の補助額は差し引く
大分県佐伯市37①65歳以上で要支援・要介護の認定を受けた人がいる世帯 ②75歳以上の人がいる世帯 ③65歳以上のみの世帯、のいずれか。生計中心者の前年所得200万円未満。市税の滞納がないこと補助率3分の2(生活保護世帯は全額)。対象工事費の上限60万円、助成額の上限40万円(介護保険の住宅改修費の対象世帯は40万円/26.6万円)
神奈川県川崎市38介護保険制度の住宅改修以外の工事が対象助成対象基準限度額100万円。所得に応じて利用者負担額が変わる
熊本県熊本市39事前申請が条件。区役所の福祉課または地域包括支援センターへ相談世帯の生計中心者の市民税所得割額で補助率が変わる(22万円超27万円以下の世帯は2分の1)

この表から分かるのは、金額の大小よりも、対象を年齢で区切るか、世帯の構成で区切るか、所得で補助率を変えるかという判定の軸が、市ごとに違うということです。

要介護認定がなくても使える制度があります

たとえば浜松市は要支援・要介護の認定を条件にしていますが、佐伯市は「75歳以上の方がいる世帯」「65歳以上の高齢者のみの世帯」も対象に含めています40。

そのため、親はまだ認定を受けていないから対象外だろうと自分で判断して調べるのをやめてしまうと、使えたはずの制度を見落とします。転倒を防ぐために、元気なうちに手すりを付けておきたいという予防の段階で使える制度も、実際にあります。

見積書の項目ごとに、対象かどうかを確かめる

介護保険の住宅改修は対象になる工事の種類が定められていますが、自治体独自の助成がどこまでを対象にするかは、制度ごとにまちまちです。たとえば北区は、浴槽や流し・洗面台の取り替えを助成の対象に含める一方、老朽化にともなう取り替えは対象外としています41。

そのため、手元の見積書を開いて、工事の項目ごとに対象になるかを窓口で確かめてください。「浴室の工事」とひとまとめに尋ねず、浴槽の交換、滑りにくい床材への変更、浴室の手すりの設置と分けて伝えると、どこまでが助成の対象になるかの線が正確に引けます。

この線引きで自己負担額が決まるので、見積書の写しを手元に置いて電話すると、その場で項目を読み上げて確かめられます。

助成を足しても届かないときに、考えられること

母屋と、庭に設置した介護専用ハウスの配置と行き来の距離を上から見た平面図

介護保険の20万円、自治体の助成、2つの減税をすべて使っても、自己負担が残る工事はあります。水回り全体の改修や、介護のスペースを確保するための増築がその代表です。

リフォームでは解決しにくい課題

また、費用とは別に、今の住まいを改修するという方法そのものに由来する制約もあり、それは補助金をいくら足しても解決できません。

  • 将来の変化への対応:今の身体の状態に合わせて改修しても、数年後に介護の度合いが重くなれば、設備や動線の作り直しが必要になることがあります。
  • 建物の制約:柱や耐力壁、配管の位置によっては、手すりや介護用の設備を付けたい場所に付けられないことがあります。

庭に別棟を置くという方法

こうした場合の選択肢の一つが、母屋には大きく手を加えず、庭に介護専用のハウスを設置する方法です。株式会社アイデアの「シニアリビング」は、工場で仕上げたユニットをクレーン付きトラックで敷地へ運び、基礎工事の完了後に据え付けます。

1ユニットは6.0m×2.4mで、単棟なら介護用ベッドと洗面、簡易トイレが入り、2連棟にすると浴室や来客スペースも設計できます。給排水をつなげば、トイレと風呂の設置も可能です。

また、断熱性能を高めてある点も設計上の特徴で、冬の寒暖差によるヒートショック対策になり、冷暖房の効率も上がります。費用は無断熱の仕様と比べて2〜3倍になる場合がありますが、1日の多くを室内で過ごす前提なら、断熱がもたらす健康面の意味は小さくありません。

リフォームと比べて、どう違うか

比較の観点自宅のリフォーム庭に設置する介護専用ハウス
初期費用工事範囲しだい。補助金・減税で圧縮できる設置費用がかかる。自治体の助成の対象になるとは限らない
工期・手間工事中は生活に制約が出る基礎工事の完了後、短期間で使い始められる
プライバシー同一建物内なので分けきれない面がある建物が分かれるため確保しやすい
介護の負担母屋内で完結し、移動が少ない母屋との行き来が発生する
将来の扱い解体費用は一般に150〜300万円買取制度があり、状態によっては査定がつく
法規制・設置条件既存建物の範囲内なら制約は小さい敷地の広さ、形状、法規制による確認が必要

この比較からも分かるとおり、費用や手間の差だけでは、どちらがよいとは言い切れません。とくに母屋との距離は、離れるほどお互いのプライバシーを保ちやすくなる一方で、見守りや介助のための行き来の負担が増えるので、親の心身の状態に合わせて考える必要があります。

向かないのはどういう場合か

まず、庭にユニットを置くスペースがなければ、別棟を置く方法は選べません。敷地の形状や接道の条件、法規制によって設置できない場合もあるので、設置の可否は、図面を用意したうえで敷地ごとに確認する必要があります。

次に、夜間の見守りや排泄の介助が必要な状態であれば、母屋と離れていること自体が家族の負担になります。認知症で目が離せない場合は、母屋の中を改修して近くで見守れるようにするほうが合うことが多いと考えられます。

また費用の面でも、手すりの取り付けや段差の解消だけで生活が成り立つなら、介護保険と自治体の助成を使った改修のほうが負担は軽く済みます。別棟が向くのは、水回りを含む大規模な改修や増築が視野に入ってきた場合です。

庭に設置する介護専用ハウスの仕様や設置例は、「距離を保つ介護」シニアリビングのサービスページでご覧いただけます。

よくある質問

Q
うちの市に独自の補助金があるかどうかは、どう調べればいいですか
A

調べ方は3段階です。まず住宅リフォーム推進協議会の検索サイトで、親が住む市区町村に制度の候補があるかを探し、次にその制度名を自治体の公式サイトで検索して、今年度の受付状況を確かめます。それでも見当たらなければ、役所の代表電話で「介護保険とは別の、高齢者向けの住宅改造助成はありますか」と尋ねます。制度名は自治体ごとに違うので、最後は電話で確かめるのが確実です。

Q
介護保険の20万円と、自治体の助成は両方使えますか
A

条件を満たせば両方使えますが、同じ工事に二重で助成を受けることはできません。一般的には、介護保険の20万円の枠を超えた部分や、介護保険の対象にならない工事を自治体が助成する仕組みです。ただし組み合わせのルールや申請の順序は自治体ごとに違うので、事前に窓口で確かめてください。

制度どうしの併用の考え方は、リフォーム補助金は併用可|介護4制度の賢い組み合わせ術で整理しています。

Q
もう工事を始めてしまいました。今から申請できますか
A

残念ながら、今回の工事で助成を受けるのは難しいと考えたほうが現実的です。調べた範囲では、着工したあとの申請を受け付けると明記している自治体は見つかりませんでした。ただ、介護のための住まいの手直しは段階的に続くことが多いので、次の工事から着工前に申請する順序に切り替えれば間に合います。

介護保険の住宅改修費を何回まで使えるかは、介護リフォーム補助金は原則1回|再支給される4条件にまとめています。

Q
検索サイトに載っていなければ、制度はないと考えてよいですか
A

そうとは限りません。検索サイト自身も、最新の情報は各自治体に問い合わせるよう注記しており、掲載されていない制度や、掲載されていても今年度の受付を終えた制度もありえます。まずは検索語を変えて自治体の公式サイトを探し、それでも見当たらなければ役所の代表電話で確かめましょう。電話で制度がないと確定させるだけでも、次の計画へ進めます。

Q
補助金のほかに、減税とも組み合わせられますか
A

補助金と減税は別の手続きなので、それぞれの要件を満たせば両方を使えます。ただし、自治体の助成が工事の前の申請を前提にするのに対し、減税は工事を終えたあとに自分で申告して受けるものです。申告しなければ減税は受けられないため、工事の計画段階から手続きを予定に入れておくと安心です。

具体的な手順や書類は、介護リフォームの確定申告は親と子どちらが?減税2制度の手順と書類で解説しています。

まとめ

介護保険とは別に市区町村が出す独自の助成は、調べる順番と着工のタイミングさえ押さえれば、親が住む街で使えるかどうかを短い時間で確かめられます。

Point
  • 着工してよい日を先に確かめる:
    申請書を出しただけでは着工できず、自治体から交付決定の通知が届く前に工事を始めると無効になる制度があります。
  • 制度の有無は3段階で調べる:
    全国の検索サイト、自治体の公式サイト、役所の代表電話の順に確かめます。
  • 電話では用件から伝える:
    「介護保険とは別の助成」があるかと切り出し、担当課につながったら着工してよい日まで聞いておきます。
  • 書類は3者で分担する:
    本人・家族、施工業者、ケアマネジャーや地域包括支援センターで分担し、改修前の写真は必ず着工前に撮っておきます。
  • 年度予算から逆算する:
    予算に達すると年度の途中でも受付を終える制度があるので、退院の予定が見えたら早めに動きます。

まずは今日、親が住む市区町村の名前と「高齢者 住宅改造 助成」を組み合わせて検索してみてください。そのうえで代表電話に今年度の受付状況を確かめれば、手元の見積書のどの工事が助成の対象になりそうかが見えてきます。

助成を組み合わせても自己負担が大きく残る場合や、間取りやプライバシーの問題が改修では解決できない場合は、母屋はそのままに、庭へ別棟を置く方法もあります。仕様や設置の条件は「距離を保つ介護」シニアリビングでご覧いただけます。

脚注

  1. 別府市「在宅高齢者住宅改造助成事業」(2026). https://www.city.beppu.oita.jp/seikatu/fukusi/koureisyafukusi/jyuutakukaizou.html ↩︎
  2. 佐伯市「在宅高齢者住宅改造助成事業」「同 申請案内」(2026). https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/index.html/https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/3_2175_shinsei1_o3ljusxh.pdf ↩︎
  3. 佐伯市「在宅高齢者住宅改造助成事業」「同 申請案内」(2026). https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/index.html/https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/3_2175_shinsei1_o3ljusxh.pdf ↩︎
  4. 東京都北区「住宅改造費助成」(2025)「高齢者住宅改造費助成事業のご案内」(2023). https://www.city.kita.lg.jp/socialcare-health/elderly/1008607/1008619.html ↩︎
  5. 川崎市「高齢者住宅改造費助成事業」(2026). https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000022587.html ↩︎
  6. 熊本市「高齢者住宅改造費助成事業について」(2026). https://www.city.kumamoto.jp/kiji00364088/index.html ↩︎
  7. 浜松市「高齢者住宅改造費補助金」(2025). https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kourei/welfare/elderly/zaitaku/kaizou.html ↩︎
  8. e-Gov法令検索「介護保険法施行規則」第75条第1項・第2項、第94条第1項・第2項(1999). https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036 ↩︎
  9. e-Gov法令検索「介護保険法施行規則」第75条第1項・第2項、第94条第1項・第2項(1999). https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036 ↩︎
  10. 一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会「地方公共団体における住宅リフォーム支援制度検索サイト」(2026). https://www.j-reform.com/reform-support/ ↩︎
  11. 一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会「地方公共団体における住宅リフォーム支援制度検索サイト」(2026). https://www.j-reform.com/reform-support/ ↩︎
  12. 一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会「地方公共団体における住宅リフォーム支援制度検索サイト」(2026). https://www.j-reform.com/reform-support/ ↩︎
  13. 東京都北区「住宅改造費助成」(2025)「高齢者住宅改造費助成事業のご案内」(2023). https://www.city.kita.lg.jp/socialcare-health/elderly/1008607/1008619.html ↩︎
  14. 川崎市「高齢者住宅改造費助成事業」(2026). https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000022587.html ↩︎
  15. 浜松市「高齢者住宅改造費補助金」(2025). https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kourei/welfare/elderly/zaitaku/kaizou.html ↩︎
  16. 熊本市「高齢者住宅改造費助成事業について」(2026). https://www.city.kumamoto.jp/kiji00364088/index.html ↩︎
  17. 別府市「在宅高齢者住宅改造助成事業」(2026). https://www.city.beppu.oita.jp/seikatu/fukusi/koureisyafukusi/jyuutakukaizou.html ↩︎
  18. 東京都北区「住宅改造費助成」(2025)「高齢者住宅改造費助成事業のご案内」(2023). https://www.city.kita.lg.jp/socialcare-health/elderly/1008607/1008619.html ↩︎
  19. 熊本市「高齢者住宅改造費助成事業について」(2026). https://www.city.kumamoto.jp/kiji00364088/index.html ↩︎
  20. 豊後大野市「高齢者住宅改造助成事業」(2025). https://www.bungo-ohno.jp/docs/2015010900019/ ↩︎
  21. 熊本市「高齢者住宅改造費助成事業について」(2026). https://www.city.kumamoto.jp/kiji00364088/index.html ↩︎
  22. 別府市「在宅高齢者住宅改造助成事業」(2026). https://www.city.beppu.oita.jp/seikatu/fukusi/koureisyafukusi/jyuutakukaizou.html ↩︎
  23. 東京都北区「住宅改造費助成」(2025)「高齢者住宅改造費助成事業のご案内」(2023). https://www.city.kita.lg.jp/socialcare-health/elderly/1008607/1008619.html ↩︎
  24. 別府市「在宅高齢者住宅改造助成事業」(2026). https://www.city.beppu.oita.jp/seikatu/fukusi/koureisyafukusi/jyuutakukaizou.html ↩︎
  25. 別府市「在宅高齢者住宅改造助成事業」(2026). https://www.city.beppu.oita.jp/seikatu/fukusi/koureisyafukusi/jyuutakukaizou.html ↩︎
  26. 東京都北区「住宅改造費助成」(2025)「高齢者住宅改造費助成事業のご案内」(2023). https://www.city.kita.lg.jp/socialcare-health/elderly/1008607/1008619.html ↩︎
  27. 熊本市「高齢者住宅改造費助成事業について」(2026). https://www.city.kumamoto.jp/kiji00364088/index.html ↩︎
  28. 熊本市「高齢者住宅改造費助成事業について」(2026). https://www.city.kumamoto.jp/kiji00364088/index.html ↩︎
  29. 浜松市「高齢者住宅改造費補助金」(2025). https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kourei/welfare/elderly/zaitaku/kaizou.html ↩︎
  30. 別府市「在宅高齢者住宅改造助成事業」(2026). https://www.city.beppu.oita.jp/seikatu/fukusi/koureisyafukusi/jyuutakukaizou.html ↩︎
  31. 豊後大野市「高齢者住宅改造助成事業」(2025). https://www.bungo-ohno.jp/docs/2015010900019/ ↩︎
  32. 佐伯市「在宅高齢者住宅改造助成事業」「同 申請案内」(2026). https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/index.html/https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/3_2175_shinsei1_o3ljusxh.pdf ↩︎
  33. 別府市「在宅高齢者住宅改造助成事業」(2026). https://www.city.beppu.oita.jp/seikatu/fukusi/koureisyafukusi/jyuutakukaizou.html ↩︎
  34. 佐伯市「在宅高齢者住宅改造助成事業」「同 申請案内」(2026). https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/index.html/https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/3_2175_shinsei1_o3ljusxh.pdf ↩︎
  35. 加須市「住宅改修等資金助成制度」(2026). https://www.city.kazo.lg.jp/soshiki/sangyoukoyou/syoukoushinkou/5589.html ↩︎
  36. 浜松市「高齢者住宅改造費補助金」(2025). https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kourei/welfare/elderly/zaitaku/kaizou.html ↩︎
  37. 佐伯市「在宅高齢者住宅改造助成事業」「同 申請案内」(2026). https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/index.html/https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/3_2175_shinsei1_o3ljusxh.pdf ↩︎
  38. 川崎市「高齢者住宅改造費助成事業」(2026). https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000022587.html ↩︎
  39. 熊本市「高齢者住宅改造費助成事業について」(2026). https://www.city.kumamoto.jp/kiji00364088/index.html ↩︎
  40. 佐伯市「在宅高齢者住宅改造助成事業」「同 申請案内」(2026). https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/index.html/https://www.city.saiki.oita.jp/kiji0032175/3_2175_shinsei1_o3ljusxh.pdf ↩︎
  41. 東京都北区「住宅改造費助成」(2025)「高齢者住宅改造費助成事業のご案内」(2023). https://www.city.kita.lg.jp/socialcare-health/elderly/1008607/1008619.html ↩︎